ダサクて地味な出版業界なのに「ステータス・ゲラ」ってのはあり?—Not totally believing that there is such thing as “status galley”


ゲラ、というのは大阪の人が指す「笑い上戸」の人のことではなくて、もちろん、出版業界でいう「試し刷り」のこと。この言葉が英語のgalley proof(ギャーリー)から来ていることを知った時はちょっと驚きだった。だって発音が全然違うんだもん。グラビアがgravure(グラヴューア)から来ているのに気づいたときと同じぐらいびっくら。こっちではAdvanced reading copy、略してARCと呼ばれることも。編集者や著者はこれを手にして原稿に修正を加えていく。

こっちの出版業界ではこのゲラをペーパーバック風に綴じたり、電子版で作ったりして刊行予定日の何ヶ月も前から内々にアカウントと呼ばれる書店のバイヤーや、同業他社の編集者や、書評家や、その他著者にゆかりのある人に配るけど、アメリカと比べると入校から刊行までの期間が極端に短い(ということは、つまりは編集者も著者もメチャクチャ忙しく、事前に十分なマーケティングやPRができにくい上、マスコミ媒体の方も刊行に合わせて書評を書くのが難しくなる)ので、あまりゲラは配らないみたいですね。

ということで、こっちの業界にいると、編集者にちょっとお願いすると気軽に未刊の本のゲラをくれたりするので、それが普通の感覚になってしまった。たまにストランドなどの古書店にこういうゲラ刷りを綴じたARCを見かけたりしますが、誰が売ったんでしょうね? もちろん非売品のハズですが。書評家の立場でこういうことをしていると、業界から総スカンを喰らうリスクがあるけど、ファンにしてみればARCと刊行された本を比べて、どこがどう訂正されているかを見る楽しみもあるかもしれません。

「ステータス・ギャリー」なるものを考えついたのは、マスコミ界のゴシップを集めたGawker.comというサイトや、週刊紙の「オブザーバー」なんですが、つまりはギョーカイの人たちだけがわかる、そしてもしかしたらそこから恋か、あるいは最低でもインテリジェンス溢れる会話のきっかけになるかもしれない、ということらしいんですが…。

そしてめでたくもこの夏の「ステータス・ギャリー」に選ばれたのは、マイケル・シェイボンのMANHOOD FOR AMATEURS、ジョナサン・レイサムのCHRONIC CITY(これは私も読みたーい)、フィリップ・ロスのTHE HUMBLING、などとなっとるそーです。

だけどねー、例えば地下鉄の中でこういうゲラをこれ見よがしに読んでみても、なんだっつーんでしょ? 通勤時間まで原稿の赤入れをしている余裕のない編集者、としか思えないかも。しかも最近はゲラもPDFファイルで送って、eブック・リーダーで読む、ってのも多いし、分厚い紙の束を抱えて読んでも、それが何の書類なのか、普通わからないのではないでしょうか?

まぁ、アメリカの出版界にはこういうものがあるよ、ってことで紹介してみました。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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