米出版業界の影武者、パッケージャーとは?

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米出版業界の影武者、パッケージャーとは?Books and the City

なんだか急に暑くなって、いきなり夏。メモリアル・デーの祝日で、ちょっぴり長い週末もそろそろ終わり。

そうそう、「ブック・パッケージャー」について書くつもりで忘れていました。本を作る行程がことごとく分業され、外注可能な米出版業界には、日本ではあまり馴染みのない関連業種がたく さんあります。まぁ、編集プロダクションの下請け業みたいなものに該当するのでしょうが、ブック・ドクター、ブック・パッケージャー、ゴーストライター、 フリーランスエディター、ブック・コンサルタントなどなどややこしいものもありますが、ブック・パッケージャーとは、主に、出版社の注文を受けて、シリーズものをお届けする編プロ、と思えばいいでしょう。

具体的には、例えば、人気テレビ番組のノベライゼーションなど、登場人物やキャラクターが決まっていて、違うエピソードでタイトル数を量産する必要がある場合、パッケージャーにお願いすることが多いですね。

今回、「オーパル・メータ」の本で、盗作が問題となり、結局回収に至ったカーヴィヤ・ヴィスワナサンの場合は、こういう経緯があったとされています。

現役ハーバード女子大生によるYA本、ということで大手総合エージェンシー、ウィリアム・モリスは、彼女がこの小説を書きあげる前から版元のリトル・ブラウンと2タイトルでアドバンス額50万ドルという契約をとったものの、処女作に苦心していた著者をパッケージャーに紹介します。Alloy Entertainmentというこのパッケージャーは、映画配給会社ワーナー・ブラザーズとのコネを持ち、少女マーケットに強いところで、映画にもなったアン・ブラシャーズSisterhood of the Traveling Pantsのヒットで有名になりました。少女向け通販カタログDelia’sもアロイ傘下、といえばわかる人もいるかも。

パッケージャーはまず、企画書ありき、で出版社にアイディアを持ち込み、オーケーが出てからライターを捜す、ということをよくやっているわけです。

そこで、ヴィスワナサンはアロイをコンサルタントとして、どういう風に書けば、ウケのいいYA本になるかを指導されたようです。キャラクターはこういう風にして、こんな感じのエピソードがあって、こういうあらすじだと、売れますよ、というアドバイスがあったのでしょう。

そしておそらくは、こういう会話や、エピソードを参考にしましょう、ということで、出典を明らかにしないまま、もしかしたら盗作の対象とされたメーガン・マキャフィティーのシリーズや、ソフィー・キンセラの本が入っていたのかもしれません。それを知らずにもし、ヴィスワナサンがさしだされたものの固有名詞を変えてそのまま使ってしまったのだとしたら、今回の盗作問題がどうして起こったのか、説明がつくというもの。

なにしろ、一説にはこのパッケージャーがアドバンスの半額をそっくりそのまま受け取る話になっていたという噂もあります。

ではどうして、盗作が起こってしまったのか。著者だけを責めるわけにはいかないでしょう。完成原稿を読まないうちから大金を積み、著者が困っていると、パッケージャーに投げた版元にも責任はあるだろうし、いくら何でも素人相手に「参考にしろ」と既刊本をマネさせるパッケージャーの大量生産主義にも問題はあるだろうし、自分で本が書けないなら、作家になろうなんて思うなよ、と言いたくなるこの若い著者の甘さ・未熟さもあっただろうと思います。

その背景にティーンエイジャー向けのYAタイトルの需要が多すぎて、生産が追いつかない現実もあり、そして一連の騒動を伝える記事の中に、とあるYA編集者 が言ったこの言葉が個人的には一番イヤーな感じがしたのですが。”The teenage experience is fairly universal.” つまり、女の子の経験する世界なんて同じようなもの、という発言。つまり、人種がどうであれ、男の子がどうだとか、仲間や友だちがどうだとか、将来の進路はどうするかとか、悩むところは大して変わらないんだから、同じような本になるのはしょうがない、と言外に示唆しているともとれるわけで。これが個性を大 切にする?アメリカ社会の実態なのかもしれません。

天の邪鬼な私としては、女の子よ、YAなんて読んでないで大志を抱け!と言いたくなったりするエピソードではありました。個人的にはティーンエイジャーの頃にジェーン・オースティンとブロンテ姉妹を読破しておけばよろしいんではないかと。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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