ウォールストリート・ジャーナル紙の買収話


ウォールストリート・ジャーナル」といえば、日本では部数的にUSAトゥデイに次ぐ第2の全国紙として紹介されることが多い、ニューヨーク以外の都市ではイギリスのファイナンシャル・タイムズと並ぶビジネス紙としてひっそり置かれている一方で、ここニューヨークでは地元紙のひとつとしてニューススタンドに並んでいるタブロイド紙。日経と同じノリで、Marketplaceというセクションの記事は楽しめるけれど、基本的にはファイナンス系の人のための新聞なので、公定歩合がどうだとか、株価がどうだとか、四半期の指標がどうだとか、興味のない私はあまり手に取らない。記事はリベラルなのに、社説が思いっきり保守派なのが特徴。

日本でもそうだろうけれど、全体的に新聞の売り上げ部数は軒並み右肩下がりで、どの新聞社も赤字で火の車。新聞社っていうと、レポーター志望の若い人たちに人気のある就職先かもしれないけれど、将来性のある分野とは言えないだろう。どこもみんな苦しいし、リストラも多いし、給料低いし…。

だけど、 mogulとかnewspaper tycoonという言葉があるように、マスコミ企業のオーナーであることに固執するナベツネみたいなタヌキ親父どもがいて、赤字垂れ流しの新聞であっても、prestigiousな物件が売りに出されると我先に買収に興味を示す。

今回、ウォールストリート・ジャーナルの親会社、ダウ・ジョーンズの買い手として名乗りをあげたのがニューズ・コーポレーションのルパート・マードック。日本にもスカパーやテレビ朝日株の買収で手を伸ばしたこともあったが撤退、今は中国進出に躍起になっているようだ。元々オーストラリア人だが、80年代半ばにアメリカのFOXテレビ設立を機会に帰化した。でもアメリカの知識人の間ではフォックスTVは「ネオコンの権化」と揶揄されるほどその報道は右翼・保守化していて、同じニュースを見るのでも、フォックスを見るのは田舎者、まともなニュースを見たければせめてCNN、というのが私の見立て。

そのマードックがダウ・ジョーンズを50億ドルで買収する意思があると発表したのがつい先週。ダウ・ジョーンズは株が上場されている企業だけど、実質的なコントロールはバンクロフト一家という謎のファミリーが握っている。この先、この一家が納得できる経営方針が示せるかが課題だろう。本人はシナジーがどうのこうのを言っているが、系列会社を見てみれば、トップダウンのコンサバ企業体制。う〜ん、ここにウォールストリート・ジャーナルが組み込まれてしまうのかと思うと、やりきれない。

それはさておき、メディア・コングロマリットとして、ニューズ・コーポレーション傘下の書籍出版会社にハーパー・コリンズがある。売れればいいだろう、という羞恥心のないタイトルも多い(幻冬舎みたいなもん)一方で、リトル・ブラウンという文芸よりのインプリントもある。最近は、オプラ・ウィンフリーがシドニー・ポワティエの自伝THE MEASURE OF A MANを取り上げたので、これが100万部突破、かなり調子づいている。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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