Tag Archive for: コスト

トーマス・ネルソンCEO、マイケル・ハイアット氏のブログから:「なんでEブックはこんなに高いの?」

ちなみにトーマス・ネルソンはキリスト教関連の本を中心に出している中堅出版社です。ところどころ(*)で説明を入れました。

週に1〜2回は「なんでEブックってこんなに高いの?」と訊かれる。まぁ、そう思うのも仕方がないだろう。Eブックにすれば、製本代も流通費もかからないのだから。で、版元にかかるコストって何が残ってる?

端的に答えれば、色々。

まず大まかなところを見ていこう。初めに言っておくと、定価は既に是正されている。おそらくお気づきだろうが、アマゾンでは多くのEブックを9.99ドルで売っている。(版型にもよるが)これは平均的な紙の本の半額だ。

アマゾンは今の時点でまだいくつかの出版社から、紙の本の仕入れ値に合わせた額で仕入れているが、これも間もなく変わるだろう。そうなれば、版元は実売額の70%にあたる7ドルを受け取ることになる。(これがいわゆるエージェンシー・モデルだ)この値段は今後もしばらく上がったり下がったりしながら落ち着くだろう。

2番目に、製本代や流通コストというのは巷で思われているほど高くはない。これが本の値段の大半を占めていると信じている人もいるようだが、それは誤解だ。双方合わせても紙の本の売値の12%ぐらいにしかならない。だからこれらのコストがなくなっても全体のコストが劇的に減るわけではないということだ。

出版社は他にも、アクイジション(*企画をエージェントから買う際に支払うアドバンス、つまり印税の前払い金など)、印税、編集、校正、表紙や中身のデザイン、ページ構成、カタログ作り、販促、マーケティング、PR、マーチャンダイジング(デジタルでも!)、出納会計、法務、税金、そして出版社を経営していくコストの諸々。

これに加えて、新しく加わるコストも少なくとも3種類ある。

1.デジタル化のコスト
もちろん、今やほとんどの本のデータは既にデジタルファイル化されている。そうでなかったらスキャンするか、手動でタイプし直さなくてはならない。でもそこからが問題で、色々な種類のEリーダー端末で読めるようにフォーマットを対応させなければならない。今あるのでメジャーなフォーマットは6種類。似ているのもあるが、それぞれどこかしらちょっとした違いがあるので、読者が検索をかけたときにちゃんと引っかかるように、出版社は必要なメタデータを集めて準備しなければならない。

2.品質管理のコスト
特定のEリーダー用にフォーマット化した後、ちゃんと画面で読めるようになっているかチェックしなければならない(QAする、という言葉ができたぐらいだ)。これはかなり時間も人手もかかるプロセスだ。テキストだけの本なら簡単だけど、そんな本ばかりではない。追記やプル・クォート(*一節を抜き出して大きくレイアウトする)、表、図、グラフ、イラスト、脚注などなど、すぐに事態は複雑になる。出版業というより、ソフトウェア・デベロッパーみたいになってきたということだね。トーマス・ネルソンでは、フルタイムで7人雇ってこの作業に取り組んでもらっているが、後3人は必要だ。

3.デジタル流通のコスト
QAが終わると、各リテーラーにファイルを送らなければならない。送り先はアマゾン、バーンズ&ノーブル、アップル、ソニーぐらいだと思ったら大間違い。現在、うちは20以上のアカウント(*紙の本でも本屋で売るとは限らないアメリカではリテイラーをアカウントと呼んでいる)に配信している。それぞれが、アップロードの時に独自のプロトコールがあって、保存の管理システムも異なる。例えば修正箇所などを入れようと思ったら、いちいち新しいファイルを各リテーラーがアップデートしたかを確かめなければならない。これらのアカウントからEブックがちゃんとダウンロードされているかを確認し、売上げから料金を回収して、そこからまたちゃんと著者に支払いをしなければならない。

トーマス・ネルソンでの経験から言うと、製本と流通のコストがなくなった分と、Eブックの値段が安く設定されているため、以上の3コストでトントンになっている。朗報は紙の本を売ってもEブックで売っても、マージンはほとんどおなじになってきたということだ。

以上から、個人的にはこれ以上Eブックは安くならないだろうと見る。もしそれが可能だとすれば、出版社の方で何らかの工夫が必要だろう。でも今はコストを見る限り、フェアな値段だと思う。

他にもまだEブックに関する質問はあるかな?

Read more
© Copyright - Books and the City - All rights reserved.