自分探しをするリック・ムーディーは明るいオタクなニーチャンに変身ーFar from being moody, Rick giddily flaunts his trans-gender obssession at KGB

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自分探しをするリック・ムーディーは明るいオタクなニーチャンに変身ーFar from being moody, Rick giddily flaunts his trans-gender obssession at KGBBooks and the City

リック・ムーディーが自伝The Black Veilを出した。ナサニエル・ホーソーンの短編小説「牧師の黒いベール」に出てくる登場人物の一人が、自分の家族と血のつながりがあったことをきっかけに、その「黒いベール」にどこまでも執着して調べまくるのが彼らしい。なるほど、「パープル・アメリカ」を初めとする彼の作品の特徴である、しつこいほどのディテール描写はこういうリサーチの積み重ねだったわけね。

KGBでのリーディングでは、その自伝の中で「自分の人生というよりも、自分のこだわり、おまけにこうなったらタダの下ネタ」という理由でボツになったという部分を披露してくれた。黒いベール=女性用服飾品による男性の「罪」の表現=男女性の交錯、ときて「おかまバー」に繰り出してみよう、ということになったらしい。(よくわからんコジツケだが。)

友人とチェルシーのゲイバーに出かけたムーディーは、ラップダンスのお金20ドルをケチる友だちと、しわい客を冷たくあしらうトランスジェンダー(女装癖の男性)のお姉さんの攻防を鋭く観察。The Black Veilでは、ムーディー自身がコネチカット州の裕福な中流家庭に育ちながら、その後うつ病で入院したこと、すったもんだした元彼女との関係、アルコール中毒克服など、彼の小説世界を形成しているダークな部分を浮き彫りにしている。

最初に読んだムーディの作品は「ガーデン・ステート」だった。てっきり映画化もされた「アイス・ストーム」でデビューしたと思っていたのだが、こっちの方が処女作だということに最近になって気がついた。ニュージャージーの中流家庭出身の若者たちの行き場の無さを的確に表現したストーリーは、やはり同じニューヨーク郊外であるロングアイランドの中流家庭を知る私にとって、かなり身近なものに感じられ、居心地の悪い読後感が印象深かった。

愛情が伴わないセックスと、ロック音楽、ドラッグ三昧の若者たち。やり場のない焦燥感。「アイス・ストーム」の家族と同じように、傍から見ればお金もそこそこにあって、一応教育も受け、郊外の高級住宅地に住む理想の核家族というものがいかに形骸化しているかを、これでもかと見せつけてくれる。アメリカが求めた豊かさの中に幸せはなかったのだろうか、と問いかける。彼がアップダイクやチーヴァーと並び称される所以だ。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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