「コールド・マウンテン」次回作のために出版社を乗り換えたフレージャー


以前にこのコラムでアメリカの作家は一つの出版社とだけ契約すると書きましたが、だからといってその出版社を生涯変えないのかというと、そうでもないようです。

チャールズ・フレージャーはデビュー作「コールド・マウンテン」で97年にいきなり全米図書賞をとり、これまでに 300万冊近くを売り上げたベストセラーとなりました。独立戦争を舞台に、戦うことよりも愛することを選んだ兵士の話です。その彼がようやく第2作目に取りかかり、2005年には仕上がるとか。

版元のグローブ・アトランティック社はどこのメディア会社にも属さない中堅の文芸出版社で、彼の才能を発掘し大事に育ててきたのですが、そこで支払われたアドバンス、つまり前払い金は10万ドルと処女作にしてはまずまずの金額。

次回作も同じ時代背景で、続編に近いものになるということですが、フレージャーは業界一スゴ腕といわれるエージェントに乗り換え、版権を「競り」にかけたのです。これは数社が金額その他を内密にしたままベストオファーを伝えるもので、公開されないので、選ぶ方も金額が一番多かったところではなく、宣伝のしかたや文庫版の出し方まで吟味して選べるというシステムです。

処女作が売れたことや、今夏から映画化も着手されることを考えれば金額は500万ドルでも不思議ではないといわれますが、グローブ社にはちょっと手が出せない金額になってしまいそうです。フレージャーは処女作の出版に関しては感謝しているし、グローブ社も「コールド・マウンテン」のおかげで注目を集めたわけですが、小さい出版社でいったん売れた作家が大手に引き抜かれるのはよくあることです。特にフレージャーのような遅筆な作家にとっては背に腹は代えられぬ、といったところでしょうか。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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