女の子を「可愛い」とチヤホヤしてはいけない


それこそ世界のどんな国でも美しい女性を讃える文化はあるわけだけど、日本のそれは特に幼稚で、社会全体にとっても有害だと思うに至った。

(こういうことを書くとすぐにキモヲタ男どもが、ブスなババアの僻み、ジェラシーはみっともないとか、くだらん攻撃をかましてくるので最初に釘を刺しておくけれど、この歳になればその辺は達観して客観的に自分の容姿も判断できるので痛くも痒くもないわい。 ツイッターやフェースブックでは顔出ししてるし、名前をググれば取材を受けたときや講演のときの顔写真なんかも出るので、いくらでもはてブや2ちゃんで貶めればいいよクソが。)

私はこれまで美人と褒められることもなければ、ブスと虐められることもなく、偏差値50くらいのの見目形をしている。考えてみればありがたいことだ。私が仕事をしてきたアメリカの出版業界は日本の男性優位の企業文化と違って、どこをどう見渡しても「おばさんの園」なので、見かけで勝負しなければならない局面も経験がない。若作りもしなくていいし、アメリカのスタンダードでいくと、この体重で痩せている方に入ってしまうww

そんな環境に身を置いていたので日本の女性は大変だなぁと人ごとのように思ってきたのだけれど、いつまでも不況が続き、人々の心がギスギスし、シングルマザーにも妊婦にも冷たい社会であることが浮き彫りにされ、同じ女性が(たぶん自分で気づかない部分も含めて、私のように海外に出るというオプションがないまま)家庭でも職場でもとんでもなく苦労をしているのを見るにつけ、黙っていられなくなってこのコラムを書いている。

可愛い女の子(って厳密には「女の子」と呼べるティーンエイジャー前の話ね。日本だと永遠に女子力が求められていつまでも女の子扱いされるから鬱陶しいけど)を「可愛いね」と言って愛情をもって可愛がることそのものに害はない。自然な感情だろう。だが、問題は日本は女性を「可愛いかどうか」以外の尺度で評価できない、あるいは意図的にしない、ということだろう。

 世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ報告で日本が調査対象136カ国のうち105位、なんて数字を聞いても驚かないもの。

もちろん、世の中には「可愛くあること」で食べている職業の人たちもいるので、その人たちに対して可愛いか可愛くないかという評価をすることは避けられない。AKB48の娘たちみたいないわゆるアイドル、とかね。私はある時期まで彼女たちも「芸能界」にいるのだから、なにか「能力」があるはずだ、と思っていて、歌手にしては歌は合唱で上手ではないし、ダンスもただの群舞で上手ではないのが不思議だったのだが、彼女たちは「可愛くあること」を武器に、ファンに相手にCDを何百枚も売りつけ、握手させ、投票させ、搾取しては大ボス秋元に貢ぐ可愛さの「プロ」なのだなぁと得心がいった。

問題は、それ以外の生業の女性に対しても、仕事の成果や、過去の経験や、取り組もうとしている社会運動の中身ではなく、容姿の善し悪しでまず判断されることだ。マスコミで取り上げられ宇「美人すぎる〜」とかマジ、吐き気がするんだけど。

可愛い娘をチヤホヤするのは世界共通とはいえ、日本は特にその度合いがヒドイと以前から思ってきた。そして、クリミアの女性検事総長が萌えマンガにされてロシアだけでなく、英BBCでも取り上げられるに至っては、「ああ、国外にまで知られてしまった」と恥ずかしい思いをした。このことが海外の記事になった理由は、ロシア人にしても「さすが我が国の美人を見逃さないとは日本もやるな」などと感心しているわけではなく、「バカぢゃね?」「ニュースのキモはそこじゃないだろw」「やだ、日本人ったらこんなことしているよ」ということでnewsworthyとされたのだから。

しかも萌えマンガ回してる人たちは、クリミアの領土問題なんてちっとも関心がないんだろうなぁ。日本だって今もロシアに握られたままの領土があるわけだから、人ごとじゃないんだけどねぇ。(偽おっぱい炎上と同じで、無知を指摘されると誰しも慌てるわけですが)

他にも本国ではそんなでもないのにやたら日本で人気がある(あった)女優ってのもいるよね。昔だとソフィー・マルソーにジェニファー・コネリー、メグ・ライアン。アカデミー賞とれるような演技力? ボックスオフィスを動かす集客力? そんなのどーでもいー、可愛いんだからネ申、みたいな。

 これのどこがいけないのかと言えば、女性だと言うだけで、その仕事に打ち込んで、その仕事において本来評価されるべき能力が後回しになることだ。能力があってその仕事に向いていたり、少しでも良い仕事をしようと努力している女性が踏みにじられるということだ。

例えば女子アナ。ニュース番組でニュースを読み上げるという仕事には、本来「可愛いかどうか」よりも、十分にそのニュースに関するバックグランドの知識があるかどうかとか、急なニュースが飛び込んできたときに冷静に対処できるかどうか、ってな能力が求められて然るべきだと思うんだけど、日本だと「ニュースキャスター」ってタダのタレント業になってるよね。あんなに女子アナの脚を映すの、日本だけだもん。

こっちのテレビでダイアン・ソイヤーやクリスティアン・アマンプールがアフマディネジャードやオバマら世界のリーダー相手にインタビューこなしているのを見ると、日本には安藤優子ぐらいしかおらんのかい!と情けなくなってくる。タレントならタレントで、分けてほしい。ニュース読ませるの、止めようよ。ジャーナリズムは見世物じゃないんだよ。

これが政界になると、可愛いのさえもいなくて、あったまオカシーんでねーの?みたいなのとか、これをマドンナと呼ぶのかよwwwってなレベル。ヒラリー・クリントンやアンゲラ・メルクルやジャネット・イエレンやナンシー・ペローシがいる国がひたすら羨ましい。

そして今回の小保方晴子のSTAP幹細胞論文の騒ぎにしても同じこと。これだけ画期的な論文が発表されたとき、最初からマスコミが「それ本当?」とか「これがどういう風にすごい発見なのか」という点を突っ込んでいれば「割烹着が〜」「ピンクの壁が〜」みたいなニュースにはならんでしょ。SNSやピアレビューでちゃんと突っ込むべき人たちが突っ込める時代だからすぐに発覚したけど、そうじゃなかったら今頃、オボちゃんのサイエンスアワーとかってマスコミに引っ張りだこだったはず。

もう一つ、釘を刺しておくと、私が理研の小保方博士は「可愛い」女の子としてチヤホヤされている、などと具体名を挙げて指摘すると「可愛くないじゃん」と自分のストライクゾーンに入らないから、自分は彼女をチヤホヤしていない、従って女性を見下すようなことはしていない、という理論をかましてくる男もいるわけだが、これも既に「可愛いかどうか」という価値観で判断している、という部分では同じなので、自分は違うんだ、などと思わないように。ちなみに、本当に小保方博士をそういう基準で判断してない人がいるとしたら「あれ?そうだっけ?論文の中身に気をとられていてどういう顔をしていたか思い出せないよ」という反応をするハズだから。

まぁとにかく。「女性の能力を、その人が可愛いか可愛くないかと関係なく、正当に評価する」ーーどうしてこんな簡単なことができないわけ? それができてるんだったら、国会も自然に半分くらい女性になるし、社長や校長や医院長になって活躍してる女性がもっといてもいいはずでしょ。

女性って周りと仲良くやっていきたい、と思うと色々と努力できちゃうんだよ。やりたいことができる環境に置いてやると、けっこう男性顔負けのこと、やらかしたりできるんだよ。PTAやママ友サークルでいがみ合っていたり、婚活仲間でブスを貶めたり、職場の嫌われお局として君臨しちゃうののは、「女の幸せ」というパイがあまりにも小さくて、女はいくつになっても可愛くあるべき、というパイ型にはめられているから。

女性が男性と同じ仕事を任され、男性が家事と子育てをちゃんと半分ちゃんとやれば、女子力磨きだけに一生懸命で、婚活パーティーで男性の年収をまず聞き出そうとする女性なんていなくなるよ。その方が男性もラクだと思わない? だって、年収低くても女性の方もガンガン稼ぐんだから「価値観が合う」「人柄が信頼できる」「いっしょに暖かい家庭が作れそう」って部分で、おまいらキモヲタも結婚できるんだよ? そんなに遅くまで働かなくても、ちゃっちゃと家に帰って家事をすませれば、好きなことできるんだよ? んでもって可愛い女の子が授かったりしたら、けっして握手以上のことはできないアイドルなんてどうでもよくなるんだよ?

「全てのシチュエーションにおいて美人もブスも差別するな」ーーこういうことを実際に容姿がよくてチヤホヤされている人が言ったら「性格わるい」ってなるし、私みたいなオバサンが言うと「ブスな糞ババアひっこめ」になるし、じゃあ誰が率先してやるべきかっていうと、娘がいる男性にこそ訴えたい。自分の娘、可愛いでしょ? 一般世間のモノサシでブスか美人かは別として。可愛いと思うだけでなく、将来幸せになって欲しいと願うのなら、彼女が大きくなったとき、見た目じゃなくて、コツコツと努力したことや、能力に応じて評価してもらえる社会であって欲しいと思わない? だったら娘のいるアナタが御同胞の「女は可愛いのがいちばん」ってなミソジニストを制し、少しでも世の中を変えていく努力をしてくださいな。

女の子2人を育てている父親をテーマにしたコマーシャル

だって安倍ノミクスさんたちったら、こんなことも提案してるけど、外国人を雇い入れる前に、自分の国の男性をどうにかしろよ、という気がする。

とりあえずまずは、周りの女性の容姿や外見を褒めることは今後一切しなくていいから。そういうことするのは、2人きりで口説きたい女性の場合のみ。職場の女性には仕事のことで褒めればよろし。もちろんその反対も然りで、ちゃんと仕事をやっていないのなら、女だからという理由で甘やかすことも一切しなくていい。

ということで、今回のコラムは以前書いた、「男が髪の毛のあるなし(だけ)で判断される世の中ってどーよ?」に通じる…ってか、言いたいことは同じ。

 

 

 

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
  • ponta

    ”マスコミや一部のネットのみで判断していないか。実際そんな風に女性を評価する男性はあまり見ない”とのご指摘があるようですが、どう思いますか。

  • lingual

    自分がたまたま見ないだけでしょ、としか思わない。だったらジェンダーギャップはどう説明するのですか? そこをよろしく。

  • SingleCarb

    横から失礼。日本の場合、広告/出版/情報/マスメディア業界から離脱するだけで視野ががらっと変わるような気もします。要は、それらの業界自身が「男尊女卑のマッチポンプ/自作自演/炎上商売」としてローカライズ&ビジネス化してしまったんだと思います。彼等の指摘する所謂男尊女卑批判の裏には、その内容の外信拡散による「自国への自虐性」がしばしば垣間見えます。そして、それを喜ぶ欧米中韓左派メディアも現実として存在しますよね。で、彼等が殆ど”知らない世界”である、製造業や農林水産や資源産業etc…は最早そういう属性やビジョンの社会人の居場所は無いと思います。ジェンダーギャップなどの解決アイデアもそちら側にあるはずです。

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