いつあるかわからないオプラの「ブック・クラブ」は出版界のジャンボ宝くじーOprah’s Seal of Approval is a Million Dollar Jackpot for Author and the Publisher


アメリカの出版業界で一番影響力のある人といえば、いつもケタケタ笑っているアマゾンのジェフ・ベゾス社長でもなく、むっつりスケベおやじ風バーンズ&ノーブル社長のレオナルド・レジオでもなく、やっぱりオプラ・ウィンフリーだろう。(彼女のことは以前にも取りあげたことがあるので参照までに)

彼女のトークショーは平日午後4時から放映(夜に再放送)されているので、視聴者はほとんど全員、専業/パートの主婦層だと思っていい。この番組で不定期にオプラが気に入った本をみんなで読んで語り合う「ブック・クラブ」というコーナーがある。

by nayrb7 http://flickr.com/people/nayrb7/昔は毎月のようにやっていたが、オプラは絶対に自分で読んで選んだ本しかやらないし、番組で取りあげるトピックは本以外にもいくらでもあるので、「ブック・クラブ」は一時中断したり、数ヶ月に1回になったり、新刊はやめてクラシックから選ぶとか、オプラも色々模索を続けていたようだ。

何しろ彼女がテレビで「今月の本はこれで〜す!面白かったよー。皆で読みましょうね」とやる度に軽—く次の週で売上げが100万部を突破してしまうのだ。版元にとって嬉しい悲鳴をあげるどころか、エクスタシーでちびって失神してしまいそうな福音だろう。

今では、オプラが次の本を選ぶと、それがどのタイトルかが極秘で版元に伝えられ、「発表するまでに『オプラのブック・クラブ課題本』っていうシールを付けて数十万部を書店に届けておいてね」という通達が来るまでになっている。そして業界では「今度のは○○社のハードカバーらしいぞ」「定価が××ドルのペーパーバックだって」「じゃ、あの著者の△△かな、オプラらしくもない」「いいなぁ、あそこのインプリントはもう2冊目だよ」と喧しい憶測が飛び交う。

憶測どころか、業界人のブログで「次のオプラのタイトルを当てよう!コンテスト」をやってみたり、今回は誰かが印刷所のデータを盗み見て「ハーパーコリンズ社から一気に75万部の刷り注文が入っている本がある。タイトルはわからないが、印刷所のデータでは××ページあるハードカバーだ」というヒントからほとんど確定されてしまうケースもある。

毎月「ブック・クラブ」が行われていた頃は、各出版社もこぞってオプラに読んでもらおうと自社の本を段ボールで送りつけていたが、今ではその効果もないらしい。今度はいつブック・クラブがあるともわからない。忘れた頃にやってくるジャンボ宝くじみたいなものだ。

今回「大当たり」したのはデイヴィッド・ウロブルースキーの、『エドガー・ソーテルの話』。

The Story of Edgar Sawtelle

この6月に出てから、無名の新人のデビュー作にしてはそこそこの35万部を売り上げていたので、この夏(アメリカでは読書の季節は夏なのだ)話題の1冊でもあった。そこへオプラのお墨付き、一挙に100万部を突破。

日本でも「王様のブランチ」の本のコーナーや、「徹子の部屋」などで取りあげられた本が急に売れる、ということはあるけど、桁が違うっしょ。

オプラのブック・クラブについてはジョナサン・フランゼンとの対立や、ジェームズ・フレイの嘘メモワール事件など、色々と面白いエピソードもあったので追々書いていくことにしたい。

Oprah’s image by nayrb7 http://flickr.com/people/nayrb7/

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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