久しぶりの法律スリラーで本領発揮したジョン・グリシャム


最近は自分の故郷を舞台にした家族小説や、軽いタッチのクリスマス・ストーリーを書いていたジョン・グリシャムが久々に「The Summons」で本領を発揮しました。前作の「The Brethren」から2年振りに発表された堂々400ページ、28ドルの最新刊に、待ってましたとばかりにファンが飛びついたのか、さっそくベストセラーリストに登場しています。今回は父親の残した多額のナゾの遺産の出所を秘密裏に探り、放蕩息子の弟に譲るまいとする法学部の教授が主人公です。

アメリカの出版界では、グリシャムのような売れっ子に限らず、著者は一ヶ所の出版社とだけ契約を結ぶのが一般的です。どんなに筆の速い作家でも、長編小説なら1年に1冊が平均的なペースです。作品も向こう何年で何冊、という風にかなり長期的な取り決めが交わされます。これが日本だと、ひとたび名前が売れるとあっちからもこっちからも声がかかって作品を乱発するようになる作家もいるようです。

編集者から「何でもいいから、ウチにも書いて下さいよ」とでも言われるのか、エッセイやら対談集やら欲張って出しているうちに、読者にとってみれば、よく言えば軽い読み応え、悪く言えば内容の薄い作品が増え、そのうちに何か物足りないという思いが募るはずです。

どんな才能も、蓄積する時間をかけなければ必ず枯渇すると思うのですが。書き手にとって、数打ちゃ当たるうちに、どんどん出して少しでも多くの印税を稼ぐ方がいいのか、原稿を仕上げるのに充分な時間をかけ、作家としての評価も大事にできる方がいいのか、どっちでしょう? 読者にとっても好きな作家が書いたものなら何でも読みたいと思うのか、間があいてもいいから読み応えのある作品を期待するのか、どっちでしょう?

written by

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
Related Posts
© Copyright - Books and the City - All rights reserved.