グランタの新編集長はアメリカーンなジョン・フリーマン君—Meeting Granta’s new editor (on the second try)

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グランタの新編集長はアメリカーンなジョン・フリーマン君—Meeting Granta’s new editor (on the second try)Books and the City

前回ゲイツキルのコラムでも言及したグランタの新編集長、ジョン・フリーマン君とお茶をした。彼はずっと書評家として、いろんな新聞や雑誌に、驚くほど色々なジャンルの本のレビューを書いていたので、顔と名前は昔から知っていたけど、あっという間に文芸誌の編集長に抜擢された時はビックリした。

シンジケートされているコラムも含めると、国内外で200ものメディアに書評が載っていたという伝説の人だったんだから。それで03年から全米書評家協会の会長さんに就任。老舗のイギリスの文芸誌『グランタ』の「アメリカン・エディター」という変な肩書きで雇われたと思ったら、いきなり編集長だもんなー。

彼は見た目そのまんま、いかにもアメリカーンなお兄ちゃん。ダーティーブロンドでグリーンの瞳、中背中肉、ジーンズにカウボーイブーツ履いてそうな。それもそのはず、オハイオ生まれだってさ。で、大学がスワスモアだもんなー。らしくって笑えるぜ。

スワスモア・カレッジってたぶん、日本じゃ全然知られてないけど、ペンシルバニア州にあるリベラルカレッジの御三家のひとつ。1000人ぐらいしか生徒がいないけど、授業の内容じゃアイビーリーグにも引けはとらないくらい、厳しいというか、ラテン語や哲学もやらないと卒業できないというか、専攻を極めるより、幅広い教養が求められるのがリベラルカレッジなのだ。

ちょっと顔写真を載せるのは憚られるので、お顔を拝みたい人は最新号『シカゴ』号のプロモーションビデオをご覧あれ。

しかも、書評家になった理由ってのが笑っちゃう。大学卒業後数年はニューヨークであっちこっちの出版社で下積みしてたんだけど、その時つきあってた彼女がニューイングランドに引っ越しちゃうんで、ついてったんだって。それで 元々、多読家だったのを活かしてマンハッタンを離れててもできる出版関係の仕事は書評家だ!ってんでキャリア転向。ストックもないのに、いきなり業界誌パブリッシャーズ・ウィークリーに「書評書いてもいいですか?」って持ちかけたっつー強者。

全米書評者協会にいた時に、全米の新聞で書評スペースが削られる動きがあったのに抵抗してCritical Massというブログを作って立ち上がったのがジョン。で、今年になってイギリスの『グランタ』がいかにもアメリカーンな彼を雇ったというので「ナゼ?」と思っていたら、いきなりグランタの編集長が辞任(っつーかたぶんクビ)、彼が後釜としてグランタを率いていくことになったのでした。

pen今年に入って最初に彼を見かけたのはペン協会のイベント。「西と東のストーリーの出会い」みたいなテーマで、中東、アジア、ヨーロッパの作家や翻訳者3人を集めてのグループ対談だったんだけど、他の2人が若手の作家なのに、一人だけ年配のドイツ語/アラビア語の翻訳者のじーちゃん大学教授が交じってて、おまけに耳が遠いのか浮きまくり、話が一人だけ通じてないお笑いみたいなパネルになっちゃってたんだけど、ジョン君が持ち前の「僕、田舎者でおバカなアメリカ人だから笑って許してねー」という和ませ系の雰囲気でなんとか収拾をつけてたってのがあった。

その後、彼が周りの皆に「グッジョブ。ご苦労さん」と言われてテレていたのが印象的だったっけ。その次がポール・オースターの朗読イベント。これもソツなくこなしていたので、イベントの後でオースターがサインに応じている間に私はジョン君に挨拶したら、「こんどコーヒーでもどぉ?」と気さくに言われたので気さくに応じていたんだけど、グランタ編集長になったからには、編集部のあるロンドンに足しげく通わなければならない彼、捕まりにくくなっていたのでした。

で、ようやくお茶することになったはいいが、コイツ、アポの朝、時差ボケですっぽかしやがった。次の週だと思ってたんだって。ま、なんとなく予想はついてたんだけどね。その後、平謝りのメールが来て次の朝に仕切り直し。でも、次の日もやっぱり遅れてきたんだよなー。髪に寝癖ついてるしー。

まぁ、ここで仕事の話もしたんですが、雑談もいっぱい。

K「ゲイツキルの朗読イベント、ジョンがやるはずだったんでしょ? ファンだって公言してたもんね。だけど、代役の人、大変だったんだよー。ゲイツキルがあんな人だとは思わなかった。すげー愛想悪いの」
J「あ、それ、僕もあった。最初に会った時は、すごく気さくで優しかったのに、次の時は機嫌悪いのか、恐かった」
K「パトリック、なんて言ってた?」
J「一刻も早く忘れたい思い出だって」(笑)

J「これ、今度の号。シカゴ特集
K「聞いてる。でもイベントがみんなシカゴで開催なんでしょ。私、行けないじゃん」
J「ん? NYでやるのもあるよ。招待状出すから言って」
K「ありがと。ちゃんとシカゴホットドッグの謎を解き明かすエッセイも入れてくれた?」
J「ははは、あの派手なホットドッグね。シカゴで有名なお店で食べたことあるよ。行列がぐるっとブロックを一回りしてるの。食べたけど、特別美味しいとは思わなかったなぁ。同じ並ぶなら僕は『シェイク・シャック』(マジソン・パークで絶品ハンバーガーを売っている行列のできるお店)のバーガーの方がいいや」

(実はジョン君、サンドウィッチおたくなんです。ぜひ、日本のメンチカツサンドを食べさせてみたい)

J「業界ではみんなEブックに注目してるけど、僕にはわかんないや。キンドルってそんなにいい?」
K「うん、全部キンドルで読みたいわけじゃないけど、確実にこれは手元に残しておかなくても良いけど、ちょっとチェックしておきたい、って本はキンドルで読むね」
J「ふーん、そんなものかぁ。僕はやっぱり紙の本が好きだけどなぁ」
K「例えば、今度出るダン・ブラウンの新作? ギョーカイの人間として当日本屋に行ったり、ハードカバーで読んでるところを人に見られたくないけど、ちょっと読んでおきたいから多分キンドルで買う。10ドルだし」
J「なるほどねー。僕はそういうメカ系ってダメなんだ」

K「って、そこにブラックベリーがあるだろうが」
J「うん。こういうのやめよう、って本書いたのにね」(笑)

そーなのです。実は今度、彼が書いたノンフィクションの本が出るんですが、これがTHE TYRANNY OF E-MAILというタイトル。色々伝達メディアのリサーチもしてるみたいですが、基本的に、人間らしい生活をするためにもメールはやめよう、ネットは消そう、本を読もう、みたいなテーマになっているらしい。

後日談になりそうな話だけど、お茶した数日後、彼からハガキが来てたんだよね。見てみれば、ジョン君、ロンドンから「帰ったら会いましょう。楽しみにしてます」って書いて出している。今時アメリカ人でわざわざ手書きのポストカードを出すなんて、律儀というか、時代錯誤というか、レトロというか、きゃわゆいというか、too lateというか…。筆跡もコロコロしたブロック文字で、なんか笑っちゃうよ、君には。

今度、今のガールフレンドとのエピソードをバラしちゃうから待っててね。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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