Frankfurt Book Fair 09 Report Part 3: そして残りの雑記あれこれ—Then the rest of the flotsam and jetsam
インターネットが普及したおかげで今まで海外の出版社とファックスでやりとりしていたような内容もすべてEメールで済み、分厚い原稿や見本刷りもPDFファイルにしてサクッと送れるようになったこの時代に、それでもなぜこんなに毎年みんなわざわざフランクフルト・ブックフェア詣でをするのか? という疑問もあります。
アメリカ東海岸から飛行機で8時間かかるし、時差ボケだってあるし、そしていつも納得がいかないのは、市内のホテルはブックフェアの時期だけ、どんな安宿も強気の3倍値段でボッたくること。ドルが弱い年は特にすべてのものがお高く思えて、悲しくなるくらい。会場内の食事はまずいし、どこのレストランに入っても結局はソーセージとジャガイモ料理で毎年太るし…。(写真は会場内で見つけたネスカフェならぬ、「ナス」カフェ。)
10月のドイツのいつもどよ〜んとした空模様には慣れているものの、今年はそれに加えて、ここんとこ一番の寒さ…。体感気温が零下! 震えながら会場に向かう空しさよ。Sバーン(電車)の中で、向かいに座ったお兄ちゃんは、服の袖口で鼻水拭いてるし、通路を挟んだ隣の席ではおっちゃんが口に手も当てずにゴホゴホ咳き込んでたりして、これで風邪ひかなかったら儲けモン、という朝もありましたっけ。
会場内が空いていれば空いていたで、出版不況を感じて悲しくなるし、いればいたで主賓国の中国が送り込んできた軍団が通路を塞いでいたりすると「仕事の邪魔だ!」と怒りが漲るし。エージェントセンターのある6号館と英語圏の出版社が入っている8号館の間の通路は今まで何度往復したんだろう?と思うと空恐ろしくなるときもあります。
でもまぁ、忙しい中にも、自分がそこで何をしているのか、自分のミッションみたいなものを深く確信してしまう瞬間があるわけで…。
ロチェスター大学を本拠地に、翻訳物の本ばかり出している「オープン・レター」というところで頑張っているチャッド・ポスト君がこんなことを言ってました。「これってファミリー・リユニオンみたいだよねー」と。チャッド君は、自分が出したい本を探しに各国の出版社のブースをまわる傍ら、ブックフェアのサイトでブログを書いていて、いつも会場を走り回っている元気坊やです。日本でも講演したことあります。
ファミリー・リユニオン…確かに。感謝祭やクリスマスの時期や、結婚式で親戚一族が集まる場をこう呼びます。遠いところに住んでいて普段はめったに顔を合わせないけど、ずーっと長い間知っている人たちが一堂に会するときの雰囲気って確かにあります。
今までけっこうドライに版権関連のお仕事をしてきたつもりでしたが、それでも業界の顔なじみや知りあいがどんどん増えて、ロンドンとフランクフルトでのブックフェアでいつも顔を合わせる、という人たちがおおぜいいます。エージェントのポール・マーシュが亡くなっちゃったねー、というしんみりしたお話から、ちょっとー、マイケル・ジャクソン原作のコミックってマジ〜?みたいな話まで、色々。
週末には一般客がやってくるので、さらに会場が混み合います。こうなるとドイツの出版社が入っている3号館は身動きもできないぐらいなので、土、日にドイツの編集者とのアポを取るのはやめました。向こうから来てもらってもいつも遅刻してるし。6号館では日本語のサンプルしか置いていないブースにもコスプレしたドイツの漫画ファンが集います。中には大胆にもサンプルのグッズを持っていこうとしたり、本を開いて写真をとったりといった営業妨害行為もあるので、迷惑だな〜、と文句を言っていたのですが、リチャード君のこの一言で目覚めました。「でもさぁ、こういう人たちが僕らの給料を払ってるんだよね〜」って。そうなのだ! 考えてみれば、マンガ大好きのドイツのコスプレっ子たちがお小遣いでドイツ語版のマンガを買うお金が印税となって日本の出版社の稼ぎとなり、そこから私を雇う費用が出ているわけです。ちょっと目から鱗が落ちちゃった瞬間でした。というわけで、一番カワイかった子の写真を撮ってみた。
あ、ちなみに各館が私の頭の中でどうなっているかというと、
1号館—昔1度だけ足を踏み入れたことがある。稀覯本中心の古書館なのでここだけ時間が止まったような雰囲気と、古本の匂いが独特。
2号館—フォーラムと呼ばれているイベント会場。今年は中国をテーマにした博物館って感じ。
3号館—ドイツ館。マンガの版権輸出に力を入れている日本の出版社はこっちにブースを出している。去年はコミックコーナーに日本の原書がたくさん置いてあって、「大人読み」したい誘惑に駆られた。
4号館—ドイツの出版社の中でもクラフトやカレンダーなど、派生商品のブースがある感じ。一般販売しているカードやハガキを買うところ。
5号館—フランスやイタリアなどヨーロッパの出版社が入っていて、本格的なカプチーノマシンを持ち込んでいたり、3時頃からフランスのブースはワイン片手に打ち合わせしてたりして、あくせくしてない雰囲気が一番うらやましい場所。
6号館—上はエージェントセンターで、ずらっと並んだデスクで30分ごとに椅子とりゲームが繰り広げられ、その下で日本の出版社が(ひっそりと)軒を連ねてる。
7号館—って見たことないけど、どこにあるんだろ?
8号館—私の古巣があったところ。ブースの奥にある社員専用のサンドウィッチとジュースにはお世話になったものです。商売してまっせ、という活気が感じられる。
9号館—8号館の奥にあるのは知ってるけど、何が入っているのかはわからない、開かずの間のような場所。
混雑する最終日に、Moment of Clarityというヤツがやってきました。セールス目的じゃないけど一応アポをとったリチャード・ナッシュ君は、去年までソフト・スカルというぶっ飛んだ出版社をやっていたけど、出版業界の将来を見据えて現状を打開すべく、新しいベンチャーに飛び込んでいった人。そのベンチャー、Cursor.comとは、読者からのインプットを直接受け取り、電子と紙媒体で同時発信していく「ブティック出版」ということらしいのですが、説明を受けてもわかんなかった。とりあえず、構想を語るときのリチャード君の情熱にほだされて「協力したい」と思わせる力があるので、要注目です。
みんなこんなに儲からない業界で、こんなに長い間がんばっちゃってるのね、って思うと、私も負けないゾ、という気になるものです。いつもはフランクフルトに行くのはメンドくせー、とブーたれているわけですが。
でも、今年もフェダーヴァイスとフェダーローターが飲めたとか、ザクセンハウゼンのバーで桃の入ったアプフェルヴァインを飲んだとか、白ソーセージにはやっぱりヴァイスビアだろう、とか、呑んべえには嬉しい街であることは認めます。はは。今年は現地で落ち合った日本からの編集者さんたちが、色々と私のツボにハマりまくるお土産を持ってきてくれたりもしたし。
何よりも、いつもなぜか同じ飛行機をブッキングしてゲートで見かけるワックスマン・エージェンシーのファーリー君とか、ヘッシャーホフで初めて色々と語り合ってしまったノートンのエリザベスとか、ヨーロッパ風のダブルのエアキッスがいつもぎこちないミッシェルとか、私と仕事はゼンゼンかぶらないけど話が通じている気がするヘイミッシュとか、こういう「仲間」に元気をもらいに来ているんだな、ということが少しわかったブックフェアだったのでした。








