有名人を雑誌の顔にした場合、どういう困ったことが起きるのか?ーAll is Not Rosy at Rosie Magazine


日本の雑誌とかなり違っている点の一つは、アメリカの雑誌の編集長は、その雑誌の「顔」として欠かせない存在だということだ。古くは歴代の「ニューヨーカー」の編集長から、ウーマンリブ運動の先駆け的存在だったヘレン・ガーリー・ブラウンが編集長を務めたコスモポリタンに始まって、ヤン・ウェナー抜きに、ローリングストーン・マガジンは語れないだろうし、インタビュー誌をいえば、アンディー・ウォーホール。つまりは編集長の人生哲学というか、ライフスタイルがそのままモットーになっているのが、いわゆる「ライフスタイル」誌。日本では女性誌の編集長が男性、ということも多いが、こっちではまずそれはない。

最近になって、編集長が「顔」以上の存在になっている雑誌として、編集長の名前がそのまま誌名になっているのも現れた。まず、大御所の「マーサ・スチュワート・リビング」。家事一般を娯楽、自己表現、アートのレベルにまで押し上げ、株の売買というプライベートなスキャンダルでビジネスの行方が左右される。

日本でも最近は、松山千春や小林よしのりといったパーソナリティーをそのまま雑誌にしたものがお目見えしているが、あんな感じと思ってもらえばいいだろう。で、今回は押しの強いパーソナリティーの名前を冠した雑誌のツライところを一つ紹介しよう。

その雑誌は、グルーナー&ヤール社の「ロージー」。元々、老舗雑誌の「マコールズ」という主婦向けの女性誌だったものを人気テレビパーソナリティーのロージー・オドンネルを編集ディレクターとして再発行したもの。発行部数は350万部。日本では映画「A League of Their Own」でマドンナとコンビを組んだ、姉御肌のオバサマ、といえばピンとくるのではないだろうか。彼女は今、朝の番組でパーソナリティーとして大活躍、子育てや主婦業に独特の信念を持って(レズビアンだと公言しているなど)主婦層の支持を得ている。

もちろん、記事の執筆を始め、日々の雑誌づくりの作業を担っているのは、グルーナー&ヤール編集部のスタッフだ。このスタッフとロージーの意見が食い違った場合、最終決断力を握っているのは誰なのか? 日本ではなあなあで丸く収円滑なビジネスのやり方だが、アメリカでは社長なり、校長なり、大統領なり、最終的な権限を持っているのが誰なのか、で物事を決める。

で、ロージーの場合、何が問題になっているかというと、彼女の主張でマイク・タイソンを表紙にしようとしたのがひとつ。レイプで有罪を食らった「女性の敵」を女性誌の表紙にするのはマズイ、とスタッフが反対。他にも、私生活のパートナー(下世話に言えばレズのお相手)の妊娠中の姿をコラージュにして載せようとしたり、ユーモアライターのアル・フランケンに「おバカさんのための中東問題」と題するコラムを書かせようとしたり、と「無神経」ぶりを反対されて、ロージーが怒ったというわけ。

今のところ双方とも弁護士と相談中、ということらしいが、さてどうなることやら。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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