おゲイ様の老舗専門書店、オスカー・ワイルド書店が閉店にーGay/lesbian bookshops almost extinct in NYC as Oscar Wilde bids adieu


年明け早々、アッパーイーストのスノッブ書店、マジソン・アベニュー・ブックショップが閉店になったと思ったら、今度はダウンタウンのオスカー・ワイルド書店も店じまいするという。

このオスカー・ワイルド書店が位置するグリニッヂビレッジのクリストファー通りは、その昔、60年代に市内で初めてゲイの人たちが警察の暴力に抵抗して暴動騒ぎになったことで有名な「ストーンウォール」酒場(今は記念館) があった由緒ある(?)場所だ。アメリカにおける同性愛者の公民権運動は、すべてそこから始まったと言われている。

今でこそ、チェルシーやソーホーなどのトレンディーなエリアを、ワガモノ顔で闊歩なさっているゲイの皆さんだが、この1967年の暴動が起こる前は、ストーンウォールのような場末の薄暗い場所で密かに生息していた。当時、そこが同性愛者たちの溜まり場だったことをを知っていたマッチョな警察官のにーちゃんたちが、「憂さ晴らし」として定期的に「ガサ入れ」と称してストーンウォールを襲っては、顧客に殴る蹴るの暴行を加えていたのだ。(ホントだよ)もちろん、当時は誰も「カミングアウト」する人は誰もいなかった時代だから、訴えられることもなくて、警察もやりたい放題だったのだ。

そんなこともあって、クリストファー・ストリートといえば、ゲイの人権運動発祥の地として知られている。毎年6月恒例の「ゲイ・プライド・パレード」が、この辺りでお開きになって、あちこちでパーティーが催されるのも、偶然じゃ無いというわけだ。今も多少、不況のおかげで元気が無いとはいうものの、この通りを歩けば、レインボーフラッグやピンクの三角形を掲げたお店が並んでいる。

その後、市内にいくつかゲイ・レズビアン専門書店が現れては消えていった。チェルシーにあった「ディファレント・ライト」も2001年3月に店じまいし、残っているのはウェストビレッジにある「クリエイティブ・ビジョン」書店だけになってしまう。その昔、ディファレント・ライトの店長に話を聞いたときは、メガストアが進出したことよりも、アマゾン・コムなどのオンライン書店が台頭してきたのが大きな痛手だったという。オンラインで書籍を注文するのならば、誰にもゲイであることを知られることなく、様々な本が注文できたからだという。

96年に初代オーナーから店を譲り受けたラリー・リングル氏によると、オスカー・ワイルドは実はこの6年間、ずっと赤字だったとか。でも、このお店は、ただ単に本を売る場所としてではなく、コミュニティーセンターとしての機能を果たしていた。今ではニューヨークに欠かせない年中行事となっているパレードも、ストーンウォール暴動を記念して何かやろうと、この店を通じて知り合った同志が1970年に始めたものだ。

ゲイ専門書店がビジネスとして成り立たなくなったことは、ある意味、それだけ一般的に受け入れられるようになったことだと、ポジティブに捉えようとする人もいる。つまり、昔は専門書店にでも行かなければ手に入らなかったような本が、そこいらのバーンズ&ノーブルでも廉価で買えるようになったからだと。一方で、ニューヨークのようなススんだ街でさえ、ゲイ専門書店ビジネスを支えられないという事実にショックを受けている人もいるようだが。

書店に限らず、最近は街を歩いていても、店をたたむ小売店がチラホラと目につくようになった。確実に不況の波がヒタヒタとこの街にも押し寄せていることを伺わせるエピソードだ。その点、アメリカ人は正直というか、反応が早い。商売にならない、と判断したら赤字が膨れ上がる前に店を閉める。そして何か他のビジネスを考えて、再出発する。いつまでも本にはたきをかけながら「最近、本がうれなくなったなぁ〜」とただ手をこまねいていることはしないのだ。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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