文学賞の花形は海外から祖国を描くディアスポラ文学


秋は国内外で各文学作品の受賞作品発表がある季節。11月7日にはイギリスでブッカー賞が、15日にはアメリカで最も栄えあるナショナル・ブック・アワード(全米図書賞)が選ばれます。先月もノーベル文学賞に中国出身、フランス在住の脚本家、高行健(ゴウ・シンジェン)氏の名前が発表されたばかり。賞をとれば即ベストセラー、というわけにはいきませんが、少なくとも高氏の場合、中国語あるいはフランス語を言語として書かれた作品がさらに他の国でも翻訳されることになり、アメリカでも来月に、揚子江紀行記で彼の最高傑作といわれる「Soul Mountain」が刊行される予定です。

高氏は文化革命の後、北京の人民芸術座で脚本を書き始め、「バス停」「絶対信号」「野人」といった彼の作品はアジア、ヨーロッパ各地で上演されました。87年にパリ郊外に移住、以後はフランス語と中国語で作品を書き続けています。祖国中国について書かれていながら、作品のテーマには常に「個人対社会」という、実にグローバルな深みがある、と評されてきました。

思えば92年に『イギリス人の患者』でマイケル・オンダーチェがブッカー賞をとったのに始まり、97年同賞のアルンダティ・ロイ氏による『小さきものたちの神』、そして今年のピューリッツァー賞フィクション部門で最優秀作品に選ばれたジュンパー・ラヒリの「Interpreter of Maladies」(632号OCSニュース、「洋書のススメ」で紹介済み)と、イギリス在住のインド出身の作家が注目を集めたと思ったら、去年全米図書賞に輝いたハ・ジン氏のモWaitingモ然り、高氏然り、今度は中国ディアスポラ作家が世界の文壇で脚光を浴びています。次世紀のこれからの世界がどう動こうとしているかを暗示しているような気がします。

祖国を離れるとそれまでは見えなかった何か違うものが見えてくるのでしょうか? 母国語以外の言語で文章を書くと今まで表現できなかった何か新しいものが生まれるのでしょうか? もし貴方が今何かを感じていて「書きたい」と思っているものがあるのなら迷わずペンを取るべき(パソコンに向かうべき?)でしょう。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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