紀伊国屋ニューヨーク店で念願のサイン会を行った弘恵ベイリーー A bookstore debut of an on-demand book, a baby, and a frog beret

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紀伊国屋ニューヨーク店で念願のサイン会を行った弘恵ベイリーー A bookstore debut of an on-demand book, a baby, and a frog beretBooks and the City

ハロウィーンの前日、ミッドタウンはロックフェラーセンターの一角にある紀伊国屋書店ニューヨークで、飲み友である弘恵ベイリーさん(ただし彼女は今、禁酒中)が自著『ハーレム日記』の朗読・サイン会を行った。折り悪く、みぞれ混じりの冷たい雨が降りしきり、さらに、ミッドタウンではMTA(市交通局)のデモ行進で交通がマヒ状態。やっとの思いで駆けつけると、あちらこちらに知った顔が会場となった店内のカフェを占拠している。「サクラ要員」として彼女が声をかけていたのだ。

この「ハーレム日記」、ホームページとメールマガジンで、ハーレムに暮らして4年になる彼女のハチャメチャな日常を紹介している。かつて彼女がそうだったように「いつかニューヨークに住みたい」という若い人(若くない人も)は、いまもかなりいると思う。そんな思いを抱かせるこの街の魅力は重々承知しているつもりだが、本人の意思とは別に、実際にはビザや仕事や言葉といった障害もまた多い。特に自分で進んで留学したわけでもなく、書籍出版という仕事上、あまり選択の余地なくしてニューヨークにいるワタシなんぞの話よりも、1人で自分の道を切り開いてきた彼女のストーリーの方が説得力があることに間違いない。何よりもメールマガジンの読者数がそれを物語っている。

一風変わった人なのかもしれない。カエルの帽子を被ってサイン会に登場しながら「自分は普通だ」と思っている。日本での彼女の話を聞いていると、さぞ居心地が悪かっただろうと想像できる。だけどやっぱり、正直でひたむきで憎めない人だ。ワタシと彼女が出会ったきっかけは、とあるメールマガジンに連載されていた「本とニューヨーカー」というコラムなのだが、開口一番「有名になりたいんですよねぇ」と自分の野望をあっけらかんと告げられ、内心ちょっと面食らったのを覚えている。

有名になることだけが目的なら、「物書き」というのは、苦労ばかり多くて可能性が低い選択だと思うのだが、田口ランディあたりを見ていると、誰にでもできそうな気がしたのだろう。その時は、あまり肯定的な返事もできずにいたが、本人も言っていた通り、何でもやってみて、サッとコツを掴むタイプ。もらったコンピューターを分解しているうちにハードウェアの仕組みを覚えてしまったり、ライター仕事も引き受けてから、アドバイスを受けてリライトしてこなしていく。

ただし、今回の『ハーレム日記』は、ウェブやメルマガで既に発表されたものを集めたオンデマンド印刷の本、ということでこれがベストセラーで一躍有名人、というわけにはいかないだろう。オンデマンドでは、企画での段階から、どうしてもプロの編集者が持つ「売るためのノウハウ」が欠落してしまうからだ。従来の本と比べると、まだ少し装丁と価格が噛み合わないというハンデもある。オンデマンド印刷は、例えば、専門家が使うための学術書とか、コンテンツさえ手に入れば、見てくれはどうでもいいものに向いている。

まあ、何はともあれ、念願のペーパーデビューを果たしたヒロエちゃん、おめでと。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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