「寄付は悪だ!」と口角泡とばしながら熱く語るジジェク—左翼思想と身だしなみは相容れないのか? Yes, Mr. Žižek, I Wholeheartedly Agree with Your Opinion, But Really, You Need a Makeover, Dude


私の図書館(ユニオンスクエアのバーンズ&ノーブルのこと)でスラヴォイ・ジジェクのレクチャーがあるというので、覗いてきた。

Slavoj Žižek(このZの上の三日月マークはなんて言うのか、わかりませんが、彼はスロベニア出身なので、チェコ語? ロシア語でいうところの軟音になるわけですね)は「哲学界のエルヴィス」とあだ名されるわけのわかんない人なんだけど、わけがわかんないのは私自身ポスト構造主義さえ理解できているのかも怪しいし、正直ラカンも読んだことないからだけのことかもしれない。しかもどこかのビデオクリップで見かけたジジェクさんは東欧アクセントバリバリのマシンガントークで、いい席があってもつばが飛んでくるといやだから真正面に座るのは避けよう、というぐらいの前知識しかなかった。

「Charityは悪だ!」とまぁ、のっけからウンウンと頷きたくなるような発言。日頃なんとなく個人的にもやもやと抱えていたものが文化人の言動に裏打ちされて、さーっと空が晴れ渡る瞬間です。要するに、昔はフィラントロフィストと言えば、ロックフェラーとか、カーネギーとか、超お金持ちの「eccentrics(変人)」が自分の使いたいようにお金を払うことを指していたのに、今ではビル・ゲイツらが医療だの、教育だのと、何兆円もの寄付をして、なんだかヒーローのようにまつり立てられているけれど、そこには思想的な弊害がある、というようなことを宣った。(Photo by: sushiesque)

つまり、地震だの、飢饉だの、ハリケーンだの、難民キャンプだの、世界中に何かしらの理由で苦しんでいる人たちがいる。それを取り上げて「みんなぁ、お金を寄付するんだ〜、この人たちを助けるんだ!」という行動をとるのは、いかにも正しい行いのように見えるかもしれないけれど、そこには「イデオロギーの排除」がある。どうしてそういう事態が起きたのか、例えば、政治的紛争の結果だったり、環境問題を無視した故の人災みたいな天災だったり、国家体制の怠慢だったり、そしてさらにつきつめれば、資本主義とか、共産主義とか、そういうイデオロギーに則った国家の政策が失敗している結果なんじゃないか、とか、「そもそもそうなった根本的な原因を考え、是正する」というプロセスをすっ飛ばして、とりあえず、金だの物資だのを送って表面的に解決を装っているだけではないのか、っていうのがどうやらジジェクさんの言いたいことらしい。(と勝手に解釈する。ま、私の頭ではこのぐらいの理解が限界かと。)

だから、とりあえず「裏の意図があってお金を撒いてます」と正直に言っているジョージ・ソロスの方が善人ぶったお金持ちよりもマシだ、とこういうことです。

実は最近、よくカチンと来ていることがあって、成功した人やお金を持っている人たちが「世の中のため」にお金を寄付したり慈善団体を支援したりすることが尊いような風潮があるんだけど、そこにある種の偽善と根本的な社会構造への疑問を持ってしまう私は何なの?と思っていたから。

ま、こんなこと言っても所詮は寄付するお金のない貧乏人の僻みとしか聞こえないのかもしれないけれど。そうとしか思えない人にはこれ以上どう言えばいいのか。「ノブリス・オブリージュっていうのはね…」とカッコつけてる人っ最低。

でも、元々、こんなに貧富の差がない社会が出来上がっていれば、富裕層の寄付に頼ることのないわけで、それは社会福祉が機能していないだけということもできるし、寄付していい気分になられる前に、富裕層からガッツリ税金とって福祉で賄えばいいことじゃないか、と思うわけです。道路だのダムだのばっかり作ってないで、いざという時にちゃんと政府が資金もリーダーシップも発揮できるようにしておけよ、そのために税金払ってんだぞ、と。

そういう意味では、政権が内輪もめに終止し、社会格差が広がりつつある日本の状況はよくないと思う。この先どんなにボランティア精神が発展し、寄付金が増えたとしても。

関係ないけれど、一緒に行ってくれた友人に私はボヤきました。なんで思想的にリベラルな人って、おしなべて「ダサイ」わけ? 会場にもリベラルっぽい男性も大勢来ていたけれど、どんなにお話が面白くても、こいつらとデートするのは遠慮したいぜ、ってな人ばっかり。(負け犬が選り好みしている場合じゃないのは重々承知しているが、さすがにこれはあんまりな。)

ちなみにジジェクさんの髪は伸び放題でボッサボサ、無精ヒゲに黒Tシャツという定番中の定番、こんなむさいオッサンと地下鉄で隣りに座られたら、速攻で車両うつるね、ってな。ま、東ヨーロッパに「おしゃれ」を期待する方がムリか。ジジェクは再来週、フランスのベルナール・アンリ・レヴィーと対談するんだけど、あっちは同じ哲学者といってもさすがは御ふらんす。身なりもばっちりキメてくるんではないかと予想している。

分厚くてもドーンと来い、ジジェク来いという人には(アマゾンのリンク)

In Defense of Lost Causes



ムサすぎるので、ちょっと小出しにジジェク読みたい人には

Violence: Six Sideways Reflections (Big Ideas/Small Books)



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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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