文芸小説か、大衆小説か? フランゼンの新作が大ヒットの兆し


作家として自分が書くものが大衆小説なのか、純文学なのか、世の物書きはどうやって折り合いをつけているのでしょうか。イメージとしては、ベストセラーを次々と世に送り出してガッポガッポと儲けているのが前者、産みの苦しみを経てようやく日の目を見、書評家の賛辞を受けながらも肝心の部数は伸びずに苦悩しているのが後者、という感じがしますが、この部数だけはコントロールできませんしね。最近、久々にその「文壇」に一石が投じられ、賛否両論を醸し出したのがジョナサン・フランゼンの第3作に当たる「The Corrections」という本。

ことの起こりは、出版関係者の間では以前から評価の高かったフランゼンの最新作が、人気トークショー「オプラのブッククラブ」の推薦図書に選ばれたことから。全国に何百万人ものファンを抱えるオプラ・ウィンフリーのTV番組で選ばれた本は、今まで1冊の例外なくベストセラーとなり、著者もグーンと知名度アップ、出版社にとっても「金の卵」を生んでくれるニワトリのような存在です。

ところが、書店に並ぶ自分の本に「オプラのお墨付き」というシールが貼られるのは「企業文化に魂を売り渡したのと同じこと」とフランゼンが異を唱えたことから、番組側と出版社側の関係がこじれ、結局は番組出演の依頼も取り下げられることになりました。

確かにブッククラブの推薦図書は玉石混合、ノーベル賞作家の最新作から、無名新人のデビュー作まで、フィクション、ノンフィクションを問わず、実にバラエティーに富んでいます。フランゼンの書く本は、表向きはアメリカの普通の家庭を描写しながらも社会文化や宗教といったテーマを掘り下げ、決して文体は難解ではないものの、なかなか読み応えがあります。決してブッククラブにふさわしくない作品とは言えません。

ところがフランゼン氏本人は、ちっとも売り上げ部数だの、有名人になることだのに興味がない様子。小さな場末の酒場で行われた地元の朗読会に現れたときも、普段着で客といっしょに座っていたので壇上に上がるまで彼がそこにいたことに誰も気がつかなかったぐらいです。おまけにテレビ出演を取りやめたことでかえって話題になり、本の売れ行きもウナギ登り。これをきっかけに日本でも紹介されて欲しい作家のひとりです。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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