婆ネコさまへの追悼に代えて—To my beloved kitteh, r.i.p.

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婆ネコさまへの追悼に代えて—To my beloved kitteh, r.i.p.Books and the City

昔のブログで書いていたネコのエピソードは、ワードプレスのこのブログに引っ越したときに、あまりにもパーソナルだから要らないといって消してしまったものと思っていたのですが、そのブログをデザインしてくれた友人がテキストファイルでとっておいてくれたことがわかりました。ツイッターでもたまに「うちの婆ネコさま」としかつぶやいていなかったけれど、「旅立ちました」の一言で意外にも多くの人が何が起こったのかを理解し、追悼の言葉とともに涙して下さったのでここに御礼として最初の出会いを綴った文章を載せます。ちなみに名前はVinegar、「ビネちゃん」と呼んでいました。

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シェルターでもらってきたときのエピソード—First encounter at the local shelter

うちのニャン子は私が一人暮らしをし始めたときに、近所のシェルターでもらってきた。マンハッタン内にいくつもあるアドプション・センターというやつで、行政の援助金や一般からの寄付金でまかなわれ、犬や猫を安楽死させることなく、クリニックも併設された施設だ。

ニューヨークの街中ではめったに野良猫、野良犬にでくわすことがない。ナゼだろう。餌になるゴミは大量にあるし、生活の場となるような空き地や空き家がないわけではない。やはりその辺にうち捨てるぐらいならシェルターに預ける習慣が徹底しているからだろうか。日本も最近はだいぶよくなってきたが、まだペットを飼うことが一過性のブームと結びついているところがあって、特定の種類の動物が流行ったり(流行る、ということ自体、ブームが去った後、そのペットは「廃れる」ってことだし)、多額のお金をつぎ込んで異常に「ネコかわいがり」したり、ペットを「companion animal」と呼んでコミットするアメリカとかなり感覚が違う気がする。

ま、それはさておき、シェルターに行って「あのー、すみません。猫が飼いたいんですけどー」と言うや否や、何ページもある「願書」に記入させられた。 アレルギーはあるか、今までペットを飼ったことがあるか、今住んでいるところはどのぐらい広いか、窓に安全柵はついているか、小さい子どもはいるか、云々、かなり細かいことにまで質問が及ぶ。やっと書き入れて係員の人に持っていくと、「ネコ部屋はあっちだから、勝手に入っていって好きな猫を選びなさい」と言う。指さす先のドアを開けると、そこには大小何十ものケージが積み上げられていて、それぞれに数匹のネコが入っている。特に、どういうネコが欲しいというアイディアはなかったが、さて、どうやって選べというのか。

「黒猫っていうのも、不吉なイメージはあるけど、動きがスマートでかっこいいな」

「いや、やっぱり日本人なんだから、三毛猫にタマという名前をつけるのがオーソドックスかも」

「それをいうなら、アメリカにいるんだから、タビサという名前のショートヘアーかな」

などと、しょーもないことを考えながら右手奥のケージに目をやると、兄弟なのだろう、3匹のグレーの子猫が入っていた。1匹はこっちにお尻を向けて、奥の方で丸くなって寝ていた。2匹目は手前に座ってニャーニャー鳴き通しだ。そしてもう1匹、同じようなネコがいて、ニャーニャー鳴いている猫の頭に前足をちょこんと乗せた。まるで「お客さんが来たから、泣くのやめなよ」と言わんばかりに。そのネコと目が合った瞬間、ケージの前から動けなくなった。この子だ、私のニャン子。

係員のオバサンを呼びに行った。「この子、この子、このネコがいいんです」慌てることは何もないのに、意気込んでいる私がいた。ところが係員のオバサンは「今、願書を読んだけど、あなた、今まで猫を飼ったことはないんでしょ。子猫のうちはすごく手が掛かるのよ。悪いことは言わないから、もっと大人のネコを選びなさい」と却下されて、シュン。しかたなく、もう一度あたりを見回す。黒猫か、ミケか。でもやっぱりさっきの子猫が気になって横目でチラチラ見てしまう。ネコもずっとこっちを見ている(気がする)。よーし、こうなったら最後の手段だ。私はまたさっきのオバサンを呼びにいった。

「お願いしますう。どーしてもこの子がいいんですー。ちゃんと世話をしますからあ。猫を飼っている友だちに聞いてちゃんと育てます。」よーするに泣き落とし作戦。泣き顔でまくし立てるとオバサン、あっけなく陥落。「しょーがないわねえ」と言いながら私のニャン子(既に私物化)をケージから出して、片手で持ち上げると「どうするあんた?この人といっしょに行く?」などと聞いている。ふふふ、やったね。ほれほれ「行く」と言えってば。

お次は猫といっしょに「プレイルーム」というところにいって、しばらくいっしょに遊び、相性をみる。棒の先にネルのひもが付いたオモチャでじゃらすと、一生懸命食らいついてくる。かっわゆーい。時間が経つのも忘れて猫をじゃらしていたら、さっきのオバサンが入ってきて、「あらヤダ。まだやってたの? とっくにネコ用品セットの用意ができてるから、連れて帰っていいわよ」と言われ、子猫用の餌やら、トイレの砂やら、最初に必要なものを一式くれ、「ちゃんとかわいがります」という誓約書にサイン。「15年のコミットメント(つきあい)だから、覚悟してね」といわれ、内心ちょっぴりビビる。

このシェルターでは、50ドルを寄付する代わりに、生後六ヶ月になったら避妊手術をタダでやってくれる。(「ちゃんと育てているか、フォローアップもするから」と言われ、実際に忘れかけた半年後、いきなり電話がかかってきてネコの様子を聞かれた。)

家に連れて帰って、トイレを設置すると、さっそくフンフンと匂いを嗅いでそこにチーッとオシッコをした。やったね、トイレトレーニングはばっちりじゃん。餌もミルクもちゃんと食べてくれた。夜になってネコ用のベッドに寝かすが、気づくとベッドにはい上がってきて、私のおなかの上で寝ている。「これじゃ、寝返りが打てないよう」と困りながらも、愛しさがこみ上げる。

ところが、やっぱり急に環境が変わって緊張したのだろう、トイレに行くと下痢便が。くっさー。もしかして、ネコのウンチっていつもこんなに臭いのか? お尻をぬるま湯で浸したペーパータオルで拭いてやりながら内心かなりあせる。ま、ネコの下痢は幸いにしてこの時だけだったけど、しばらくは会社から帰ってくると、部屋の中で何かが壊れているという日々が続いた。体が軽くて、ものすごいジャンプ力。本棚や椅子の背にかけあがって、ガラスや陶器の飾りものを尽く壊された。

 

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15年前の話です。それからずっと楽しませてもらいました。ありがと。さよなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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