今年、日本の出版界に起こること、起こらなければならないことーWhat shall happen to Japan’s publishing industry this year

Bookmark this on Hatena Bookmark
Hatena Bookmark - 今年、日本の出版界に起こること、起こらなければならないことーWhat shall happen to Japan’s publishing industry this year
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip
Share on FriendFeed
今年、日本の出版界に起こること、起こらなければならないことーWhat shall happen to Japan’s publishing industry this yearBooks and the City

今、ちょうど新年を迎えている。タイムズスクエアの喧噪をテレビで見ながら、音を消したままにしているので、12時をまわると同時に、車のクラクションの音や人の叫び声がかすかに聞こえてくる。毎年、騒がしいことだ。

私には、新しい仕事が待っている。今月中には正式に発表されるハズだ。日本の出版界がこのニュースをどう受け止めるのか、楽しみでもある。もしかしたら出版界中が蜂の巣をつついたような大騒ぎになるかも知れないし、ことの重大性に気づかず、なんだ、また新しいベンチャーか、と一蹴されるかも知れない。

いずれにせよ、この5〜6年、日本の出版関係の人から聞く話には、あまり明るい話題がなかった。本が売れない、雑誌も伸びない、マンガでさえも、ケータイに傾倒する若者にそっぽを向かれている、と口を揃えて訴えるのだ。私には雑誌やマンガのことはあまりよくわからないが、書籍の売り上げが落ち込んでいる、という話を聞く度に「じゃ、売れるようにどうにかすればいーでしょ」と思ったものだ。

本作りにはバランスが必要だ。コンテクスト、つまり、中身については、これはもう、地道にいいものを作る努力をしなければいけない。ノルマに追われて手を抜くと、それは少しずつ、確実に売り上げ部数に反映されてくる。その分、他にもっと売れるものを作ればイイや、というわけには絶対にいかない。編集者の方も日々の切磋琢磨を要求される。だから本の編集者は、心の底から本が好きな人間でなければ務まらない。大手版元の一部は初任給も高く、高学歴を要求されるが、アメリカでは出版社というのは、色々なバックグラウンドを持ちながらも「本が好き」という共通項を持った人間が集まるが、「給料がいいから」という理由で出版社に就職した、という人はいないハズだ。書籍出版に限らず、雑誌社や他のマスコミも、人気のある業種であることには違いはない。やりたい、という人が多い分だけ、給料は低い。皆、それでもこの仕事がやりたくて集まってくる。つまり、需要と供給のバランスがとれているというわけだ。それが日本では何故か、新聞社も出版社も、初任給の高さも魅力の一つになっている。やりたい人が多い仕事はその分、チープに働けばいいではないか。個人的にはスッチーと女子アナは無給でもいいんじゃないか、という気がする。その分、他のperks(仕事上の特権)があるからだ。もっとも、日本でも最近は書籍でも雑誌でも、いわゆる下請けで仕事をする編集プロダクションが増えていて、その台所事情を聞けば、そんなもんでしょ、と思う。というか、高給取りの大手の元で働かなければならない分、さらに悲惨な報酬額でこき使われている、という印象がある。

アメリカの出版社の話に戻ろう。ここでは大企業でも、零細出版社でも、本に携わる仕事をしている人は、例外なく皆、本を読むのが大好きだ。最近は誰それの本が面白かったとか、今読んでいるのはどの本だとか、これから売れるのはこの新人だと思うとか、喋り出すと止まらないし、道を数ブロック歩くにもペーパーバックを手放さない人、重たい本をぎっしり詰めて通勤するので、1年に何個もトートバッグがすり切れてしまう人、蔵書が増える度に引っ越しを余儀なくされる人等々、編集者だけではなく、法務部門の顧問弁護士から、下っ端のメッセンジャーまで、他の会社にいればもう少しペイがよくなるのに、本の周りにいたくて出版社に勤めている人ばかりだ。

おっと、本作りのバランスの話だった。もう一つは、どう本を売っていくか、読者の手元に届けるか、これは常に新しい市場を開拓し、流通経路を考え、既存のものとは違う宣伝を考えていかなければならない、ということだ。停滞する日本の出版界を見れば、ジリ貧になっている理由がそこにあることは明白だ。新しいことをやるには、リスクがある。少しずつ落ち込んでいるとはいえ、今までもどうにか売れ続けているものをガラリと変えてしまうには、それなりの覚悟と勇気が必要だ。日本人は「カイゼン」は上手だけれど、「イノベーション」は苦手だといわれる。終身雇用が当たり前の企業と、出る杭は打たれる風潮の社会では、今までやってきたことを変えていくのは難しい。戦後からずっと、同じ体制で、その構造を全く変えてこなかった出版界が停滞するのも無理はない。それは日本の銀行システムも、政治システムも、教育システムも同じだ。やがて古くなり、ひびが入り、崩壊する日が来る。物事を根本から変えるのに、外圧が必要だというのなら、私は喜んでその黒船の片棒を担ごうと思っている。

終始、抽象的な話になって申し訳なかった。そのうち具体的な話ができるようになるので、お許しを。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
Related Posts
© Copyright - Books and the City - All rights reserved.