新生ブッカー賞に輝いたヤン・マーテルの作品は南米産の焼き直し?ーRenewed Booker Prize winner admits being inspired by a Brazilian novel


イギリスで最高の名誉とされる文学賞、ブッカー賞に新しいスポンサーが付いて化粧直しされたことは、679号でもお伝えしましたが、その新生「マン・ブッカー」賞の今年の受賞者は、カナダのヤン・マーテル氏に決まりました。ところが、彼の受賞作「The Life of Pi(パイの人生)」の内容をめぐって、少し物議が醸し出されています。「パイの人生」は、主人公のインド人青年が家族と船でカナダに向かう途中遭難し、様々な猛獣たちと救命ボートに取り残され、結局パイ青年とトラが残るという設定のファンタジーで、その奇抜で絶妙な設定に賛辞が送られましたが、それがブラジル人作家のモアシーア・スクリーアが書いた「マックスと猫たち」という本に似ている、というのです。それを受けてマーテル氏は、著書でもそのことに触れており、NYタイムズに寄稿したジョン・アップダイクの書評を読んで、すばらしいアイディアだと思ったことを認めました。

ところが、NYタイムズのアーカイブにはそれらしき書評が見当たらず、果たしてこれが知的所有物の借用に当たるのかどうかも今のところあやふやになっているようです。大きく違う点は、マーテルの作品が宗教問題に触れていることと、スクリーアの作品では猛獣はナチズムを暗示している作品とされている点です。当のスクリーア氏に聞いてみると、「他の作家が私の作品を高く評価したことの結果だと思えば嬉しいが、事前に何の相談もなく、他の情報もなかった」と言っています。

この他にも古くは1938年にダフネ・デュ・モーリアの「レベッカ」という作品がブラジル人作家のキャロリナ・ナブーコの「後継者」の盗作だという疑惑もあり、南米の文化遺産がヨーロッパによって搾取されていると感じている人も少なくないようです。これを機会に南米文学がもっと評価されるようになればいいのですが。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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