すもももももももものうちだけど、私が農家の嫁に行くなら升本家—David Mas Masumoto is the literary farmer whose peaches I dream about

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すもももももももものうちだけど、私が農家の嫁に行くなら升本家—David Mas Masumoto is the literary farmer whose peaches I dream aboutBooks and the City

実は私、昔から大の“桃フェチ”です。黄金桃でもネクタリンでもいいんだけど、基本的には白桃に目がない。ミクシーの「桃味」というコミュにも出没してはピーチ味の食べ物の批評をしているくらい。考えてみればシャンプー&リンスもカネボウのナイーブだし、先週届いたLUPICIAのお茶にも「Momo」ブレンドがしっかり入っている。常備しているミントはもちろんピンキー。

もし日本で入院したらお見舞いにはタカノの桃バスケット(5個入りで4400円なり!)をお願いね、と周りに頼んであって、そのためなら盲腸ぐらい切ってもいいかな、とさえ思う。梅雨の頃に帰るのはイヤだけど、岡山産の桃が食べられるからいいや、と結局里帰りする。実家にいる間はコンビニやスーパーに入るたびにピーチ味のお菓子を漁りまくる。(でも最近、桃色のパッケージが目に入って近づいていくと、みんなピーチじゃなくて「とちおとめ」味なんだよね、がっかり。)

今わが家に揃っている戦利品だけでも、白桃味ののど飴数種類、Toppo、しまぷっちょ、ピンキー、ガムなどが桃の形をしたプラスチック容器(岡山駅で買った「桃太郎の祭りずし弁当」の空き箱なんだけど、どんぶらこっこと流れてきそうな桃の形をしている)に収まっている。

こっちではピーチコブラーのピーチと言えば、イエローピーチなので、とっても不満。ユニオンスクエアのグリーンマーケットでやっとこさホワイトピーチが出回る今の季節は私にとって天国、いや、文字通り「桃源郷」なのであった。

そんな私が何年も前に出会った本がデイビッド“マス”升本のEPITAPH FOR A PEACH。著者は西海岸の農園で桃作りに賭ける日系三世のおじさま。日本語権が売れたら私が翻訳したいと連絡したぐらい。

彼が腕によりをかけて育てているsun crestという品種のピーチは、本来の桃の味を思い出させてくれる絶品なんだけど、見た目の色があまりよくなく、傷みやすく、保存がきかない、という理由でスーパーでは仕入れてくれない。お話にならないほどの安値で買い叩かれて、冒頭でしかたなくサンクレストの樹を潰す描写だけで、もう泣けてきた1冊。

皆がオーガニックと騒ぎ出す前から、無農薬農業にトライしては、雑草や害虫と孤軍奮闘する様や、自分の土地を持つ事さえかなわなかった日本からの移民である祖父のことや、毎日のお天気に一喜一憂する気持ちや、息子に苦労させたくない一心で大学に行かせてくれた父親の苦労や、ウィスコンシンの農家出身である妻の話や、苦悩する父親をそっと見守る子供たちの話が綴られている。

そして四季を通じて移り変わる農園の景色や、日系人の家族に代々伝わる「shikata ga nai」とか「gaman」という言葉のコンセプトや、お米を磨ぐ都合があるから今日はご飯を食べていくのかとしつこく訊いてくる「バアチャン」の話とか、アメリカ風の家のポーチに吊るされた風鈴の音だとか、ああ、まぎれもなく日本のファミリーがここアメリカに根付いているんだなと、感じさせてくれる。

masそのマスモト氏が珍しく東海岸でパネルの司会をするというので、ダウンタウンに新しくできた92 Yトライベッカに出向きました。もう黄ばんで来たデビュー作から、最新作のWISDOM OF THE LAST FARMERを抱えて。ニューヨーク近郊で農業に従事する人たちを呼んでのイベントだったけど、私はマスモトさんの近くの席でかぶりつき。サンクレストはないけど、産地直送の果物も並んでいて、贅沢なイベントですねー。

パネルに皆さんは、いかにも「百姓なもんで、口ベタで〜」みたいな人から、アンタたちもうコメディアンに転身したら、と言いたくなるようなボケとツッコミの親子コンビまで、それぞれ、人件費の高いニューヨークで、農家の事はなーんにも知らないニューヨーカー相手に野菜や果物を作って売る事の大変さを語っておりました。「みんなオーガニックにこだわるけど、やっぱり虫食いはイヤだっていうんだよなー」ってな具合で。

驚かされたのは、東海岸でも日本の契約農業のシステムが取り入れられていて、CSA (Community Supported Agriculture)と言う言葉が普通に使われていたこと。そして、アメリカでも最近、農業をやりたい若い人が増えてきているけど、土地も道具も高いのがハードルになっている事や、みんなオーガニックという理想を抱えて始めてみるけど、根気が続かない事なんかは、日本の現状とそんなに変わらない気がする。

1ポンド4ドル以上もするHeirloomトマトって流行ったし、そのうち、タカノみたいな高級フルーツのコンセプトも広まるんじゃないだろか? アメリカ人って、日本では桐箱に入った夕張メロンにン万円もの値段が付くのを鼻で笑ってくれてたものだけど、あの味を知ってしまったら、どんなに似ててもキャンタロープなんて食べられたものじゃないのよ、ふふん。私のために早く山梨の「白鳳」みたいなのをこっちでも作ってねん。

パネルが終わった後、本を抱えて詰め寄る私に優しく1冊ずつメッセージ入りでサインしてくれたマスモトさん、ありがとう。絶対そのうちバークレーに行ったらアリス・ウォータースのChez Panisseで食事して、デザートのサンクレストを食べます!

後日談:ユニオンスクエアのグリーンマーケットで1ポンド6ドル!という強気のホワイトピーチを発見。「日本の桃と比べてやるぜ」とばかりに1個買ってさっそく試食。う〜む、ジューシーなのは合格だけど、糖度じゃジャパニーズピーチにはかないませんな。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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