若者の教祖としてハクがついてきたパラニュクーKids show up en masse for young guru Palahniuk


秋になると、あっちこっちで著者の朗読会・サイン会が増える。今日は『ファイト・クラブ』『サバイバー』『チョーク』などの著作で、若者から絶大な支持を受けているチャック・パラニュクのサイン会を覗いてみた。さすがに集まった聴衆が若い、10代後半から20代前半、しかもやっぱり男の子が多いなあ。それもちょっとクセのあるパンク小僧系。みんなクタクタになりかけた「ファイトクラブ」のペーパーバックを抱えている。おおぜい集まり過ぎちゃって、書店の人が一生懸命抑えようとしてるんだけど、「よーよー、オバハン、なんで俺たちだけ後ろで立ちんぼなんだよ。もっと椅子ねーのかよ」「サインもらえなかったらどーしてくれんだよ」とまあ、ケツの蒼いワカモンは我慢が足りないこと。

ま、その辺も心得ているのか、時間通りに現れたチャック君、「新刊は後でボチボチ自分で読んでくれ。質問があったら何でも答えるぜ。サインも最後の一人が帰るまで面倒みるから安心しろ」とまあ、朗読会の予定がいきなり懇談会。質問のハズが、いきなり世の中に対する不平不満をブチまける男の子に「Thanks for venting, man.」と優しい応対。丁々発止のやりとりが続いておりました。

「ファイトクラブ」を書くきっかけなんかもざっくばらんに披露しておりましたね。なんでも、まだ新聞記者だった当時、休みをとってアリゾナのキャンプ場に出かけたら、夜になって隣にテントを張った若者たちが大音響でレイブ音楽をかけまくり、マリファナ吸いまくりだったんで、文句を言いに行ったら逆ギレされて、ボッコボコに殴られたんだそうな。んで、顔中「ムードリング」のようなあざだらけになって会社に行ったら、あまりにもスゴイ形相なので、かえってだーれも「どうしたの、その顔?」とか「大丈夫?」と聞いてくれなかったんですと。で、そっか、一目で立ち入れないとわかる世界にいたのね、俺って。ってことから「ファイトクラブ」執筆。これがエド・ノートン、ブラッド・ピットで映画化。注目されちゃってるわけです。

なるべく言葉遣いのニュアンスが伝わるようにもう少し書いてみましょう。

「最近になって、やっとわかってきたことがあんだけどさー、昔はオレ、ガキの頃、うちのオフクロはクレージーだと思ってたわけよ。アリゾナの砂漠のど真ん中に住んでるのにさ、夜になると家中のカーテン閉めろってうるせーの。3軒両隣りったって、見えるような所に家なんてねーんだぜ。なのに、カーテン閉めてから電気つけろとか毎晩いわれてて、うちのオフクロは頭おっかしーんじゃねーの、とか思ってたのよ。それがこの前、帰ったときにわかったんだけど、昔、俺の妹の部屋があったところの壁の下から大量の吸い殻が出てきたんだよな。それも、ハトの糞がからまったような感じで。わかる? 大量のザーメンが乾きました、みたいな。つまり、お前らがポルノサイト見てやってるようなことを、どっかのオッサンが、うちの妹使ってやってたわけだ。そのこと知ったら考えちまってよ。クレージーなのはうちのオフクロじゃなくて、世の中の方なんだってこと。俺の本をクレージーな世界だなんて言うやつらもいるけど、それがフツーなんじゃねーのかってことだよな」(本屋に集まった若者がウンウンとうなずく)

頼れる兄貴というか、お教祖様というか。でも本人は、本を書く事に関してマジメで、短編を読んで文章の勉強をすると言っておりました。全身不随か手足切断になったらエイミー・ヘンペルの短編集さえ読めればいいとか。ということもあって、最新作「Lulluby」は改心の作だそうで。私もかなり楽しく読めました。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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