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徒然なる本の話

およよ、クルーズ・スミスがやってくれました、聞きかじりの日本「無知本」ーThe latest in cliche-laden Japano-dud by Martin Cruz Smith

たまにこういう本が堂々と刊行されるので、気が滅入る。私が勝手に「無知本」と名付けたジャンルのスリラーである。要するに、日本に関する聞きかじりの知識で、日本人が読むと「んなこと、あるわけねーだろ」「今時どこにもいねーよ、んなヤツ」てなリアクション連発の、摩訶不思議なフィクション。日本が舞台になっていて、大体次の要素が盛り込まれていることが多い。

・ひょんなことから日本で事件に巻き込まれる白人男性の主人公。日本語はできず、慣習にも疎い。
・主人公の通訳、アシストをする献身的な若い日本人女性(通称マリ子)。英語が堪能で、日本の男尊女卑社会に辟易している。
・雑魚の悪役として暗躍する下っ端ヤクザの皆様。入れ墨、パンチパーマでわかりやすいが、そんなに害はない。
・実は一番の悪者、政府高官あるいは日系企業幹部。
・悪役と近い関係にありながら、主人公に何らかの恩義があって手助けをする年配の日本人男性。
・途中で殺されるおマヌケな脇役白人男性。日本滞在歴が長く、日本語が堪能。
・事件の解決につながる証言をする銀座のちーママ。
古くはテレビドラマ化されて人気の出てしまったジェームズ・クラヴェルのGai-JinやShogunから、記憶に新しいところではPBSのニュースキャスター、ジム・レラーのThe Special Prisonerまで、目を覆いたくなるステレオタイプな日本がそこにある。最近、目についたものを2、3、紹介してみよう。

サラ・バッカー「American Fuji」
JETプログラムによって、日本で英語教師として数年間、過ごした人が帰国してから書いた本が多いが、これもその一つ。日本で不審な死を遂げた若者と、真実を突きとめにやって来た父親に協力する女性。彼女は地元の学校で英語教師をしていたのだが、彼女のことをやっかむ日本人男性の同僚に嫌がらせをされ、納得のいかない理由でクビになっている。

ジム・レラー「The Special Prisoner」
日本で捕虜となったB-29のパイロット、という過去を持つ神父が主人公。昔、自分を生き地獄の目に遭わせた「ハイエナ」タシモト(足本?)を偶然見かけ、執拗に追いかける。結局、最後は殺してしまうんだよね、確か。

バリー・アイスラー「Rain Fall」
ベトナム戦争で暗躍した秘密部隊のメンバー、ジョン・レインは日米のハーフ。日本政府を揺るがす汚職の情報が収められたディスクを盗み出すのが任務。ターゲットである川村の娘と恋に落ちる。ラブホの描写が笑える。

ジョナサン・ホルバート「Kyuden」
600年前に盗まれた「三種の神器」をとりかえして天皇の地位につくべく、元特殊部隊員の力を借りる、ヤクザの親分、竜一・ユガオ(湯顔?)が主人公。おいおい。皇居に乗り込んじゃってまっせ。

で、その「無知本」の最新例がマーティン・クルーズ・スミスの「December 6」。クルーズ・スミスといえば、「ゴルキー・パーク」など旧ロシアを舞台にした国際スパイが暗躍するスリラーで知られている。ソ連崩壊後、ネタが尽きて何か目新しいものをと探して日本にブチあたったのかも知れない。迷惑な話だ。

この「December 6」、表紙はなんと、右翼まっつぁお、ハデハデの日章旗。タイトルはもちろん、真珠湾攻撃の前日を意味している。この本にも吉原の芸者だの、サムライよろしく刀を振り回す時代錯誤の軍人だのが登場し、「蛮人」ニッポンジンを描写するために南京事件や山本五十六もプロットにからむ。

今回の「December 6」に関しては、クルーズ・スミス本人も「無知とエゴがなければ書けない作品だ」と認めている。

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