ブック・エキスポ09雑感—Miscellaneous Musings after the BEA 09

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ブック・エキスポ09雑感—Miscellaneous Musings after the BEA 09Books and the City

まず最初に断っておくと、フランクフルトやロンドンのブックフェアと違って、アメリカで行われるブック・エキスポ(BEA=Book Expo America)は、出版社が「アカウント」と呼ばれる本を買う人たちのセクター(日本では単に書店と言ってしまえるが、アメリカでは本を売っているのは本屋だけではないし、図書館や学校に直接卸したりするので)に対し、自社でこれから出る本を買って下さいね、とアピールする場なので、版権ビジネスは脇に追いやられている(文字通り地下の別室とか)感じがする。時期的にも普段から版権売買をしている担当者たちから見れば「2ヶ月前にロンドンで会ったばっかりだしなー」だろうし、児童書担当ならそれがボローニャに代わるだけのこと。

とはいえ、やっぱり英語の書籍の中心地はここニューヨークであることに間違いはなく、出版社もエージェンシーもたくさん集中しているので、ブック・エキスポの前後にみんな昔私がやっていたお百度参りをするわけだ。その点ではずっとこっちにいる私はブック・エキスポともなると、会場で行われるパネルディスカッションに参加するのが主な目的になる。

でもね、今年は日本の出版社から来ている人をまったく見なかった気がするんだな。版権ビジネスは会場のフロアから隔離されているし、こういうパネルを聴きにくる人は元々少ないんだけど、皆さん、どこ行っちゃったのー?と思ってたらやっぱり新型インフルエンザを恐れて出張をキャンセルしたらしい。(トンネルを抜けると、ライツセンターであった。)(Photo by: Chris Goldberg)

ニューヨークに旅行や出張を予定している人たちの為に断っておくと、こっちでは誰も新型インフルエンザのために日常生活を変えるなんてことは一切してない。マスクしている人なんてだーれもいないし。確かに死者は4人出ているんだけど、4人ともunderlying medical condition、つまり糖尿病とか、喘息とか、心肺疾患とか、ついでにバラしちゃえば極端なデブだったとか、他に持病があって「風邪でもひいたらイチコロ」な状態だったことが報告されている。

閉鎖されている学校も、郊外のクイーンズやブルックリン、あるいはマンハッタンでもハーレム以北の公立校ばかりで、名前を聞くと「あー、不衛生な移民の子や貧乏人の子がたくさんいる地域ですね」とわかってしまう地域に限定されている。

だから、せっかく旅行を楽しみにしていたり、仕事で必要な出張があるのなら、キャンセルしなくていいんじゃない?というのが私のアドバイス。っつーか、そんなんでキャンセルできるような出張なら最初っから要らないんじゃないの?と皮肉の一つも言いたくなる。特に昔いかに現地で大した仕事をしないお偉いさんが物見遊山でブックフェアに来ていたかを知っている私としてはね。で、どうしても仕事で来なければいけないのだったら、ちゃんとビジネスクラスのチケットをとって、スケジュールに余裕を持って、健康管理がきちんとできる状態でいらっしゃいな。そのための経費なんだから。

一方アメリカでは、熱があったり、ゴホゴホ咳が出るような状態なのに、ムリをして仕事するなんて考えられないから、病気ならさっさと病欠するし、来ている人はエネルギッシュな人たちばっかりだから、人ゴミとはいえ、マスクだらけの群衆に囲まれているよりも健康的な感じがする。

ということで、ブック・エキスポの会場なんだけど、特に経済危機の影響でガクンと人手が少なくなったという感じはなく、相変わらずフロアは大にぎわい。古巣のランダムハウスのブースがかなり縮小されていて、来場者も驚いていたけど、これは版権ビジネスを別室でやるようになったから。だって、サインを求める一般入場者の人たちがそばにいるととにかくうるさくて仕事になんないんだもん。でも、窓もない部屋にずっと隔離されてる版権担当者の人たちも気の毒かな。

他にも買収で揺れているホートン・ミフリンや、ケンジントンといった中堅出版社も出展そのものを取りやめたりして、ブック・エキスポもこれからが勝負どころって感じですな。

各出版社のマンガコーナーは以前ほどの勢いは感じられず。これはマンガはマンガでコンベンションをするようになってきたからだと思う。それに以前ほどの成長率も期待できず、各社その辺のことがわかってきたのかも。

逆に騒ぎ過ぎじゃないの?と思えるのが各パネルでのE-ブックへの期待。アマゾンのキンドルとか、iPhoneアプリケーションとか、新しいE-ブック・リーダーとか、まだまだ電子版の売上げなんて書籍全体の数%にも満たないのにねぇ。だけど作家のシャーマン・アレクシーみたいに頭ごなしにE-ブックを否定するのもどうかと思いますな。彼は自分の本の電子化を許可しないって、エラそうに言うんだけど、いるんだよね、こういう風に自分がわからないテクノロジーは全否定!っていう石頭も。彼の本は面白いのに残念だねぇ。

最近のブックフェアで嫌なのが、あれ? あの人がいないな、と思うと、会場で「誰それさんがクビになったらしいよ」という話を聞くこと。今回はいきなり文芸誌グランタのアレックス・クラーク編集長。心臓に悪いのでやめてもらえるかな、こういうの。

他には面白いパネルがいくつかあったので、ボチボチ紹介したいと思いますです、はい。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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