たまたま通りかかった公園でやってた楽しいイベント—A stroll in the park turned a literary moment


先週、五番街42丁目のニューヨーク市立図書館の裏手にあるブライアント・パークを通りかかったら、向かいにある紀伊国屋ニューヨーク店のジョン・フラーさんが野外に置かれたテーブルに一生懸命本を平積みしていたので、思わず「あれ? ジョンさん、こんな公園で何してるんですか?」と声をかけた。

これまで私は彼に何度も名刺を渡して挨拶をしているけど、その時に所属していた企業名が(KA→RHK→フリーランス)が替わっているからか、未だに顔を覚えてもらっていないようだ。また名乗るのも悔しいので、ちょっと意地悪して教えなかったけど、思い出してくれただろうか。ごめんなさい、次に会った時はまたちゃんと名刺を渡しますので。

bryantparkブライアント・パークにはリーディング・ルームという一角があって、「ルーム」と言ってもただ、椅子とパラソルと本棚が点在したコーナーなんだけど、とある銀行がスポンサーとなって出版社から本を提供してもらい、ここを訪れる人は自由に何でも読めるようになっている読書コーナー。天気のいい日には気持ちいいです。(Photo by: disrupsean)

どうやらここでイベントがあるらしく、時間があったので覗いていく事にした。平積みされている本を見ると、紀伊国屋さんのラインアップとは程遠いBeliever/McSweeney’sの著者の本が並んでいる。「ビリーバー」というのは、作家のデイヴ・エガースDave Eggersがやっている出版社マクスウィーニーから出ている月刊文芸誌で、かなりとんがった前衛的な作品が多い。どこまで真面目なんだかわからないところが「ニューヨーカー」誌と違うというか、独特のエッジーさを醸し出している。毎号絶対何か、ゲラゲラと笑い出しちゃうようなのが載っているので、何か飲みながら読む時は注意した方がいいくらい。

デイヴ・エガースといえば、デビュー作『驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記』を読んだ時はかなり衝撃でした。やっぱり彼は天才ですね。

他には、私が以前にゲラで読んだアーサー・フィリップのTHE SONG IS YOUも並んでいたので、ビリーバーとは縁のなさそうな彼がナゼここに? という疑問が。あ、でも寄稿してたんですね。知らなかった。ちょっとカッコいいと思いません、彼って?

てなわけで、この日のテーマは「音楽について書くということ」。中には、マクスウィーニーから本は出したけど、音楽とのつながりはダンナが音楽プロデューサーだから、というこじつけた人も交じっていましたが。パネリストの中で唯一、読んでみたい気にさせられた本の著者でした。エリザベス・アンソニーという人のTHE CONVALESCENTという本、バージニアでバスに積んだ肉を売り歩くハンガリー人のお話….なんだよ、それ?って思うでしょう? でも数行抜粋を朗読するのを聞いただけで、ゲハゲハ笑っちゃいました。いかにもマクスィーニー。

一方、真面目な文学青年といった雰囲気のアーサー君曰く、フィクションに於ける音楽の役割とは、劇中の小道具みたいなもので、ある時代の匂いや雰囲気を出すのに欠かせないものだそうです。そういえば、村上春樹の『1Q84』の冒頭でもヤナーチェクのシンフォニエッタが意味ありげに登場して、急にヤナーチェクのレコード(っつーかダウンロード)が売れ出したという話も聞きました。特に音楽に言及してなくても、勝手にイメージに合ったBGMが流れてきそうな本を読んでいる時って、気持ちいいですよね。

phillipsで、音楽の専門知識がないと音楽について書けないのか?という質問に対しての答えが、「プルーストの作品の中に、音楽について全く知識のない人が、ある音楽を耳にして椅子から転げ落ちそうに感動したけど、専門知識がないからその音楽がなんという楽曲で、どうして自分がそんなに突き動かされたのかを知ろうとする様子が延々と書かれた部分も読んだことがあるから、別に専門知識がなくても語れるものだと思う」というものでした。

また、他の参加者の中には、「文章を書く作業そのものが音楽と同じで、アルファベットを使って、音声として再現できるものを作り出し、そこに流れとかリズムがあるわけだから、全く異質のものではないと思う」と言う人も。そうなんだよねぇ。翻訳物の場合、原作のリズム感っていうのは損なわれてしまう事が多くて、難しいなぁ、って思う。

ってな具合で、わかったようなわからないような話が弾んで、お開き。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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