英語版『1Q84』真夜中のリリース・パーティーは本のボジョレ・ヌーボーみたいな楽しさ—Celebrating the release of Murakami’s latest tome at midnight

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英語版『1Q84』真夜中のリリース・パーティーは本のボジョレ・ヌーボーみたいな楽しさ—Celebrating the release of Murakami’s latest tome at midnightBooks and the City

折しも「世界同日発売」を謳ったスティーブ・ジョブズの自伝について、色々なエディションの値段のことをとりあげて「マガジン航」にも寄稿したところだが、原書で650ページもある重厚なバイオグラフィーが、それが紙であれ、Eブックであれ、飛ぶように売れるというのは、長らく出版不況に喘ぐ日本の出版業界を考えると喜ばしいニュースだ。

そのコラムでも、アメリカでは「搬入発売」ではなく「協定発売」がデフォで、大手の版元ならどこも、この「レイダウン」と呼ばれるロジスティックスにかなり力を入れていることを書いた。

ジョブズ本のように前評判が高く、発売日にたくさん売れると分かっているタイトルでレイダウンをしない手はない。というより、レイダウンができないほど刊行日を前倒ししない、というのがこっちのお約束。

だからあんなダダっ広い国でも全国一斉発売が可能だ。そして、ジョブズ本発売の翌日、10月25日には、村上春樹の『1Q84』がアメリカで出版された。

日本では3巻に分かれていたものが、1冊にまとめられている。夏にゲラで見せてもらった時は1000ページを超えていた。しかも、ものすごい例外として翻訳者を2人使っている。日本でBook 3が出たのが、去年のロンドンブックフェアの頃だったから4月? それから1年半。Book 1と2はもちろんその前から翻訳作業が始められている。

そして驚くなかれ、というよりも思いっきり驚いて欲しいんだけど、こっちのスタンダードだと、これでも十分、異例の「ラッシュ」本なのだ。1000ページもある文芸書、しかもハルキ作品みたいに翻訳にハイクォリティーな スタンダードが求められるものを2年のうちに出すの〜? しかもクォリティーにうるさい独自路線で知られる文芸出版のクノップフ社がそんな急いでどうするの? というのがこっちのリアクションだ。

一方、日本ではジョブズ本も、翻訳作業という工程が入るところが同じなのに、翻訳者のブログによれば、8〜9ヶ月はかけたい分量を3ヶ月ぐらいでやろうとして、さらに1ヶ月近く刊行予定日が繰り上がるという凄絶なスケジュールだったそう。

純文学とノンフィクション、という違いも多少はあるが、「本」というメディアに対する時間的な感覚がどれだけ違うか、おわかりいただけるだろうか。

だからこっちのスケジュールに慣れてしまった私には、日本の出版作業の全てが、焦りすぎで、せっかちで、ギリギリで、出たとこ勝負で、計画性のないものに思えて仕方がない。なんど板挟みになって、悶々とさせられてきたことか。

ジョブズ本について、世界同時刊行を実現するために尽力した講談社の関係者はは評価したい。だけど、一方で、読者からそれが当たり前、みたいに思われちゃったらキツいよね、という気持ちもある。

色々と思うところはあるので、またいずれこの行程時間のギャップについてはまた書きたいが、今回は、もっと楽しいこと、つまり全国で一斉に本を発売するシステムだからこそ可能なイベントを紹介したい。

アメリカでもハルキ・ムラカーミは人気がある、と言ってもそれは、ごくごく一部での話、つまり、青い州の都市部で、4大以上の教育を受けているインテリ層に限っての話だ。こういう人たちは、思想的にはリベラルで、収入に余裕があれば、ウォルマートで安売りされている売れ筋の本を買うよりは、地元の小さなインディペンデント系の本屋で時間をかけて、他の人が読んでなさそうな、面白そうな本を選ぶタイプだ。

今回、『1Q84』の刊行に際して、「ミッドナイト・リリース」パーティーを催したのは、以下の書店だ。もし、これらの都市を訪れる機会があったら、ぜひ覗いてみることをお薦めしたい本屋ばかりだ。

Green Apple Books (サンフランシスコ)、Elliott Bay Book Company (シアトル)、Unabridged Bookstore (シカゴ)。そしてニューヨークではSt. Marks BookshopThree Lives and Co.Word

このうち、ブルックリンの外れにある「ワード」でのイベントがちょっと変わってて面白そうだった。他のお店は、要するに通常の営業時間を延長して真夜中過ぎまでお店を開けておいて、真夜中になったら「解禁!」ということで『1Q84』を売り出す、そして著者サインの付いている本をくじ引きで当てたり、ハルキファン同士で交流できるパーティーを開く、というような内容だ。ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」を流したり、ちょっとした軽食を用意したり、とかね。

「ワーズ」は10時半からRead-a-thonというイベントをやっていた。これは各自、好きな村上春樹作品の一部を朗読して真夜中を待つ、というものだ。

写真を貼り付けておくので、雰囲気を感じ取っていただければ幸甚。All Photos by Vincent Onorati:

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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