「女検死官」シリーズでしこたま儲けたP・コーンウェルの新しい趣味とは?ーPatricia Cornwell spends millions on research for her new non-fiction on Jack the Ripper

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「女検死官」シリーズでしこたま儲けたP・コーンウェルの新しい趣味とは?ーPatricia Cornwell spends millions on research for her new non-fiction on Jack the RipperBooks and the City

そもそも、ミステリーはあまり読まない。ミステリーを読むのと、ゴルフをするのと、クロスワードパズルを解くのは、じーさんばーさんになって、他に何もすることがなくなった人がすることだと、どこかで読んだ気がする。(思い出した。上野千鶴子の昔のエッセイに引用されていたんだっけ。)従って、たまにNYタイムズのクロスワードをやってしまう私は、努めてミステリーは読むまいとしている。たまに読む羽目になっても、犯人探しや謎解きが苦手なので、最後まで読んで「え?どうしてそうなるの?」と最初から読み直さなければわからない始末。情けない。

まぁ、個人的なことは置いといて、ケイ・スカーペッタというカッコイイ女性検死官が登場するパトリシア・コーンウェルのミステリーは、今までにも何作か紐解いたことがある。主人公のファーストネームに惹かれたというのが半分と、友だちに熱心なファンがいて、いつの間にか巻き込まれた、というのが理由の半分である。

確かに、検死官という特殊な職業に就いている人物が主人公とあって、実際には一度も拝んだことがない死体というもの(できればこれからも拝みたくないが)を、どうやって何を調べると死因がわかるのかというインサイダー的な情報は面白いと思った。(何よりも、本では「匂い」が伝わらないのが救いですな。)おまけに、主人公の女性は、捜査担当の警部や自治体の政治家と対等にやり合い、ついでに犯人とも渡り合う気丈なエリート、というところもカッコイイ。

「羊たちの沈黙」シリーズのトーマス・ハリスもブームになったのと相まって、この頃は日本でも、マンガだの(確か週刊モーニングの「きらきらひかる」(江國香織の小説じゃないよ)とかいうやつ)、映画だの(南果歩が出ていた「エンジェルダスト」とかいうやつ)に女性検死官や連続殺人犯を追う女性プロファイラーが活躍する、というものがいろいろ出ていたような気がするが、アメリカと比べると連続殺人犯も、出世を極めたプロフェッショナルな女性もあまりいない日本が舞台じゃ、あまり現実味ないよなー、と思ったものだった。

で、これはコーンウェルの作品に限らず、ミステリーのシリーズものの難点だと思うのだが、同じ登場人物と同じ背景設定だと、そのうちどうしてもネタにつまってマンネリになるわけね。ケイ・スカーペッタの場合も、周りの知り合いがどんどん殺されて、ついでに愛した男性も全員殺されていって、いつまでたってもシングルだし(これもキャリアウーマンの宿命か?)、ストーリーに無理が出てくる。検死官シリーズももはや、マリーノ警部が実は連続殺人犯だったとか、ケイと結婚しちゃったとか、はたまた姪っ子のルーシーが男性と結婚したとか、勢いあまって自分も連続殺人するようになっちゃった、とでも書いてくれないとビックリしないところまで来ているし、そんなことをしたらもちろん、ファンが幻滅するだろうし、行きづまっているのが明々白々だった。

本人もそれを自覚して、違うシリーズを始めたり、ついには料理の本まで出しちゃったりしていたけど、それまで毎年1作は出していたコーンウェルから、最近、音沙汰がないなー、と思っていたら、今度はノンフィクションの本が刊行された。「Portrait of a Killer: Jack the Ripper–Case Closed」というのがそれだ。「切り裂きジャック」といえば、古くは1888年にロンドンで何人も娼婦を殺したとされる、歴史上、初の?連続殺人犯。コーンウェルお姉さまときたら、ベストセラーで儲けた印税を600万ドルも、DNA検査やら、専門家の鑑定による犯人探しのためにつぎ込んだのだ。(ちなみに、今彼女が「検死官」シリーズを1作書くと、アドバンス(印税に対する前払い料)が900万ドルもらえる。ざっと10億円以上!)

さすが、金持ちはやることは違うね。コーンウェル女史は、最近はコネチカットのグリニッヂ(高級住宅街として知られる)にある豪邸に住み、客を呼ぶときは自分でヘリコプターを操縦し、普段はフェラーリを乗り回し、チップに「細かいのがないわ」と言って100ドル札を渡すとか。で、目下の趣味が探偵ごっこ、というわけ。

そして彼女が名指しした「切り裂きジャック」の正体は、画家のウォルター・リチャード・シッカート。ミュンヘン生まれで、ピサロなんかも在籍していたロンドン・グループに入れたぐらいの腕前。ごく普通の絵もあるけれど、中には怪物が裸婦に襲いかかっていたり、顔を切り裂かれた娼婦が描かれるなど、かなりおどろおどろしい作品を残している。コーンウェルが調べたところ、彼は性器に異常があり、何回も手術を受けて不能になったとされている。祖母はアル中の娼婦で、彼女に対するコンプレックスがあったのだと判断している。

シッカートが犯人だという証拠の中には、「切り裂きジャック」からの手紙とされる筆跡が似ていることや、使っていた便せんが同じだったこと、ジャックがラテン語で「無名の者」と署名した手紙があるが、シッカートは若かりし頃、俳優として同じ名前を使っていたこと、その他にジャックが残した手紙の切手に残された唾液のDNAと、シッカートの絵筆に残されたDNAが酷似(同一と判断するには、物証が古すぎて正確に判断できないとか)などがある。

ついでに、金に飽かせてシッカートの絵画まで集めちゃったらしいが、かなりキテますねぇ、コーンウェルさん。この辺でそろそろ観念して、ケイ・スカーペッタを幸せにしてあげたらどうですかね? んで、検死官も作家も引退するとか。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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