おそらく立候補はないだろうけど大人気のゴア
ドキュメンタリー映画『不都合な真実』でアカデミー賞をとるなど、04年に僅差でジョージ・W・ブッシュに破れた後(もっとも、正確には彼の方がより多くの票数を獲得していたことが今となっては判明しているが)政界を離れて自分のミッションを見つけたかのようなアル・ゴア。著書The Assault on Reason(理性への冒涜)のプロモーションのため、私の図書館(ユニオンスクエアのバーンズ&ノーブル本店)でサイン会を行った。
『不都合な真実』の日本語版とこの新作の日本語版権を取った版元として、ペンギン社の関係者とともに一番前の招待席で彼のスピーチを聞いた。(一応、関係者として招かれている都合上、写真を撮るというミーハーな行動はとれず、残念)ビル・クリントンの自伝もRH社のインプリントから刊行されているし、最近の彼は一応ニューヨークを拠点に活動しているので、イベントの折に遠巻きながら何度かみかけたことがあるが、クリントンもアル・ゴアも人を惹き付けるオーラというか、カリスマ性があることは否めない。
堂々たるスピーチ。民主党がどうだとか、次期大統領候補だとか、そんなことはもうどうでもいいんだよ、地球の環境が、アメリカの民主主義そのものが危機に晒されているんだよというスタンス。カメラの前で周到に用意されたスピーチは読めるけど、アドリブになるとバカ丸出しのバカ息子大統領と違って、こっちは2代目議員の出身ながら、キレる頭の持ち主。
日本の首相はせいぜい編集者に書いてもらったペラペラの美しくも何ともない新書を出すのがせいいっぱいだし、バカ息子大統領には自分で本を書く才能はなさそうだけど、クリントンといい、ゴアといい、民主党の若手はマニフェストを自分で書くだけの知性は持ち合わせているようだ。やたら分厚いクリントンの自伝MY LIFEのナマ原稿?を見せてもらったことがあるけれど、ノートにlong hand(手書き)でぎっしり。あれじゃ編集する方も大変だったろうな。
実は「日本語版の版元の者です」と挨拶だけして帰ろうと後ろを向いたとたん「Was itきこのききい?」と声をかけられた。側付きの若い秘書みたいなお兄ちゃんに注意を促されて、やっとそれが自分に向けられた言葉だと理解して振り向いたものの、キョトンとしていると「Climate crisisは確か、キコーノキキって言うんだよね?」と笑顔で言われ、やっと理解、「はい、そうです。気候の危機です。新作もさっそく翻訳に取りかかり、日本の読者にもメッセージが伝わるように努力する次第であります」なーんてリップサービスしてしまった。きっと「不都合な真実」のプロモーションで日本に行った時に日本語もけっこう覚えたんだろうな。ということで、私は不遜にもアル・ゴアを無視しかけた女です。
08年の大統領選挙に立候補するように嘆願する人たちも多いけれど、おそらくはそうならない気がする。アメリカの将来よりもやっぱり地球の将来の方が大切でしょ。彼が立候補することで民主党の票が割れる心配もあるし。









