Flatiron District


グラマシーパークは市内で唯一、門が閉まっていて付近の高級アパートの住民しか鍵をもらえないという文字通り「エクスクルーシブ(排他的)」な公園。とはいっても見ればわかる通り、多少きれいに手入れがしてある以外はごく普通のちっちゃな公園なんだけどね。あ、「私園」か。その南側に伸びている通りがアービング・プレイス。19世紀アメリカで人気のあったライター、ワシントン・アービングにちなんでつけられたもの。彼の銅像が17丁目の角にたっている。後ろの建物はワシントン・アービング公立高校で、コメディアン・女優のウッピー・ゴールドバーグはここの出身。(もちろん、ウッピーなんて名前じゃなくて、キャリン・ジョンソンというのが本名。)

ワシントン・アービングは1807年、ニューヨーク生まれ。子どもの頃から本が好きで、親が弁護士になれというのもきかずに、弟たちと「Salmagundi」という同人誌を創刊した。まぁ、今でいうタウン誌というのでしょーか、これに街中で起こった事件や人々を面白可笑しくあげつらう風刺の効いた雑誌だったらしい。

他にも、「ディードリッヒ・ニッカーボッカー」というペンネームで「ニューヨークの歴史」という本を書いたのがベストセラーになり、その後は左うちわの生活。架空の人気キャラ、リップ・ヴァン・ウィンクルは彼が作り出したもの。そうそう、NYのNBAバスケットチーム、New York Knicks ニックスは、この「ニッカーボッカー」というペンネームにちなんでつけられた名前。ニューヨークのことを最初に「Gotham ゴサム」と呼んだのも、彼だとされている。(バットマンじゃありません、悪しからず。)
元々、この「ゴサム」というのは当時イギリスのどこかに実在した村の名前で、なんでも政府が厳しい税金の取り立てをするのに抵抗して、村中で全員が気が狂ったフリをしたという逸話が残っているのだが、ま、ニューヨーカーは皆、キチ○イだと言いたかったのか、あるいはお上のいいようにはならない一筋縄ではいかない人たちが集まっていると言いたかったのか、どっちでしょーね。
アービングプレイスを挟んだ通りの向かい側の建物にはワシントン・アービングが住んでいた、と記した銅板が埋め込まれているけど、実は彼はここに住んだことはなかったそうな。この建物、ちょっとわかりにくいんだけど、地階が「Yama」という人気のお寿司屋さん。アメリカ人が泣いて喜ぶネタの大きさで人気があるのに予約は一切とらないので、みんな寒い日も雨の日も、ひたすら外でたむろして順番待ちをしている。

アービング・プレイスと18丁目の角にある「Pete’s Tavern」はオー・ヘンリーが足繁く通ったことで有名なバー。創業1864年というから老舗中の老舗。tavernというからには、当時は上にお客が泊まれる部屋があって、裏手には馬をつないでおける厩舎のついた居酒屋兼宿屋だったわけ。今も昔の雰囲気が残っているバーではある。オー・ヘンリーはよくここのテーブルを陣取って、道行く人を眺めては創造力を膨らませて短編を書いていたそうな。特にドアを入って2番目のブース(ベンチ型の椅子が向かい合ったテーブル)で『マギの贈り物』を書き上げた話は有名で、ここに座るとその旨を記したプレートが飾ってある。

彼の自宅は、すぐそばのアービング・プレース55番地で、今はSal Anthony’sというイタリアン・レストランになっている。オー・ヘンリーも一風変わった人で、ニューヨークに出てくる前は、横領の罪でオハイオの刑務所に入っていたこともあったとか。でも『街の声』などが売れ初めて間もなく、死んでしまった。

ちなみに、子どもたちに人気の絵本キャラ「マデリーン」の作者、ルドウィグ・ベメルマンもピーツ・タヴァーンの常連客だったそう。

ピーツ・タバーンは夜遅くまで街を遊び歩いたアメリカ人が腹ごしらえをしに来る場所らしく、ここでユマ・サーマンとイーサン・ホークのカップルを見かけたとか、セレブ目撃談も多し。ただ、お料理はお薦めできるほど美味しいとはいえないけど。ま、ハンバーガーのお総菜として付いてくる丸ごとポテトの大きさを見てもらうだけでも、話のタネになるかな?

WASHINTON IRVING bibliograpy:
Tales of a Traveller (1824)
The Alhambra (1832)
The Crayon Miscellany: A Tour on the Praries (1835)
Astoria: Or Enterprise Beyond the Rocky Mountains (1836)
Chronicles of Wolfert’s Roost (1855)
Legend of Sleepy Hollow (1964)

O. HENRY bibliography:
The Four Million (1906)
The Voice of the City (1908)
Options (1909)
The Gift of the Magi (1909)

Flatiron District

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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