アメリカのコミック事情:「少年ジャンプ」はアメリカでブレークできるか?ーManga/comic business in the U.S. : Would “Shonen Jump” fly?
どうしてアメリカの本屋さんには漫画(英語では「コミック」というが、ただしコミックとマンガは全く異質の刊行物と考えた方がいい。理由は後で述べる。)を置いていないのか? どこにもないということは、アメリカ人はぜんぜん漫画を読まないのか? アメリカの男の子が読んでいるという「スーパーマン」や「スパイダーマン」などのコミックは一体どこで売っているのか? などと聞かれることがある。最近、日米のコミック事情について知る機会があったので、その辺をまとめてみたい。
1. なぜアメリカの本屋さんに漫画・コミックがないのか?
全くないわけではない。ボーダーズやバーンズ&ノーブルといった大型チェーン店なら「テレビ」「アート」「グラフィック」関係の棚にひっそりと、ほんの少しだけ並んでいることもある。ただし「スーパーマン」に代表される32ページの薄っぺらい典型的なアメリカのコミックは、本ではなく雑誌と同じ扱いになるので、いわゆる一般の書籍を売る本屋さんには置いていない。雑誌を売っているところなら並んでいるかというと、それも確実ではない。昔は新聞・雑誌を売っているところなら、メジャーなコミックも置いていたのだが、最近はコミック専門店に行かないとなかなか手に入らない。マンハッタン内でコミックを売っているお店を挙げておこう。
Midtown Comics 200 W. 40 St. (off B’way), 2 Fl.
John Hanley’s Universe 4 W. 33 St.
Forbidden Planet 840 B’way (at 12 St.)
St. Mark’s Comics 11 St. Mark’s Pl. (bet. 2-3 Aves.)
Cosmic Comics 36 E. 23 St., 2 Fl.
こういったお店には、かなりマニアックな雰囲気が漂っている。コミックの他に、日本の漫画を英訳したものも並んでいる。コミック本の他にも、コミックヒーローをあしらったキャラクター商品から、どこがどうコミックに関連するのか今ひとつわからないモノまで、とにかく「大人になりきれなかった男たち」が集う特殊な場所になりがちだ。
本屋で漫画を置いてある店といえば、ヴァージン・メガストア(イギリス資本の音楽CD中心のチェーン店)には、独特の品揃えの書籍コーナーがあって、「グラフィック・ノベル」という名前の棚があり、ここに日本の漫画を英訳したものなどが並んでいる。音楽CDの中心購買層は若い世代だから、書籍も若者向けの本が集められ、雑誌もいっしょに置いてあるので、漫画が並んでいてもおかしくはないというわけだ。
というわけで、書籍も雑誌も漫画も一つ屋根の下、というのが普通の日本とかなり違っていることがわかる。
2. アメリカ人は全然漫画を読まないのか?
アメリカの男の子は、11〜12歳の頃になると、コミックにハマるのが普通。ところが、18歳ぐらいになる頃には、他のことに興味を持ちだして、すっぱりコミックを読むのを止めてしまう傾向にある。女の子向けのコミックもあるが、男の子と比べると、コミックを読む女の子はまだ半分に満たないし、それも最近のことで、一昔前までは女の子が読むようなモノは「ワンダーウーマン」ぐらいしかなかった。消費者としてのアメリカの女の子は、手伝いやベビーシッターのバイトでけっこう自由に使えるお金を持っている年頃ではあるのだが。そしてもっと大人向けのコミック、というカテゴリー自体があまりない。あってもけっこうキワモノのアート系コミックになってしまう。だからアメリカでは、コミックは男の子が読むもの、と相場が決まっていた。ごく最近までは。
コミック界の2大大手はスパイダーマンで知られるマーベル社と、スーパーマンやバットマンで知られるDCコミック(AOLタイムワーナー傘下)の2社。今年は「スパイダーマン」の映画化でマーベル社が黒字になったが、2社ともこのところ成長は横這いで、不振。なのに、2社ともマンガ出版にはあまり積極的ではないようだ。
3. コミック・マンガ最新事情
アメリカ出版界では、日本の漫画は「グラフィック・ノベル」というカテゴリーに入る。この区分けには、マンガの他に、例えば「スターウォーズ」や「指輪物語」など、人気のある映画とのタイインで写真やイラストをふんだんに使った「メイキング」ものや、92年にピューリッツァー特別賞をとったアート・スピーゲルマンの「Maus」なんかが含まれる。POP (point of purchase) 情報を集めてアメリカにおける書籍流通を調査する「BookScan」によれば、2000年から2001年にかけて、アメリカのグラフィック・ノベルは年間総売り上げ1200万ドルから2倍以上にあたる2900万ドルに伸びており、今年はさらにそれが6000万ドルになる見込みだ。書籍チェーン店では、特にボーダーズがこのカテゴリーに注目し、今後さらに力を入れていく予定だ。
アメリカで積極的にマンガを出しているところには、ダークホース、トーキョーポップ、ヴィズなどがある。ダークホースはどちらかというとオタク系の作品が多く、「アキラ」や「Ghost in the Shell」もここから出ている。トーキョーポップは「セーラームーン」や「カードキャプター・サクラ」など、少女向けのモノにも力を入れていて、売り上げ冊数では3社のうちトップ。ヴィズは集英社と小学館が共同出資した会社で、「ポケモン」や「ドラゴンボール」を出している。
そして今回、このヴィズが英語版「Shonen Jump 少年ジャンプ」(月刊)を創刊した。創刊号には「遊戯王」他4作のマンガが連載され、1冊5ドル。日本の「週刊少年ジャンプ」が200円強で、英語版と比べるとかなり分厚いから、ちょっと高いようにも思えるが、アメリカのコミックは1冊32ページで1作、全カラーで3〜4ドルするから、まぁ、妥当な値段設定だろう。
1冊手に入れてみたが、日本と同じ左開きで読む装丁になっている。英語のコミックのように読もうとすると、「ここは少年ジャンプ最後のページです」という注意書きと共に、コマの追い方などの説明があり、これはなるべくオリジナルに近い形で漫画を楽しんでもらうためだと明記してある。そして途中の余白にも「こっち向きに読みます」という矢印が。確かに今のガキんちょたちは、ゲームやら、ケータイやら、新しい機械の操作もすぐに覚えてしまうし、反対側から読む方が「マンガ」という新しいモノに触れているという感覚になるのかも知れない。
他に目についたのが、付録としてついてきた「遊戯王」のカードと、定期購読申し込みハガキ。1年12号で1年分申し込むと、なんとたったの20ドル。1冊あたり1ドル67セント(約200円)。家まで自動的に届けられるし、これはお得感がある。(版元にとっては、赤字になるんだろうけれど、定期購読の割引は一定の読者を掴むために、アメリカではマンガ以外の雑誌でもかなり安くなるように設定されている。)
今後、アメリカでマンガが定着して行くには、とにかく流通経路を開拓することがカギとなるだろう。セールスレップという営業職を雇い入れ、アメリカのスーパーや、量販店や、街角の本屋に「マンガ」が並ぶようになれば、アメリカ人も読むようになるだろう。
さて、この「Shonen Jump」、欲しいという人に差し上げましょうゾ。このウェブサイトについてのご意見・ご感想や、アナタの身の回りの洋書ネタ、本やマンガへの思い入れなんぞを聞かせて下され。









