援交もパラサイトもバレてますゼ


この仕事の醍醐味は、まだ刊行されていない本を誰よりも先に読めちゃうところかもしれない。今日もエージェント参りをこなして、もらってきた読んだARC (Advance Reading Copy=要するに見本刷りです)がこれ。かつてすごーいお金持ちという特権階層のものだったブランド品が今や大衆にも手が届くようにビジネス展開されたために、いかにただの商品に成り下がったかを書いたノンフィクション、デーナ・トーマス著DELUXE

しかも、イントロの第1章でヴィトンやディオールなどの歴史をざっと紹介した後にすぐ続く第2章は、中流日本人のブランド熱について。援交してヴィトン買ってる高校生とか、親のスネをかじるだけかじってシャネル買いあさるパラサイト・シングルとか、狭苦しい安アパートをエルメスで埋め尽くしているOLとか、あぁ、確かにいますよね、こういう人たちが…という事実を突きつけてくる。

中には、仏様はさておき、袈裟の下にコム・デ・ギャルソンを着込んでファッションを妄信している坊さんとか、生徒の注意を引くために安月給なのにベルサーチをまとって教壇に立つ先生の話とか、自宅のマルジェラ・コレクションに食べ物の匂いがつくのがいやだから全て外食ですませるオタクにーちゃんとか、もう恥ずかしい人たちの話がてんこ盛り。笑う気さえ起きません。

それが批判するような口調で書いているのではなく、あくまでもノンフィクションとして具体的な売り上げデータや冷静な観察で綴られているので反論の余地なし。仰る通りでございます。日本人は「happy victim」なんです。ブランドものを身につけることによって自分がブランド化している(個性と主体のある人間である)と錯覚しているわけです。

ということで、「ブランドもんは儲かる」と気づいたヨーロッパの極悪商人たちがブランドを片っ端から買収して、既にバブルがはじけた日本人だけでなく、世界中のブランド狂いの消費者から吸い取れるだけ吸い取っているドラキュラのようなお話が続くわけです。

私はプラダに買収されたとたんジル・サンダーが嫌いになったし、シグニチャー以降のコーチは興味ないので、ダナ・キャランもつまらなくなってきた最近「まだなんとか許せる」デザイナーはアルマーニとドルガバぐらいかなぁ、と日頃思っていたのですが、面白いことにこの2つのブランドは統合が進んだ業界で数少ないインディペンデントだったのですね。著者も買収話をきっぱり断り続ける仏の靴メーカー、クリスチャン・ルブタンが個人的には好きだと言っているし。

ヴィトンの焦げ茶とベージュという色の組み合わせとモノグラムの柄ほどダッセーものはこの世にないだろうと感じる私にとって、よくわからない世界でした。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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