『ライ麦畑』の続編は「表現の自由」として守られるべきか—Recluse Salinger comes out of hiding to block publication of Catcher sequel

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『ライ麦畑』の続編は「表現の自由」として守られるべきか—Recluse Salinger comes out of hiding to block publication of Catcher sequelBooks and the City

最初にこのニュースを聞いたとき、今までそんな話がなかったのが不思議なぐらい、という程度の認識だった。どこぞの北欧の小さな出版社からJ・D・サリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』の続編として書かれた『60 YEARS LATER(60年後)』が出され、英語圏でも発売になるらしい、という、他愛のない話だと。

もちろんサリンジャー本人が書いたものではないし、よくもあんな不朽の名作とされるクラシックに挑む気になれますね、ちょっと話題にはなっても誰も買わないでしょ、というのが正直な感想。

存命ではあるけれど、今や完璧に世捨て人となったサリンジャーさん本人も、これには黙っていられない、とばかりにさっそく出版差し止めを要求する訴訟を起こしましたとも。(本はダメだけど、こんなパブは勝手に作っちゃっていいみたいですね。)(Photo by: Ewan Munro)

著者は当初、JD(ジョン・デイビッド)・カリフォルニアというペンネームを使っていましたが、訴訟に対抗したことで本名もばれ、フレデリック・コルティングというスウェーデンの人らしい。彼によれば、この本はあくまでもパロディーであって、本人の了承を得ない続編ではない、という主張。

文中でも老人ホームを逃げ出して文句を言っている「ミスターC(ホールデン・コールフィールドのラストネームの頭文字をとったものと思われる)」と、後世まで名を残したサリンジャーが苦悩する回想録という形式。続編というにはほど遠い内容。

サリンジャーはニューハンプシャー州のど田舎のコーニングというところに隠遁しているけれど、エージェントと弁護士事務所はニューヨークということで、訴訟はここニューヨーク市の裁判所に持ち込まれているわけですが、アメリカの法律に照らし合わせてみれば、ベースとなる作品に対する風刺、批評、あるいはパロディーとされるものは、言論の自由の範囲内として守られている。だから著者の言い分というのは、もちろん読者がこれをサリンジャー本人が書いた続編だとは思わないだろうし、そういう主張は一切してないし、「風刺」に当たるでしょ、というもの。

対してサリンジャー側は「私の作品の知名度を利用した紛い物」と断固反対の立場。

結局、裁判所はおそらく、この作品の刊行によって御本家の『ライ麦畑』に実際的な被害があるかどうかを考慮して判決を下すものと思われるので、まぁ、お目こぼしになるんじゃないだろうか、というのが私の予測です。そもそも、英語版の出版社の名前がWindupbird Publishing(ねじまき鳥出版)ってところからして、一発屋がふざけているとしか思えないし。かえってサリンジャーが訴訟を起こしてくれたおかげで一時的に注目度アップ、で、その後はまた忘れ去られる、ということになる気がします。

アップデート(2009年7月1日)

裁判所が下した判断は「アメリカでの出版はならぬ」というもの。内容から判断してパロディーや書評として認められないのがその理由。スウェーデンの著者側が控訴するかどうかは未定。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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