ウェブサイトリニューアルに寄せて:節目は自分で作るもの


先週のニューヨークは、やれ地震だ、やれハリケーンだ、と実は大したことのない自然現象に際して、とりあえず騒ぐことが好きなニューヨーカーたちが右往左往した週だった。私はその中で「全然平気じゃん」と終始、 落ち着いていたのか、冷めているのか、騒ぐ気には全くなれなかったし、いつも通りに過ごした。

地震といっても震度にすれば1〜2弱、ハリケーン・アイリーンの影響も、木の多い郊外や海辺の町にこそそれなりの被害はあったものの、コンクリートのビルが屹立するマンハッタンではいつもの夕立に毛が生えたぐらいの強さだったのだ。それが大げさに世界中に報道されるのが不思議でたまらない。市内で25万人に強制避難警告、というニュースの裏には、実際に避難所に集まったニューヨーカーは2000人にも満たなかったというオチがあるというのに。

日本の余震や台風が逐一世界中に報道されるだろうか? それどころか新しい首相が決まっても、「またですよ」という程度の小さい囲み記事になるだけなのに。

それでも今年は自分にとって色々な意味で節目になる年なんだろう、とは思う。9-11のテロからちょうど10年、個人的にも電子書籍に関する本を出して1年、3-11の大地震から半年。だけど「節目」なんて、それを自分が進んで何かを変えるきっかけにしない限り、ただの日付なのだ。

9月11日のあの朝、私は意外にもワールドトレードセンターから数ブロック離れたビル内にいた。今振り返ってわかるのは、当時、目の前で事件が起こっているのを見ているからこそ、テレビを付けようとは思わなかったことだ。日本ではちょうど夜のニュースが始まる時間帯だったから、何が起こっているのかについては遠く離れたところでテレビを観ている人の方が事態を的確に掴み、ことの深刻さを理解していただろう。でも私はそのニュースソースの近くにいて、何の媒体も通さず、自分の五感プラス持ちうる限りの英知をかき集めて、何事が起こっているのかを見極めようとしていた。

アメリカ(本土)が初めて外国の攻撃を受けた。金融経済を象徴するビルが根こそぎなくなった。何千人もの命が奪われた。

これでアメリカの歴史が変わる、いや、変わらなければならないだろうと思った。アメリカという国家に対して、自らの命を捨ててまでぶつけたい憎悪を持った人たちが世の中にはいるんだということを、少しでもアメリカ人が真摯に受け止めて、それがナゼなのかを考える機会になれば、と。自分たちだけが正しいと信じて世界中の戦乱に足を突っ込んできたその歴史を振り返り、本当の平和を望んでくれるように、と。

地元のコミュニティー誌にこんなコラムも書いた。

しかし、アメリカはその後もイラクだのアフガニスタンだのと、戦争の口実に9-11を使った。その思いのために、私は以前よりかなりこの国に落胆させられている。

何かが大きく変わってしまったと思えたのは9-11だけではない。奇しくも3-11、私は新宿の路上で地震を経験した。不思議だったのは、それまでは体が慣れていないせいか揺れに敏感で、震度1程度の微震でもキャーキャーいって恐がっていた自分が、なぜかその時はまた妙に落ち着いていた。歩道のガードレールに捕まりながら、ああ、大きい揺れだなぁ、と。

この10年で私に何が起こったのか。少しは歳をとって怖いものがなくなってきたのかも知れない。図太い神経のオバサンになりつつあるのかも。よく言えば、今までの経験から、こういうことが言えると思います、と遠慮せずに言えるようになってきた。フリーランスという立場なので、一企業のしがらみがない分だけ、自由に発言できる。それが昨年の『ルポ 電子書籍大国アメリカ』という自著に集約されているのだという気がする。

一方で、こんな私でも感動させられるものがあれば大切にしようという気持ちも出てきた。人間関係はまだまだこれから色んな人に出会い、既に出会った人たちとの絆をムダにはしたくないと思う。家族や友人の有り難みが一層強く感じられる。恋愛もまだゴールが見えない(笑)。諦めてもいない。今までは職場でも一番下っ端で可愛がられる立場だったが、こんな私でも「先輩」と思ってくれる下の世代にもお役に立ちたいと思えるようになってきた。

この10年で変わった周りのもの。それは米ドルを基軸として回っていた世界経済の終焉なのではないだろうか? 格付け会社のS&Pが米国債を格下げし、円高が続き、EUも破綻寸前の国が次々に足を引っ張る共同体でしかないとしたら、この先に待っているのはどんな世界なのだろうか? そして日本では、出版不況が15年も続き、経済も低迷したまま高齢化社会として衰える一方の上、さらに前代未聞の大地震に見舞われ、今後何十年も放射能汚染と向き合わなければならない斜陽の国となりつつある。

日本とアメリカ、何があっても、どんな惨事が起こっても、私にとってはどちらも見捨てるわけにはいかない祖国なのだ。だからこそ、双方の長所や短所を指摘していくし、お互いに見習うべき点を挙げて推薦するし、マネして欲しくないところは批判するし、誤解がある部分は解明できるように努めていく。

そんなわけで、これからもよろしく。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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