ニュースがニュースにならない出版業界の謎

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ニュースがニュースにならない出版業界の謎Books and the City

このところ、アメリカの出版界を揺るがせるようなニュースが続きました。とはいえ、一番ショッキングだったのは関係者の反応が意外にも冷めていて、あまり揺るがなかったことでしょうか。

そのショッキングなニュースというのは、まず、AOLタイムワーナーが出版部門を売りに出したこと。合併以来、幹部の思惑に反して株価は大暴落、細身の経営をしていこうということになったのか、ワーナーブックスやジョン・アービングを抱えるリトル・ブラウンといった有名出版社を手放そうというのです。

確かに書籍出版は利益マージンの低い産業ですが、株のような資産投資と違ってそれなりに地道な見返りを期待できる商売のハズです。それを要らない、ということは、もはや本はAOLタイムワーナーのマルチメディア構想から外れてしまったということでしょうか。

もう一つのニュースは、ランダムハウスが通称「リトル・ランダム」という文芸出版部門のアン・ゴドフ編集長を解雇したこと。赤字採算が続いたから、という理由だそうですが、これも内情を知る者にとっては納得がいかないものでしかありません。それというのもリトル・ランダムにはハードカバー部門しかなく、通常、出版社はハードカバーで賭けをして、ペーパーバックで手堅く利益を出すものだからです。リトル・ランダムにはサルマン・ラシュディーら大物作家も名を連ね、ベストセラーも出した実績があるのに、残念なことです。

そうはいっても、実力のある編集者ならすぐに他の出版社から声がかかるということでしょう。ゴドフ編集長も、解雇から1週間で最大のライバル社であるパットナム・ペンギンに移ることができました。

そして今回、ショックだったのは、こういったニュースに対して、一昔前なら書籍出版者が一丸となって経営者側を糾弾していたものなのに、なんだが意外にもあっさりと皆が書籍出版界の現実として受け止めてしまったかのようです。これが「あきらめムード」というものなのでしょうか。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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