割烹着やムーミンのシールじゃなくて、こういうのはどう?


小保方博士のSTAP細胞の研究が注目を集めた。そのこと自体は朗報だが、日本のマスコミの報道の仕方がひどい。

小保方博士/理研のメッセージ

海外の報道と比較したタイムリーなメイロマさんのコラム

「女は可愛くて若ければいい」という価値観に毒され、「リケジョ」なんて言葉に潜む差別に、まだまだ男性視点のマスコミだけでなく、女性さえも鈍感になっている気がするので、これが他のことだったら、というのを考えてみた。例えば、「男は髪の毛があってナンボ」という世界はどうだろう? こんなことがまかり通る社会。どんな気持ちがするか想像してみて。

・今まで男性があまりいなかった分野で、あるいは最年少で男性が活躍していることを紹介する記事の見出しに「フサフサすぎるイケメン男子」と書かれる。頭髪部分をアップにした写真が必ずつく。

・小説を読むと、必ず髪の毛がフサフサのヒーローが登場し、彼の髪がどんなに豊かかという描写が欠かせない。ハゲてる主人公がそもそも出てこない。登場する女性の外見はあまり描写されない。

・「髪力(はつりょく)」「毛力(けぢから)」という言葉が普通に存在し、髪が薄くてもそれなりに努力をして多く見せないといけないという同調圧力がすごい。テキトーにバーコードなんて晒していると「男をあきらめちゃった残念な人」というレッテルを貼られ、女性だけでなく、男性からも冷たい扱いを受け、非難される。

・将来ノーベル賞をとりそうな画期的な研究が世間の注目を集めると、「ふさふさ男性科学者のお手柄」として、研究者の素顔を伝える記事に、シャンプーは何を使っているか、髪のトリートメントのコツは何かを聞かれ、使っているヘアブラシはどこのメーカーのものかが話題になる。普段は自作のお弁当男子で、得意のひじきレシピがどうだとか、わかめサラダのドレッシングは何が好きか、というエピソードが欠かせない。どんなに研究に没頭してもぼさぼさ頭でラボに姿を現したことがないのが「頑張り屋さん」だと評価される。テレビに映ると「あ~、これはアミノ酸配合のどこそこのシャンプーですね」というコメントが入る。

・うっかりその研究者が「祖父の形見のツゲの櫛を愛用しています」などと言おうものならもう大変。アナウンサーがすぐに巣鴨に派遣され、ジジババにツゲの櫛についてインタビューが始まり、ツゲの櫛が飛ぶように売れて店頭からなくなる。そのうち誰かが「ツゲの櫛にはEM菌が付着しており、髪の毛を放射能から守る」「右脳に作用して理系的思考が得意になり、ノーベル賞がとれる」などと言い出してデマが出回り、ツゲを木を祀ったクソ田舎の神社がパワースポット認定で「髪の毛が生え、頭がよくなる」とブームになる。

・男性だけが競う「ミスターコンテスト」がいくつも開催される。トップに選ばれる人は皆、頭髪がふさふさ。いかにハゲじゃないかを比べているだけじゃん、と非難すると「何いってんの、知性や内面の美しさもちゃんと考慮してるんだぞ」と言われる。だけど、実際にはハゲている人が予選にさえ通った前例はない。カツラに寛容なお隣の国のミスターコンテストでは、みんな同じような髪型になり、インターネットで「見分けが付かない!」と外国人に揶揄され、ミスターコンテストで優勝した人は「これは地毛です、ふさふさに産んでくれた親に感謝しています」と言わなければいけない。

・俳優はどんなに演技が上手くても、生え際が少しでも後退しようものなら、髪の毛が濡れた状態などベストではない時の写真と、昔のフサフサだった頃の写真を並べられ「すわ!あのイケメン俳優が劣化!」とかき立てられる。

・男の人は常に周りの人に年齢を聞かれ、「見えませんね~」「ふさふさじゃないですか、すごーい」などと、年のわりに髪の毛が多く見えることが評価される。

・30や40になっても、どういう人生を歩んできたかとか、どんなキャリアを築いてきたか、なんてことはどうでもよくて、とにかく髪の毛の手入れを怠らない「美魔男」がよしとされる。

・髪の毛の多い男性はそれだけでチヤホヤされ、初対面でも「いや~、○○さんって、ふさふさでいいですね」と言う不躾な人がいる。やんわり遠慮がちに「ただの遺伝なんで~」とか「そういうこと言わないでくださいよ」と言うと、「なんで?褒めてるんだから問題ないでしょ?」と不思議がられる。

・受付に髪がふさふさの男性が座っていることが一流企業の密かなプライドで、女性はウェブサイトで、どの会社の受付男子がいちばんイケメンか、使っているシャンプーはたぶんどこそこのメーカーのモノで…と品評される。

・男性誌の広告はほとんどが、「増毛剤」「整髪ジェル」「ブランドものシャンプー」で占められ、 本当に効き目があるのかもわからないまま、みんな何万円もつぎ込んでいる。そこに登場する男性モデルの髪はみんなフォトショで増量してあるのに、誰もそれを指摘しない。雑誌の記事も「頭皮にいい野菜ダイエット」「お風呂でできる頭皮マッサージ」「髪型で占う開運ファッション」「アンチ抜け毛の小技特集」とか、わりとどうでもいい眉唾企画ばっかり。

・有名人が少しでも髪の毛を多く見せようと努力していると、「植毛疑惑」というレッテルを貼られ、生え際をどアップにした写真を検証されて「ここが不自然」「デビューの頃より増えてる」とか勝手なことを言われる。

・ニュース番組のイントロでも、男性キャスターの生え際ばかりをテレビカメラが舐めるようにアップで映し出す。

・どんなに男性がおシャレしても「でも髪があれじゃね」と陰口をたたかれる。

・男の子が生まれると、健康かどうかより、髪の毛の量を気にされ、マルコメちゃんだと将来が不安だと同情される。

・たまりかねて、男性が「髪差別反対組織」を作ると「けっ、ハゲがひがみやがって」と後ろ指を指される。

・普段は誰もあなたに面と向かって「ハゲ」などと暴言を吐く人はいない。でもたまに、ストレスの溜まってそうなおばさんと体がぶつかったりすると「ちっ、このハゲが」と舌打ちされる。

・女性にだって髪の多い、薄いはあるのに、誰もそれを問題にしない。

 

どう? 髪の量にかかわらず、生きづらい世の中じゃない? それが女性の現実なんだよ。もういい加減にして。

written by

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
  • Ume Take

    今回のSTAP細胞発見のニュース、こちらでも話題になっているのか見に来たところ、いきなりの厳しい頭髪攻撃。
    最近、薄毛が気になり出した男性(私)としては、ショックで貴重な髪がさらに何本か抜けたかも。

    理科好き人間としては、今回の大発見には大いに興味があり、研究内容そのものを詳しく知りたいと思っていたものの、科学方面についてはとことんダメな日本の報道機関、とくに期待していませんでしたが、いま理研にマスコミが殺到し小保方博士が研究に支障をきたしているという事実を知り、さすがにア然、コレはひどいと吃驚しました。

    これからは、理研へ取材に来た報道関係者には、その場で分子生物学と幹細胞生物学の試験を受けてもらい、試験にパスした記者にだけ、取材へ応じるようにしたら良いかも知れませんね。
    今回の研究成果を伝えるものでは、下の記事がなかなか詳しく参考になりました。

    なぜSTAP細胞は驚くべき発見なのか――STAP細胞が映し出すもの
    八代嘉美 / 幹細胞生物学
    http://synodos.jp/science/6918

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