USAトゥデイ紙から:電子書籍を使っている人たちの生の声


10月20日付けのUSAトゥデイ紙に載っていた記事。翻訳してという声が多かったのでリクエストにお答えして。急いだのであまりこなれてないけど、誤訳はないはず。最後のスティーブン・キングの名答に笑う。

本の虫も電子書籍がけっこうお好き

ジェイミー・グローブスはキンドルを使い始めてから今までの倍以上、年に40冊以上読むようになった。

サンドラ・ハインズは、最初、本を読んでいるような感じがしないのではないかと心配したが、今では母の日にもらったNook(以下ヌック)を「最高のプレゼント」と読んでいる。

リズ・ジョーンズはそれまで数ヶ月に1度本を買うだけだったが、iPod Touchで読み始めてからは毎週のように本をダウンロードしている。

みんな電子書籍、つまりガジェットで読める本の信者になったばかり。まだ少数派だが、仲間は増えつつあり、本や読書といったものが根本から変わろうとしている。

電子書籍の売上げは一般書全体の9%に達した。全米出版社協会によれば、今年8月までの売上げは前年比で193%増とか。

自分でも読書の3分の1はiPadやキンドルでこなしているという小説家スティーブン・キングは「2012とか2013年には、市場の半分がEブックになるんじゃないか」と言う。だが、同時に「人は飽きっぽいからな」とも警告する。

これまでにもキングは2000年にまだパソコン上でしか読めないRiding the BulletというEブックを書いたが、「今やパソコンの画面は人にとって自分の庭みたいなモノ」になったから電子書籍が受け入れられていると言う。

大手版元ハーパーコリンズのCEO、ブライアン・マレーは、最近のベストセラーの本にも「ここ数ヶ月で大きな変化が見られた」と報告する。「本によってはハードカバーよりEブック版の方が売れています」

パブリック・アフェアーズ出版の創設者、ピーター・オスノスは「映画で言えば無声映画からトーキー(音声付き)になったとか、映画館じゃなくてテレビで映画が見られるようになったとか、テレビがオンデマンドに対応したような」大変革だという。「どこでも、いつでも、どんな形ででも読める、ということを人々が受け入れ始めたってことですよ」

フォレスター・リサーチでは、全米で400万世帯がアマゾンのキンドルやバーンズ&ノーブルのヌックを持っているとする推定を出した。2015年までには売上げが2900万台に達すると予測している。

8月に実施されたハリス調査では8%がEリーダーを既に持ち、12%が次の半年で購入予定と答えたが、80%の人は買わないだろうと答えた。

「今まで何世紀も本を読むのにデバイスは必要なかったわけだし、これからもそうだろう、というのがほとんどの読者の答えなんですよ」というのは、パブリシャーズランチというオンライン業界紙の創設者、マイケル・ケーダーだ。

市場調査会社シンバ・インフォメーションのマイケル・ノリスもまだ臨界点に達したかについては疑問を持っている。彼は「Eブックは少しずつ毎年成長していますが、 一夜にして出版業界をガラリと変えるような事があって初めて“臨界点を超えた”というわけですから。毎日のようにEブックに目覚める人が何千人もいる一方で、紙の本を買う人がまだ1億2000万いるということです」

理由は人それぞれ

だが、それも間もなく変わるかもしれない。先月児童書版元のスカラスティックが発表したアンケートでは、9〜17歳の子たちの57%がEブックを読んでみたいと答え、3分の1が気軽にEブックが読めたら「もっと楽しめる」と答えている。

全部ではないがほとんどのEブック(10〜17ドル)が紙の本(ハードカバーは25ドル以上)よりも安い。そして、版権切れの古典から自費出版の本まで、何千ものタイトルがタダでダウンロードできる。

デバイスは、99ドルのシンプルなものから、読書以外のこともできるアップルのiPadが499ドルと幅があるが、かなり安くなった。2007年に発表された初代キンドルは399ドルだが最新型は139ドルからとなっている。

読者は、電子書籍を読むようになった理由として様々な事情をを挙げるが、数クリックでダウンロードできる便利さがダントツだ。

インディアナ州の自治体検事、グローブスさん(42歳)は、9歳の息子が人気の「Percy Jackson & the Olympians」を学校の図書館で借りてハマってからは「キンドルで第2巻から5巻まで買っちゃうのが手っ取り早いし、1分でダウンロードできちゃうのが便利」という。

だが、まだ絵本が好きな7歳の娘とはキンドルをまだいっしょに読まない、とも。「ドクター・スースや、『ハロルドと紫のクレヨン』は白黒のキンドルで読んでもつまらないからね」

マイナス点としては「以前は家族間や友人と貸し借りしていたような本でも、買ってしまうようになったことかな」

ジョージア州の会計士、ハインズさん(49歳)は、以前からよく本を読んでいたという。「本を手にして最初のページを開けるのがワクワクするのよね」という。

そんな彼女でもヌックで『ドラキュラ』の様な古典から「お涙ちょうだいのロマンスや、聞いたことのない著者の短編なんかも試してみたわ。ハードカバーみたいに重い本より持ち歩きやすいしね」

妥協点として、彼女はヌックにカバーを付けたという。「こうやって開くから、本を開いているみたいじゃない?」

本屋に足を運ぶ回数が減った

もちろん異を唱える者も。ペンシルバニア州でオフィス・マネージャーとして務めるジュリー・メイヤーさん(41歳)は、読書体験は紙の本があってのことだという。「本棚から取って、表紙を眺めて、パラパラ、と開くのがいいのよ」一日中パソコンに向かって仕事をした後は「本を手にするのがすきなの。ページをめくっていると、落ち着いてリラックスしたな、って思えるから」

他は、二者択一の問題ではないとする者も。

ミシオさんは、「今も音楽はMP3でもLPでも聴く」し、「本好きの人はヤードセール(フリマ)で本を眺めたり、友だちと良いと思う本を貸し借りしたりするのが好きだから」という。「それでも、わざわざ紙の本を買わずにソニー・リーダーで読んじゃうことも増えてきたわね」

本屋が大好きというウィリアムズさんは「新しい本の匂いが好きなんだ。でも、気になる新刊が出るとEブックもあるかどうか調べちゃうけど」という。

これからどうなるのか、出版社にもわからない。

グローブ・アトランティックのモーガン・エントレキンは「音楽業界や、新聞・雑誌の世界で起こっているほど、早く変革はしない」という。あと20〜30年は紙の本にもそれなりのニーズがあると見る。「でも、あと30年、40年、50年もしたらEブックの方が多くなるだろう」とも。

スティーブン・キングもEブックへの気持ちは揺れている。

63歳になる彼は、Eブックで文字を大きくできるのはありがたいとしながらも、「サイバーテロのEMP(電磁波)攻撃で一掃されないことを願おうじゃないか」という。「Eブックははかない。実際の感じとして本だと感じられない。もちろん、紙の本だって恒久的じゃないけどね。聖書原理主義者の人たちなんて、俺の本、焼いてたわけだから」

written by

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
Related Posts
  • Simplelife

    日本でCDの売上が、USAほど落ち込んでいないのは、日本特有の事情があると思う。つまりツタヤなどのレンタルがあるのも一つの要因。だから、電子書籍でのUSAの状況は、参考にはなるが、日本では違う傾向もでてくると思う。特に感じているのは、図書館の利用率がここ数年上がっていることだ。USAでの電子図書館の状況がわかれば、ぜひ報告してください。やはり、読者には無料で提供されるが、著者にはお金が入るようなビジネスモデル以上に強力なものはないでしょう。

© Copyright - Books and the City - All rights reserved.