今年の全米図書賞は地味なベテラン作家の作品ばかりで予測困難ー2003 National Book Award nominees are literary veterans


今月末に発表される全米図書賞の最終候補作品が決まりました。蓋を開けてみれば、ベテラン作家の久しぶりの作品が多く、どれも今まで地味な売れ行きしかしていなかった本ばかりで、あらためて今年の上半期は「ハリ・ポタ」第5作とヒラリー・クリントンの自伝以外は話題作がなかったことを感じました。

フィクションの候補作品は、現代アラスカを舞台に60年代のヒッピー文化を彷彿とさせるコミューンでの争いと人間模様を描いたT・C・ボイルの「Drop City」、戦火をくぐり抜けて敗戦後の広島にやってきた兵士と、不治の病に冒された弟の看病をする少女の恋の行方を描いたシャーリー・ハザードの「The Great Fire」、黒人が黒人の奴隷を持つという、黒人奴隷解放史に埋もれてきた史実を背景にしたエドワード・ジョーンズの「The Known World」、ニューヨーク郊外を舞台に不倫がもたらす家族の崩壊を描いたスコット・スペンサーの「A Ship Made of Paper」、戦争に疲れ科学がもたらす明るい未来を信じて家族と共に南部に移り住んだものの、知らずに原子爆弾開発に関わってしまう男を描いたメリーアン・ウィギンズの「Evidence of Things Unseen」が選ばれています。個人的にはハザードかスペンサーに取ってもらいたい気がするのですが、今年は下馬評を聞いても誰が突出しているというわけではなく、業界でも全く予想がつかないようです。

全米図書賞はこの他にノンフィクション、ヤングアダルト、詩歌の部門があり、イギリスのブッカー賞と並んで大事な賞とされています。そのブッカー賞ですが、オーストラリア人のDBC・ピエール著「Vernon God Little」で、テキサス州の学校で大量殺人に問われた高校生の裁判を描いたブラックコメディーだということ。(アメリカではまだ刊行されていない)おまけにこちらは新人だということで、全米図書賞と対を成しているような気がします。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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