一年の締めくくりに怒り納めを—WTF, a raging epitaph for my ex


来年、ひとつの出版社が名を消すことになる。昨今はもう珍しくもなんともない類のニュースだが、その出版社を作るにあたっては産みの苦しみを見守ってきた古巣であるだけに、ふつふつと怒りが滾る。

そう、悲しいのではなくて、ひたすら腹立たしいのだ。だから追悼の意の代わりにひたすら怒らせてもらう。

たしかに、設立当初から注目されると同時にこの出版不況の中で「外資に今更なにができるのか」とせせら笑われながら出発した出版社だった。しがらみが多すぎて身動きがとれない親会社の代わりに、なんとか突破口をみつけようと、あちこちの壁にぶつかるのが最初の使命だと思っていたし、実際にみっともないぐらい失敗もやらかした。

机と電話がひとつあれば始められるのが出版社、とは言うが、実際はそんな生易しいものではもちろんない。それでも留まってくれる若い編集者も何人か集まり、翻訳ものではいくつかヒット作や文庫の定番もできるようになっていた。

一度トップが入れ替えとなり、私もその中枢から離れたのだが、後釜に据えられた人物が諸悪の根源だった。彼は元々翻訳権を扱うサブエージェントなので、本ができてしまってからのビジネスはわかるのだろうが、最初の「本を作る」部分を理解しているとは思えない人選だった。しかも自国の悪いビジネス慣習には忠実な男だった。

今から思えばこの時点で潔く私もここを去るべきだったのかもしれない。

さらにアジアを統括することになったそいつが、日本のトップとして自分の飲み友達を引っ張ってきたのだから始末が悪い。既に引退を考えていたような年寄りに新しい試みができるはずもなく、手っ取り早く利益をあげようとして刊行点数を増やす作戦に出た。

もちろん、質のいい翻訳ものを作れる編集者が即座に集められるはずもなく、結局は日本語オリジナルの企画(ほんとうにオリジナルなものならよかったのだが)でいこうということで、飲み友達が飲み友達を引っ張ってくるありさまで、編集者の平均年齢がぐっと引き上げられてしまった。こいつらを私はGeriatrics Divisionと呼び、バカにしていたが、年齢の高いベテラン編集者としてそこそこの金も払っていたはずだ。

海外のミステリーやロマンス、ビジネス書やノンフィクションをコツコツと出していたところから、いきなり「やきものの美」とか、「お江戸◯◯復刻版」みたいな本が文庫で隣同士に並ぶのだから読者の方も戸惑っただろう。

ここで一人前の編集者に育ってくれた女性編集者2人(結局男も来たけど、箸にも棒にも掛からなかった)には、この先、少しでも居心地のいい転職先が見つかればいいと思うけれど、彼女たちもしっかり者だから私が心配しなくても大丈夫という気もしている。後の者たちは勝手に路頭に迷うがいい。特に酒飲みコネクションで来たオヤジたちは、もしここからたんまり退職金をもらうとしたら、その金には私の呪いがかかっていると思って差し支えないからね。

バックリストの本はせめて親会社が在庫がなくなるまで面倒を見てくれるといいのだが、それもどうなるのかわからない。私が一番あやまりたいのは、やはり著者と読者だ。ごめんなさい、ふがいなくて。こんなことになっちゃって申し訳ない気持ちでいっぱいです。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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