これから要注目のマイケル・シェイボン


自宅アパートから徒歩1分のところにあるユニオンスクエアに面したバーンズ&ノーブルは、flagship store(本店)ということもあって人気作家の朗読会がよく行われているので、気になる著者のイベントがあると私も頻繁に覗きに行く。本を読むだけではわからない著者の人柄とか、ファン層のデモグラフィックがわかるので面白い。

今回は、前作『カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険』(早川書房)でピューリッツァー賞を射止めたマイケル・シェイボンが新作THE YIDDISH POLICEMEN’S UNIONを引っさげて登場。ハードボイルドな推理小説であると同時に、アラスカに設定された架空のユダヤ人コミュニティーを湛然に作り上げた構造で、阿部和重の『シンセミア』を彷彿とさせる。いつもは厳しいNYタイムズの書評家ミチコ・カクタニが珍しく絶賛していたので気になっていたタイトル。

ライティングのマスタープログラムの卒論として書いたつもりの『ピッツバーグの秘密の夏』(早川書房)で彼の才能を見抜いた担当教授が内緒で原稿を文芸エージェントに送ったところ、トントン拍子で破格のアドバンスでのデビューが決まり、本人が一番驚いたとか。デビュー当時、「ピープル」誌の「最も美しい50人」に選ばれそうになったという逸話があるほど容姿端麗な上、長編も短編も書ける注目の人です。(写真、もっとアップで撮ればよかったかな)

彼の文章から伝わってくるのは、どこかチャック・パラニュークにも通じる爽やかなマチズモ。と思ったら、やっぱりシアトルとか、バークレーとか西海岸に住んでいたのね。妙に納得。でも普通の会話しててvociferouslyとか、staunchlyとか、vivacityなんて難しい単語が出てくるインテリぶり(そんなとこまで聞いてる私も私だが)。かと思うと「質問は何でもいいですよ。デートのアドバイスでも、投資ストラテジーでも。的確な答えができるかは別として。」(会場は笑いの渦)とまぁ、余裕綽々。

ファン層は老若男女まんべんなく、男性比がちょっと高め。もちろんコアなファンはジューイッシュ系の若い男性でしょう。日本では今イチ、知名度ないのかも。マイケル・ダグラスとトビー・マグワイアがいい味出してた映画The Wonder Boysを観た人なら、あの映画の原作者、といえばピンとくるかもしれない。そのうち全米図書賞もとるでしょうね、と予言してみる。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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