やっぱりスゴかった、スティーブン・キングのサイン会は大賑わいーHorror King Stephen gathers a big crowd at his book signing


本屋さんの周りに長蛇の列ができるというのは、どんな理由にしても決して悪いことじゃないと思う。若者の活字離れだの、産業のIT革命だの、電子本のオンデマンド印刷だのっていったって、超売れっ子作家センセーのサイン会となれば、それが平日の午後だろうと、朝早くからみんな学校や仕事をサボって結集してしまうのだ。それがしかも、スティーブン・キングの新作「From a Buick 8」で、先着200名様限り、となればなおさらのこと。その日、ユニオンスクエアのバーンズ&ノーブルには、早朝から半ブロック分の行列が。

さすがに我ながらミーハーすぎると思ったのだが、半分コワイもの見たさも手伝って覗いてきちゃいましたよ。昔からのファンのふりしちゃって、ハハハ。キングファンなんてティーンエイジャーが多いのかと思いきや、彼と同じぐらいの「団塊の世代」組もけっこういて(でも、サラリーマン風の人が一人もいないのが可笑しかったけど)、男女比7対3ぐらいかな。こういうコアのファンがいれば、強いですね。

映画でも本でも、ホラーと名がつくものがとにかく苦手な私は(恐がりだからではなくて、オカルトの類は信じていないし、超自然現象にもあまり興味がないのだ)、キングの作品は知ってても、最初から最後まで読んだ作品はけっこう少ない。『キャリー』や『シャイニング』も原作は映画よりも奥深いテーマを暗示していて、好きだけど、『ザ・スタンド』はスケールがでかいナーと思って読んでいるうちに、わけがわからなくなって挫折した。『ショーシャンクの空に』や『スタンド・バイ・ミー』のような作品もあることだし、キングをホラーと決めつけること自体がヤボ。個人的には自伝「On Writiing(小説作法)」が面白かったし、改めて作家としてのスティーブン・キングの人となりがわかったような。書く、ということに対してとにかくストイックなのだ。

このOn Writingでは、どんな子どもだったのか、どうして自分がライターになったかに始まって、売れる前の鳴かず飛ばずの時代を回想した自伝が半分で、後の半分はライターになりたい人のための実際的なアドバイスになっている。そこで、本を読まずして物書きになれるわけがないとか、文章はなるべくシンプルにとか、まっとうなことを言っているので、感心したのだ。その辺の主張は、高橋源一郎が言っていることとそんなに変わらないと思う。要するに、近道ってないのよ、ってな。

確かにスティーブン・キングは、この先どう転んでも全米図書賞をとることはないだろうけど、これからもずっとホラー大好き人間だけでなく、もっと広い読者に読み継がれていくだろう。

考えてみれば、キングって普段はメイン州の田舎に引きこもりっきりで、毎朝きちんと時間通りに執筆するという禁欲的な生活をしているとか。これだけ売れているのだから、後はもう少しぐらい手を抜いたってベストセラーになるだろうし、何も書かなくても印税が入ってくる。ハリウッドやニューヨークに移り住んで、芸能人とおつきあいして、チャラチャラと遊んで暮らすこともできるだろうが、とにかく「書く」ことと読むことが好きなんですねえ。そしてこうして超売れっ子になった今でも、新作のお披露目ともなれば、ファンと一人一人握手しながらせっせと本にサインをするのでありました。

ところで、このサイン本、個人名宛てになってないので、誰か欲しい人に譲ろうかな? 我こそはキングフリークという方、名乗りを挙げてみて下され。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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