イケないことはいくらでも非実在キャラでどーぞ—Why it’s wrong to ban non-existent sex with minors


なんだかんだで結局、法令化が先延ばしになるまで一刻世間を賑わせていたいわゆる非実在青年法、東京都の青少年健全育成条例改正案について、とりあえず色々と各方面から議論は出尽くしていたようなので、日米文化比較というちょっと違う視点から語ってみたい。

ということで、エロやポルノ=お下劣、という認識の人には今回のコラムはX-rated、つまり成人指定であることを最初に断っておく。しかも長い。まぁ、深くて複雑な問題だからね。

日本ではあまり話題にならなかったようだが、1年ほど前、日本のマンガ本を集めていた「オタク」のアメリカ人男性が、そのコレクションの中に未成年の性行為を描いたものがあったとして、有罪となる事件があった。まぁ、何百冊も持っていたら、一部そういう図柄のものもあっても不思議はないだろな。通販で買ってたんだろうからいちいち中身までチェックできないし。

アメリカでは2003年にCOPA法、いわゆるオンライン児童保護法が可決され、未成年者を対象とした性的な画像・映像をパソコン上で持ったり配布したりすることが法律で禁じられている。ただ、現行法では日本で今話題となっている「」の未成年者も含まれるとは明記されていないのだが。

そもそも、日本でも児童ポルノ禁止法を作ろうという動きはどこから出てきたのか? もちろん子供に対する性犯罪はあってはならず、個人的にも厳しく取り締まるべきだとは思う。だが日本のアニメやマンガには、ずっと前からロリだの萌えだの、少女を対象とした嗜好はあったのだし、近年はアニメやマンガに限らずアイドルや服まで、可愛い少女的なものをコンテンツとして海外にも発信してきた。そこにはサブカル的に少女を性の対象とした「架空の」コンテンツが付随して存在していることは周知の事実だったはずだ。

一つ目についたのが、05〜09年の間、駐日大使を務めたJ・トーマス・シーファーのコラムだ。彼は帰国する寸前の09年1月に朝日新聞(英字版)にこんな寄稿をしている。

ネットの発達で幼児ポルノが大きな影のビジネスになっているが、G-7諸国で児童ポルノの所持を法律で禁じていないのは日本だけだと指摘している。そして持ち出しているのが、未成年者に対する性犯罪で服役している者の85%が未成年者を性的に虐待したことを認めている、という数字なのだが、これは日本の性犯罪と何ら関わりのない…というか、なんの因果関係も認められない統計数字に過ぎない。えらく飛躍した話だが、シーファーは自分の国で未成年者に対する性犯罪で困っているので、幼児ポルノ画像の輸出国である日本に「なんとかしろ」と言っているのである。

そこはもちろん外圧に弱い日本の行政のこと。アジア諸国には高圧的だが欧米にはペコペコし、オリンピック誘致に失敗したどこぞのバカ都知事の呼びかけで、東京都青少年問題協議会なるものが発足し、いわゆる青少年の健全な育成に関する条例で、マンガやアニメで18歳未満と見なされた(誰が見なすんだか)架空のキャラも処罰の対象になるというので今回の騒動が起こったわけだ。

ここで少し、アメリカのポルノ産業と犯罪の実情について、日米の認識の差から指摘してみたい。まず、一般のポルノ(日本ではAV)映像だけを見てもそこにはかなり嗜好の違いが感じられる。アメリカのAVに出てくる女性は、日本の可愛い女子とは似ても似つかない、コワイ姉ちゃんが一般的。ほとんどが胸にシリコンを入れたたわわなメロンのような胸、「あん♡あん」じゃなくて、「おう♥おう」に近い太く低いあえぎ声、「いぇ〜、ふぁっくみー、べいびー」などと卑猥な言葉を発し、かなり積極的。なんつーか、皆さんプロなんである。

AVの設定を見ても、日本だと痴漢プレイや看護婦さん、女教師やセイラー服と、小道具まで細かいところに工夫が行き届いているが、アメリカのはせいぜいハイヒールや首輪、ナース役でも服はさっさと 脱いですっぽんぽん、が基本。モザイクなどと気の利いたまだるっこしいのは一切なし。要するに想像力をかきたてるモノではなく、どこまでも即物的なのだ。ポルノ好きのアメリカ人男性は実生活でも絶倫系が多いしね。観ているものと本人の行動が一致するわけだ。

対して日本のAVは、女から見ると「はいはい、こうあって欲しいんですね」みたいなお決まりのパターンがあって、素人っぽい娘っ子が受身でかわいくアンアン、おとなしくブッカケられているのが多いわな。まぁ、リアル彼女のいない、オタク君仕様というか。男性諸君の夢を壊すようで悪いが、生身の女はそんな反応しないから。したとしてたら、君のために演技してるだけだから。

pornだから裏をかえせば、アメリカのポルノ市場にロリコン系のコンテンツが氾濫していれば、実際に性犯罪が起こっていると考えていい。もちろん、架空ではないビデオや画像が存在するということは、どこかで犠牲になっている未成年者がいるということだし。これはもう、とことん取り締まるしかない。だからこそ児童保護法に、画像・映像の所持/配布を禁じる項目が入っているのである。(Photo by: hansol)

アメリカのポルノサイトでももちろん、日本のAVは紹介されていて、モザイクをとった映像が見られるサイトもたくさんある。笑っちゃうのは、映像の説明にteenとか、young girlとあっても、日本人からすると、どうみてもその女優さんは20代でしょ、って感じ。AVだろうが一般人だろうが、日本人女性は若く見えるんですな。見かけも仕草も。だから、アメリカ人が見ると「うわ〜、いたいけな子どもが出てるよ」と思うらしい。バカだねぇ。

そして、以前から不思議なのが、日本のエロアニメはすべてhentaiというカテゴリーに入っちゃうということ。日本の「変態」だとキンバクとか、スカトロとか、そういうキワモノを連想するけど。これは言葉だけが一人歩きしてしまったのか? それともアメリカ人にとって、子供向けのものとされているアニメに「エロ」というカテゴリーがあること事態が既に「変態」と感じられるからそう命名されたのか?

アメリカ製のエロ画像もないわけじゃないんだけど、「シンプソンズ」のマージ母さんが脱いでたり、コミックのヒロインみたいなムキムキのお姉さんだったり、こちらも妄想の力及ばず。そこへ行くと、日本のエロアニメはやっぱりすごい。いきなり処女が血を流しながらよがってたり、兄妹だったり、宇宙人がネコミミちゃんを輪姦してたり、触手レイプにメイドもの、とにかくありえないシチュエーションのオンパレード。よくここまで考えますねと感心するくらい。

重要なのは、そこには現実からかなり乖離した世界が繰り広げられているということだ。とてもこういうアニメを見た後に、「じゃ、俺も一発、処女をレイプしてくるかな」とか「うちのメイドとやりたくなったな」とか「今夜はUFOに乗って触手で彼女を犯そっと」などと実際の行動に直結しないわな。

そう考えると、未成年の少女相手のエロアニメも現実とは程遠い空想の産物であることが予想できるだろう。目が大きくて、胸だけデカくて、日本人男性の小さい◯◯で突かれて叫び声出して絶頂を迎える中学生なんて…いねーよ。実際にはできない・ありえないとわかっているタブーの領域だからこそ、マンガやアニメで表現しているとも言えるし、元々、アートというのはそのタブーに挑戦することでもあるし…。

この違いはどこから来るのだろうか、と考えたときに思い当たるのはやはり、日本の(そしてヨーロッパにも多少通じる)建前と本音を使い分ける「大人の文化」というものかもしれない。アメリカ人はその辺がバカ正直というか、公私の区別ができないから始末が悪い。別に政治家やスポーツ選手という「公」の顔を持っていても、自宅のベッドルームという「私」で何をしようが大人同士、合意の上であればなんの問題もなさそうなものを、セックススキャンダルがバレれば失墜しなければならない。一昔前のクリントンから、タイガー・ウッズまで、なーんにも違法なことはしてないのにね。

今回の日本の騒動で、私がどうしても納得できないのは、エロアニメ・エロ漫画が実際に未成年者に対する性犯罪をひきおこすという環境犯罪誘因説があたかも既に証明されたもののように主張されていることだ。じゃあ、アニメやマンガが氾濫する以前の時代には少年少女に対する性犯罪はなかったのか? エロアニメやエロマンガに接していると全員が、現実と空想の区別がつかなくなって犯罪に走るのか? たとえ、実際に犯罪に走った者がいるとして、そのためにエロ画像を全部禁止するのか? 社会リスクの問題だとしたら、毎日のように交通事故による被害者がいるのに自動車はなぜ禁止されないのか?

この辺の議論がすっぽり抜け落ちて、自分たちで今まで平気で消費して、それを横目に見てきたのに、アニメやマンガコンテンツを輸出するようになって、ロリや萌えがたくさんあるのが海外の人にバレて恥ずかしいから、ヤバイのは法律作って禁止しちゃおうぜ、という風に聞こえるのである。本気で未成年者を性犯罪から守りたいのであれば、虐待全般を早期発見できるように現行法を見直し、行政の体制を整えればいいだけの話。早期発見、と書いたのは、こういう犯罪を未然に防ぐには行政が一般市民のプライベートに立ち入ることが不可欠なため、実際には難しいから。

あるいは、未成年者相手のエロアニメ/マンガを徹底的に取り締まることで、少女とのセックスという未知の分野にさらに興味が増し、実際の行動に結びついてしまう可能性はないのか? どんなに法律で押さえ込んだって、男のスケベ心なんてなくなるものじゃないだろーに。どうしたってそういうものを見たい人がいるんだから、規制すればするほど地下に潜って実態がわからなくなるという弊害もある。

なんで自分でもこんなにエロを弁護してるんだろーと思わないでもない。そもそも女のくせになんでそんなに一般論かませるほどにポルノの内容を知ってるんだよ、とツッコまれそうな気もする。個人的にはロリや萌えは全く理解できない。そういうのが好きだという男は、大人の女性と対等に向き合えない弱いヤツだと思うので、実は心底軽蔑している。本気で2Dキャラを嫁にしているようなヤツは、子孫も残せないんだからさっさと死ねや、と思っている。もし、私に子どもがいたとして、その子が性犯罪の被害に遭ったら、相手の性器をこの手でちょんぎってやらなければ気が済まないだろうと本気で考える。実際の私は人一倍恋にもオクテな乙女なんだけどね。

(この辺のことに人一倍詳しいとしたら、それは大学時代にとったマスメディア論の教授に児童ポルノの取り締まりを担当していた元警部の人がいて、その人のリサーチアシストしていたこともあったから、かな?と言い訳してみる。同じ理由でやったこともないのに、コカインとヘロイン中毒の違いとか、合法の処方箋ドラッグにも詳しいし。)

それでも私が、エロを弁護するのはかつてジャーナリストの道を志した者として「言論・表現の自由」を重んじるからだ。いかに人々が世のため子供のためと言えども、やみくもにポルノを取り締まるのは、それがひいてはジャーナリストやアーチストの自由を奪うことに繋がると信じるからだ。

今回の非実在青少年に対する性的表現の取り締まりについても、ちばてつや、里中満智子、永井豪、竹宮恵子らベテラン漫画家が反対を唱えている。これに対し、なぜエロマンガを書いている本人らが反対しない?とか、彼らの作品には影響はないのに?という疑問もあったようだが、私はこれを当然のことだと感じた。「一部の有害なものだけを規制する」などというのは不可能なのだ。そもそもいったい誰がそれを良いか悪いか判断するというのか?

私の好きな映画にミロシュ・フォアマン監督のThe People vs. Larry Flynt(邦題:「ラリー・フリント」)というのがある。ポルノ雑誌「ハスラー」の発行人、ラリー・フリントの生涯を描いたものだが、これがまたハチャメチャで、フリントは「女性器こそ、女性の一番美しい部分だ」と主張して「プレイボーイ」や「ペントハウス」よりもきわどいグラビアを「ハスラー」誌に載せて大儲けをした男。かなりエゲツないんである。

だけど、このエゲツない男が「戦争に行って死体の写真を撮ったら、それはピューリッツァー賞をとったりするのに、生きて平和に人生を謳歌している人間の性器を見せたら、なぜ犯罪になるのか?」とか、「人間の行為のうち、セックスは自然で美しい。戦争という行為こそ愚かしく、恥ずべきものではないのか?」とスピーチでぶちまけるシーンがあって、こりゃ確かにオリバー・ストーンの息がかかっているなと思いながらも、ウンウンと頷いてしまうのだ。

彼の主張は、大人であれば自分が発行するポルノ雑誌を見たくなければ見なければいいだけのことであって、お金を払って見たい人がいる以上、他人が法律でそれを禁じる権利はない、というものだ。この辺りは映画よりもLarry Flynt: The Right to Be Left Aloneというドキュメンタリーの方がわかりやすいかもしれない。ド田舎の出身でろくな教育も受けていないフリントだが、人の心の闇の部分を知り尽くしていて、ジャッキー・ケネディー・オナシスのヌード写真だの、デロリアン創設者が当局のおとり捜査に引っかかる場面のビデオだの、民衆のスケベ心が見たくなるものを提供して物議を醸し出してきた。

ところが、宗教家のジェリー・ファウェルを性的に揶揄した広告のパロディーで彼は訴えられ、投獄され、挙句の果てには銃で撃たれて下半身不随となる。このパロディーが「名誉毀損」か、「表現の自由」で守られるべき著作物に値するかで米最高裁が全員一致でフリント側の主張を認めているのだ。

しかもその時、タイムやニューズウィークといった主要ニュース誌が、彼を応援する立場をとったことはあまり知られていない。日本の週刊誌と違って、ヘアヌードも芸能人のツーショットも載っていないアメリカのニュース誌だから、一介のポルノ雑誌が潰れようと何の影響もないはずだが、 アメリカにおける表現の自由、報道の自由が、フリントのような底辺の猥褻ポルノグラファーによって守られていることを認識しているのだ。

だからシーファー元駐日大使みたいに、良識派ぶって日本のアニメ・マンガ文化にケチをつける輩にゃ「でも、日本の街は小学生の女児にとって安全な場所なんだよーん。性犯罪発生率も低いし、なんか問題あるわけ? 君たちこそもう少し想像力を働かせた大人向けのアニメでも作ってみれば?」と答えるのがスジだと思うわけだ。これが都知事だったら、「僕も昔はこんなん書いてたんだけどねぇ、読んでみて」と『完全な遊戯』とか『理由なき復讐』あたりを手土産に持たせればいい。そして「で、おたくのお孫さん、今晩ひとりでうちに遊びに来ない? アニメでも見せてあげるから、ケケケ」とでも言ってやれば、しっぽを巻いてアメリカに逃げ帰ってくれただろうものを。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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  • hnk

    おおむね、認識に賛同します。
    エロ漫画が実際の小児性犯罪につながっているのか、もしくはエロ漫画が(性的妄想を満たすことで)実際の性犯罪の抑止をしているのか、と言うことについてデータもあげずに騒いでいる輩が多すぎる。
    そして、規制境界の曖昧さにより、エロ漫画を規制することが、そのうち全ての表現規制に発展することの懸念も多いにあります。アレジーみたいにエロの規制を叫ぶ人々には、もっといろいろ考えてから物を言って!と思うことがありますね。

    >今回の非実在青少年に対する性的表現の取り締まりについても、ちばてつや、里中満智子、永井豪、竹宮恵子らベテラン
    >漫画家が反対を唱えている。これに対し、なぜエロマンガを書いている本人らが反対しない?とか、彼らの作品には影響は
    >ないのに?という疑問もあったようだが、

    に関しては、一部の有名作家さんの意見だから取り上げられて目立っているのだと思いますよ。
    以前表現規制の法案が通りそうになった時の話になりますが、実際にはエロ漫画の作家さんたちがNGOを作って積極的にエロ表現規制への反対運動をしていました。
    デモをしたり署名活動をしたり、上記有名作家さんたちのところにお話にいったりしています。もちろん議員さんにアポを取って、訴えにいったりもしていました。
    作家さんたちが闇雲にやっていたわけではなく、弁護士さんなども一緒に、本気で考え活動に取り組んでいました。
    近年そのエロ作家さんたちの具体的な活動は存知あげないのですが、今ではサイトやブログ、ツイッターで作家さんはもちろんいろいろな人が意見をを表明しています。
    有名な方々には講演依頼やインタビューがきて、彼らしか活動をしていないように見える場合も多々あります。
    が、反対活動しているのは、有名作家さんたちだけではありません。

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