書籍の終焉か、平等な情報社会の実現か—本の電子化をめぐる論争


同僚がこんなものをくれました。一瞬、なんじゃ、これは?と思ったら、実はワシントンで行われたブックフェア、 Expo America (BEA) で、グーグルが配っていたクッキーだとか。

ここ1年ほどになるだろうか、グーグルやMSNといったIT企業と出版社の間で攻防が続いているテーマ—それは図書館蔵書の電子化を巡るもの。

高速スキャナーが開発され、検索機能も充実し、次なるサービスとしてグーグルがいくつかの大学図書館と契約し、のべ何千万冊にも上る蔵書をオンライン化する計画を発表したのが2004年の暮れ。利用者は、版権切れのものは無料で全文を、切れていないものに関しては一部を無料で見た上で、全文を有料でダウンロードできる…とされていたのだが、当然のように出版社側から「待った」がかかった。

その後、大手出版社の代表団体がこれを著作権侵害行為にあたるとして法的手段にでたり、MSNも同様のサービスに着手する計画を発表したりして、この先、どうなるんでしょうねぇ、という気持ちがいつもどこかにあった。

その議論に火をつけたのが5月14日付のNYタイムズ・マガジンに載ったケビン・ケリーの”SCAN THIS BOOK!”という長い記事。この名前に聞き覚えはありませんか? そう、かの「ワイアード」誌の創刊者ですよ。彼の描く「本の未来」は映画The Matrixのように、本の情報がつながり、錯綜し、一つのコミュニティー(?)を形成する世界。そこは背表紙とか、ノンブルとか、誤植とかとは無縁の世界。

かつて古代アレクサンドリアにあった図書館のように、ありとあらゆる情報が全ての人に平等に届く、とまぁ、聞こえはいいのですが、古めかしい出版業界の重鎮たちが賛成するはずもありません。BEA(毎年春に催される米国内最大のブックフェア。フランクフルトやロンドンのブックフェアと比べると、書店の人向けのイベント中心)においては、ジョン・アップダイクがスピーチでこれに反論し、業界誌パブリッシャーズ・ウィークリーのサラ・ネルソン編集長も「著作権を無視することなんでできないわよ!」と噛みつき、けっこうな騒ぎになっているのであります。

個人的にはどっちを応援するとか、反対するとかは一切なくて、ただただ傍観するのみ、なんだけど。どうなるのかなぁ?

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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