売上げシェアは3割だけど、アメリカ人の半数以上はEブックを読んでいる—Musings on the latest Harris Poll on Ebooks


ニールセン社傘下のハリス調査の結果がちょっと面白かったので紹介する。

アンケート調査に協力した2234人のうち54%が「Eブックを利用している」と答え、“ミレニウム”世代、つまり2000年以降に生まれた14歳以下に至ってはそれが66%、つまり3人に2人がEブックを読んでいると答えた。

前回の「アメリカの電子書籍“ブーム”は終了しましたので」のブログエントリーを修正・補足して「マガジン航」や「ミニッツ・ブック」でアップしてもらったが、「そもそもアメリカは出版不況に陥っていない」と書いたところ、「なぜ?」と疑問に思う人が多かったようだ。

ぶっちゃけ言えば、ここ十何年も経済全体が不況に陥っているのは日本だけで、アメリカに限らず、毎年前年比で10%を上回るぐらいの勢いで書籍の売上げが落ち続けている国なんて他にないんじゃないのかな? 世界のどの国でもネットの発達で「本離れ」が進んでいるのは確かだろうけれど、それは読むモノがデジタルになっただけのことなのかもしれないし。

それを考えると、日本の出版不況の根本的な原因は、経済回復が芳しくないこと、紙の本の(つまり既存の)流通制度に固執するあまり、Eブックを含めたデジタル化への対応が遅れている、あるいはわざと対応していない、ということに尽きるんではないでしょうか。(それと「出版不況」の括りで書籍も雑誌も一緒くたに語っているからでしょう。アメリカでも雑誌業界は書籍業界よりもさらに厳しい状況ですから。)

もっと大胆な見解を言わせてもらえば、「日本以外では、そもそも皆が皆、本を読むのが当たり前だと思っていない」ということもあるかと思います。このハリス調査に応じたアメリカ人のうち84%が「年に1冊は本を読む」と答えているということは、実に16%が「全く〜ほとんど読書をしない」ということだし、読むと答えた人の中でも1ヶ月に1冊は読む人が36%。平均すると一人あたり年間17冊。

つまり、読む人はたくさん読むし、読まない人は読まない。アメリカの出版社にいたので、感覚としてわかるのだけれど、本に興味のない人にまで読んでもらわなければ会社がまわらないようにはできていないんだよね。アメリカでは、頭ごなしに本を読むのは良いことだ、本を読むのは勉強になる、本を読まないのは恥ずかしい、という刷り込みがないんですのよ、奥様。

音楽を聴いたり、映画を観たり、という「娯楽」のひとつとして捉えられているんで、やれ「出版文化を守らねば〜」みたいなオッサン臭い主張も聞かないし。

読書人口を年齢層で分けると、ベビーブーマー世代から上が、ミレニアム世代よりたくさん本を読んでいる。だが、「最近半年間で読書量は増えたか、減ったか」を聞くと、上の世代(14〜15%)よりもミレニアム世代(21%)が「増えた」と答えているので「若者の本離れ」とは決めつけられない部分がある。

決定的に日本と違うのは、女性は平均年間23冊、男性は11冊となっている点だろう。

言い換えれば「日本の男性は本が好きだから、面白いから、ではなく、“本をよまなくちゃ” “勉強しなくちゃ” “知識を得なきゃ”という観念に囚われて本を読んでいると感じるんだよねぇ。以前、このグラフを見て、日本と韓国と上海にその傾向が顕著だということは、なにか儒教的な束縛なのかしらねぇ、と思ったものだ。

だからもしかして日本で書籍の売上げが落ち続けているのは、バブル以降の若い世代の男性が「本をよまなくちゃ」という言外の束縛から解き放たれているだけなのかもしれない。と最近それを一瞬強く感じたのは、米アマゾンが「死ぬまでに読まなくちゃ100冊」みたいなリストを発表したら、私のツイッターやFBつながりの出版業界の男性たちが「オレは何冊」「負けた」「さすが○○さん」とかやりだした時。

でもこのリスト、どう考えたってアメリカ人向けだし、よく見たらSNS読書サイトGoodReadsのユーザーが投票した結果で、そのサイトを買収したアマゾンがちゃっかりリストを利用してアマゾンの本をポチってね、って企画にしか見えなかったのですが。でもそれって読まなくちゃ、ってなチャレンジに感じるんだー、人と比べっこするものなんだー、という気づきがありましたもので。

ちなみに私はここに挙げられている本の90%は「どういう本なのか説明できる」状態にあります。最初から最後まで読んだかは別として。なにしろアメリカでどういう本が読まれているかを把握しておくのが仕事の一部だからね。でも私自身はそんなにメチャクチャ本が好き、というわけでもない。個人的に読んでて楽しい本は、このリストとは全然違う種類の本だったりするし。

話をハリス調査に戻すと、面白いのは、「主にEブックで読む」と答えた人が、「主に紙で読む」と答えた人より、多くの本を読んでいること。多読だとEブック利用率が増えるのか、あるいはEブックの単価の方が安いので同じ予算ならもっと買えるということなのか。

一方で、全体の半分近い46%の人が、紙の本しか読まないと答えており、Eブックのみと答えたのは6%のみ。この数字が今後どう変わるか、あるいはあまり変わらないのか、興味のあるところだ。

なぜか私が見ていたハリス調査のページに行き着かないので、他の媒体のレポートへのリンクを貼っておきます。

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