波瀾万丈人生の後にジェーン・フォンダが乗り越えたのはハッピー強迫症?ーAfter a whirlwind life so far, Jane Fonda still but happily faces music

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波瀾万丈人生の後にジェーン・フォンダが乗り越えたのはハッピー強迫症?ーAfter a whirlwind life so far, Jane Fonda still but happily faces musicBooks and the City

前から思っているのだけれど、アメリカ人ってのは、人生においてとことん「ハッピー」であることにこだわるあまり、かえって不幸な人がいっぱいいるんだよね。少しでも鬱な気分になれば、プロザックだのパクシルだの、ガンガン抗うつ剤を服用したり、足しげくセラピーに通ってシュリンク相手にどうにもならないことを嘆いてみたり、ドラッグを使ってまでハイになったり、(テリー・シャイボさんみたいに)植物人間になっても周りが「これでもハッピーなんだよ!生きてるからいいんだよ!」と死なせてももらえなかったり。

人間、ちょいとばかり不幸せなくらいでいいんだよ、っつーの。ついでに、そんなに生きていけないほど不幸だったら死んじゃえばいいじゃん。太宰治を見てみなさい。不幸だ、惨めだ、って文句垂れながらも、何だかちょっぴり羨ましくなるくらい清々しいじゃないの。石川啄木が楽しそうな句を読んでたら、誰も感動しないわな。浮気を重ねる詩人の夫、テッド・ヒューズに宛てつけるように「アタシはこんなに不幸なんだよ!」って、オーブンに頭突っ込んで自殺したシルヴィア・プラスに、思春期の女の子がだからこんなにも憧れるわけで。不幸な人間がもがいているから、それがドラマになってアートが生まれる。完璧なハッピネスの飽くなき追求から芸術は生まれないね。

だいたい、「ハッピー」ってイメージが馬鹿じゃん。ブリットニー・スピアーズとか、あややとか、ミッキーマウスとか。そういえば、クリニークが「Happy」っていうフレグランスを発売したときのTVコマーシャルには「大丈夫ですか?この人たち」と心配したくなるぐらい、綺麗なおねーさんたちが笑顔で狂喜乱舞していて、見ているこっちの背筋が寒くなったのでした。誰もつけねーよ、そんな香水。
人生を楽しく積極的に生きなきゃイケナイという、半ば強迫観念に駆られるようにして生きているアメリカ人。哀れ〜。中にはさらに不幸のどん底につき落としてやりたくなるような人もいますし。

女優ジェーン・フォンダが最近上梓したメモワールのタイトルは”My Life So Far(今までの私の人生)”。それがまぁ、なんともはや、波乱万丈というか、ハリウッド女優という華やかな表の顔とは裏腹に、メガトン級の不幸をも抱えて生きてきた人なんだなぁということがよくわかる。

ラリー・キングのライブなんかにも出演して喋りまくっていたようですが、今までよく知らなかった彼女の人生、山というよりは谷ばっかり。名優ヘンリー・フォンダの娘として生まれながらも、母親が自殺したことさえ知らされずに成長したとか、映画『バーバレラ』がきっかけで、最初に結婚したフランスの映画監督ロジェ・バディムは夜な夜な他の女をベッドに連れこみ、彼女も交えて3Pしたがるのを、ジェーン・フォンダは夫を喜ばせたいがために受け入れていたとか(とはいえアカデミー賞受賞という「山」のために表ざたにはされてこなかったけど)、2番目の夫で反戦活動家のトム・ヘイドンに連れられて、ベトナムに行って、たまたま北ベトナム人の高射砲の操縦席に座って何かの拍子に笑顔になったときを写真に撮られ「ハノイ・ジェーン」という蔑称にずっと悩まされたり、エアロビクス・ビデオの教祖として超売れっ子になったけど、実はスタイルを気にするあまり拒食症だったとか、3度目の正直で、CNNのCEO、テッド・ターナーと結婚、女優としてのキャリアを捨ててまで、いい妻になろうとしたのに、結局テッドが完全に彼女に心を開くことはなかったといって、離婚。

そう思ってみると、自分の半生を赤裸々に語るジェーン・フォンダの顔は、しわも白髪も立派な年増女のそれながら「もう、完璧なハッピー目指すの辞めました」とでもいいたげな、爽やかな表情だったりする。最近は映画にも復帰して、ジェニファー・ロペス相手に楽しそうに「鬼義母」を演じているし。

カンサスシティー(ほらね、だから田舎者って嫌いなのよ)で行われた本のサイン会で、元ベトナム兵士が彼女の顔に噛みタバコの汁を吐きかけたときも、ジェーン・フォンダは終始落ち着いた様子で、訴訟も起こす気はないと言っていた。一方、そんなことのために1時間半も列に並んでいたという元兵士マイケル・スミス(なんとまぁ、みごとにすぐ忘れちゃいそうな名前だこと。ところで彼は本のお金は払ったのかしら?)はその後もあっちこっちのテレビインタビューに出演、「俺の他にも同じ事をしたい退役軍人は大勢いるぜ」などと恨み節をうなっていました。バカだねぇ。で、それで気はすんでハッピーになれました?

この事件がマスコミでとりあげられて、さらに本の宣伝に一役買ったことはまちがいない。ジェーンちゃんの勝ちぃ!

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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