老いてますますカッチョいいM・エイミス—enfant terrible Amis all grown up
マーティン・エイミスほど「風雲児」(英語じゃenfant terrible、ってこれはフランス語かw)という言葉が似合う作家はいないと思っていた。『ロンドン・フィールズ』もエッセイも鋭くって、皮肉たっぷりの時事ネタで、いかにもブリティッシュ・エスタブリッシュメントの鼻つまみ者、ってイメージもカッコ良かったんだよなぁ。父親はキングズリー・エイミス。これって吉本隆明/ばなな親子より強烈じゃないか? そしてたぶんエイミスはアメリカでも人気があるのが、これまたイギリス人の気に入らないところかも。
今年のブッカー賞にはロングリストにも引っかからなかったから、どうしたのかと思っていたのだが、そのエイミスが新作をひっさげてアメリカに上陸、私の図書館(ユニオンスクエアのバーンズ&ノーブル)で朗読会があるというからには、行かないわけにはいきますまい。でも最新作The Pregnant Widowはちょっと異色です。というか、あぁ、エイミス様もお歳をお召しになりましたのね、という感じで。多分Keithというエゴむき出しの登場人物に若きエイミスが投影されてて、彼のことを代弁してるんだろうけど、彼は「年寄りになるなんてことは、若くなきゃやってらんねぇ」みたいなことを言うわけです。
「老いるということは、自分に恋をするのを止めることだ」「もし不老不死のユートピアがあったとして、それは地獄そのものではないのか」こんなセリフを吐いちゃうところが今までと違う気がするわけ。ギリシャ神話のナルキッソスの苦悩、ってのがテーマ。 鏡の中で老いていく自分と葛藤しながら、確実に近づいてくる死の足音を意識し始める男。(写真がブレブレですみません。カメラ忘れました。)
そして女にとって、60年代の性革命がもたらしたものは解放であったのか、それとも大いなる不幸だったのか。アル中で、性的に奔放だけど幸せじゃないリリーの生き方は、エイミスの妹、サリーを投影させたキャラだそうで。「墜ちる女」ってのは永遠のテーマだよねぇ。アンナ・カレーニナしかり、テス・ダーバーヴィルしかり、ヘスター・プリンしかり…。
「最近の若者はとにかくみんな自分が大好き、フィーリングは等しく、それぞれに大事かも知れないが、インテリかどうかには差がある」「デモクラシーやクラウド化の波で、全ての声が空しく響く“エコー”チェンバー(こだまする洞窟=ナルキッソスに報われぬ恋をするエコーに引っかけての発言)になってきた」っていう発言に、相変わらず上から目線のエイミス節も健在。
で、本人の話も、「俺ももう若くねぇからよー」みたいなトーンで、自分のキャリアを振り返ってざっくばらんな内容のトークでした。折しも、親友のクリストファー・ヒッチンスが食道ガンで闘病中。チャーリー・ローズのインタビュー番組でも、周りの人の死についてしんみり語っておりました。「昔の文豪は50歳そこそこで死んだからいいけど、作家の評価なんて最新作だけじゃなく、時を経て生まれた作品の総合的判断で決まるわけだし…(これは最新の話題作だけで選ばれがちな昨今のブッカー賞に対するいやみ)」
既に書き上げたという次作「State of England」も楽しみ〜。









