とうとう英語版が出てしまったフランスの話題作、グロすぎてパス—Gross Holocaust Tome? Sorry, Not My Cup of Tea
あー、またミチコ・カクタニさんが業界の掟破りの書評を載せているー。もう驚かないけど。2年前のフランクフルト・ブックフェアで、ヨーロッパの出版社関係の人たちが揃いも揃って「この本すごいよ〜」(フランス語読める人)「あの本すごいらしいよ〜」(フランス語読めない人)と騒いでいたのがこれ。ようやく英語版が出る運びに。でも3月3日刊行なんてやめてほしい。桃の節句が台無しになるではないか。
著者のジョナサン・リテルは元々アメリカ人だけど、マルチリンガル、ヨーロッパを渡り歩いて今はバルセロナ在住。作品はフランス語で書かれ、その年のゴンクール賞とアカデミーフランセーズ賞をダブル受賞。ヨーロッパ語圏では版権の取り合いになり、フェア開催中もオークションやってたぐらい、話題にはなっていたのですが…. 当時日本語版権のスカウトをしていたけど、話を聞いただけで、これはどう考えても日本じゃ売れねーよ、誰も読みたかねーだろうよ、と即刻パスした覚えが。
英語のタイトルはThe Kindly Onesとなっています。このビエンヴァイアンテBienvallientesって何?としばし疑問だったので調べた覚えがありますが、要するにギリシャ神話に出てくるエリニウスのことでした。おぞましい姿の三位一体の復讐の女神で、名前を出すのも憚られるから反対にエウメニデス(慈悲の女神)と呼ばれてるってわけですね。そういえばダンテのInfernoの挿絵で見たことがあるぞ。(英語ではThe Furies、その反対語としてThe Kindly Onesってわけ。)
だってねー、主人公マックス・アウエが元ナチス高官で、ドイツの政治のしくみと歴史をひとしきり語った後、双子の妹との近親相姦、異常なセックスの妄想、細部にわたるユダヤ人の虐殺や、死体の描写あり、しかもトドメを刺すようにそれが堂々900ページ!なんて聞いたら、それだけで胃液が逆流して、フェアの会場に出ていた屋台のビールで流し込んだソーセージをもどしちゃうってもん。フランス人って時々こういう悪趣味なものが本気で好きだったりするから、わかんないんだよなー。(ちなみに、フランスでは小川洋子、大ウケです。しかも『博士の愛した数式』以前のグロい短編集が売れている。)
まぁ、人間の残忍さ、不徳、といったものを徹底的に描こうって言うんでしょうが、ホロコーストでアートにするのはいかがなものか、というカクタニさんの主張には賛成できます。これを21世紀の『罪と罰』じゃ、と持ち上げる人は「変態」を「果敢」と、「欺瞞」を「野心」と、「叙事詩的曲芸」を「独創的技巧」と取り違えてるだけじゃないの?とカクタニ節をかましてくれてます。









