米文学界きってのお局編集様が解雇、さっそくライバル社に就職ーAnn Godoff finds new home with Phyllis Grann’s old home

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米文学界きってのお局編集様が解雇、さっそくライバル社に就職ーAnn Godoff finds new home with Phyllis Grann’s old homeBooks and the City

以前に「ベストセラーの母」の異名をとるフィリス・グランのオフィスに間違えてズカズカと入ってしまい、アワ喰った話をこのコラムで書いたように記憶しているが、全米最大の出版社ランダムハウスには、もう1人「文壇の超お局オバサマ」と(私が勝手に命名した)いう編集者がいて、会ってみたいな、でも会うのコワイな、と思っていたのがアン・ゴドフだ。(彼女の名前でぜひ画像検索してみてほしい。)

名物編集者といえど、ヒットが出せなくて編集部が赤字経営になってしまえば、いくら過去にジョン・ベアントのベストセラーを発掘しようが、サルマン・ラシュディーを担当していようが、あっさりクビになるのがアメリカ出版界のコワイところ。今回もいきなりのニュースに関係者の皆様もどよめいておりました。そして皆が息を潜めて見守っているのが、「彼女が担当していた作家はどうするんだろ?」ってこと。

アメリカでは同じadult tradeと呼ばれる一般書でも、文芸色の濃いliterary fictionと、ベストセラーになる大衆ものcommercial fictionとの間には、かなりハッキリした区別があって、コマーシャルフィクションの場合、作家は特定の出版社と数作分まとめて契約を交わすのが普通だ。これなら多少、編集者の出入りがあっても著者まで逃げていくことはない。だが、アン・ゴドフが得意とする文芸書やノンフィクションの場合、1作ごとに契約し、しかも編集者との関係が密だから、編集者が出版社を変わると著者もくっついて動くことが多い。アン・ゴドフを手放すと、彼女が担当しているアン・クインドレンやサルマン・ラシュディーといった作家まで逃す羽目になる確率が高い。

それでもゴドフが解雇されたというのは、彼女のランダムハウス・トレード部門の実入りがよっぽど悪かったに違いない。アメリカの版元は「アドバンス」といって多額の前払い金を著者に渡すのが普通だ。だから、予想に反して売れ行きが悪い本があるとその赤字も半端じゃないものになる。アン・ゴドフは気っぷがいいというか、自分が売れると信じた原稿にはアドバンスをぼーん!と払うことで知られていた。なんてったって「コールド・マウンテン」のチャールズ・フレージャーの次作に800万ドルだもんね。最近では、本を出した経験が全くなかった女性二人の「Nanny Diaries」に2冊で300万ドルという巨額のアドバンスを払ってニュースになった。「ナニーズ」はそりゃ、結果的に売れたからよかったけど、他にもこんなことしてたら身が持たないでしょ、という気がしていた。ゼイディー・スミスの2作目「オートグラフ・マン」もコケていたし。

もうひとつ、ランダム・トレードにはペーパーバック部門がなかったのもゴドフの命取りになった。通常、出版社ではハードカバーでリスクのある賭けをして、ペーパーバックで手堅く儲ける仕組みになっている。そのペーパーバック部門を作ろうとして、ゴドフは以前、社内のインプリント(特にクノッフ)と大喧嘩したこともある。ランダムハウスを初めアメリカの書籍出版社は、日本の出版社と違って、社内に独立採算のインプリントがたくさんあって、同じ会社なのに競合するライバルでもあるのだ。おまけにハッキリ言ってしまえば、ランダムハウスの文芸書といえば、クノッフという魑魅魍魎(あぁ、漢字変換機能って便利ね。こんな漢字書けないもん)が徘徊するこわーい場所があって(ちなみに村上春樹はここから英語版を出してます)、ここに閻魔様のように君臨するソニー・メータという大物編集者とゴドフはかなーり不仲だった。

でも、転んでもタダで起きないところがゴドフ女史の「お局」たる所以だ。一週間もしないうちに、ランダムハウスの最大のライバル、そしてフィリス・グランの古巣であるペンギン(前ペンギン・パットナム)に移籍した。ここで自分の好きなようにペーパーバックでもハードカバーでも出して、またヒットを飛ばしてもらいたいもんです。

う〜ん、今回はかなりマニアックな裏話というか、馴染みのない話になっちゃったかな? 

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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