連載終了のコラムだけど私って先見の明があるんじゃないか?—I Almost Spook Myself for Prognosticating Bestsellers with Legs


前回書いたように、選挙直前にバラク・オバマに寝返った…というより、ヒラリーを支持していた気持ちを乗り越えてオバマを応援しようという気になった私だが、実はこの本は私にとっても思い出深い1冊となっていた。

2006年7月から2年にわたって読売新聞の書評欄「本よみうり堂」のページでFOREIGN BOOKSというコラムが連載された。350字ほどの小さなスペースながら世界の国々のベストセラーを紹介していくという企画だった。各国持ち回りなので私が担当したアメリカの本は月に1度も登場しなかったが、その分、パッと売れてすぐにチャートから消えていく本ではなく、長く売れるロングセラーとなり、まだ日本語版が予定されていなくて、しかもアメリカの世相を反映しているタイトルを選んだつもりだった。

あらすじや趣旨だけでなく、著者のプロフィールやそのタイトルが売れている背景も紹介しようとするとすぐに字数が足りなくなり、だらだらと言いたいことを全部書ききるより、限られたスペースで簡潔な文を書くことの方が難しいんだと思い知らされたコラムだった。担当編集者のMさんに校正してもらうとピシッとタイトな文章になっていて、毎回勉強させてもらった。

オバマのAUDACITY OF HOPEを私は2007年2月18日付けのフォーリン・ブックスに選んでいる。この時点で英語版の版元クラウンに連絡してまだ日本語版権が売れていないことを確認した覚えがあるから、日本語タイトルもこっちで考えたので直訳に近い『剛胆なる希望』となっている。(Photo by: Joe Crimmings)

ネットでももう見られないようなので、転載しておく。

『剛胆なる希望』バラク・オバマ著
著者は先日、45歳という若さで民主党から正式に次期大統領候補として名乗りを挙げたばかりのイリノイ州上院議員。アフリカ人の父と白人の母を持つ彼が書いた前作のメモワールもベストセラーだったが、今回のアメリカ政治へのマニフェストはミリオンセラーになった。
中傷と醜聞が絶えない二大政党の間で、著者は当初からイラク戦争に反対を唱え、本書でも減税や国民保険で社会の弱者を守り、教育改革を訴えている。どこまでもまっとうで「誠実」なこの国への理想と希望がひときわ異彩を放つ。皮肉にも対抗馬の民主党・バイデン上院議員が著者を「アフリカ系アメリカ人では初の正統派候補」と呼び、メディアから失言として非難されたのは記憶に新しい。
原題『The Audacity of Hope』CROWN刊 25㌦

そういえば、その時オーディオ版をもらったんだっけと今さらのように引っぱりだし、雑用の合間に聞いている。落ちついた彼の声はルーズベルトやクリントンのようなoratory(演説)とはほど遠く、胸がわくわくするわけではないが、反対に聞いていると落ち着く。なぜそんなことをする気になったのかと言えば、半分はバカ息子ブッシュのせいでもある。

THE AUDACITY OF HOPE(日本語版は『合衆国再生』というタイトルになっている)

アメリカ大統領は引退後メモワールを出すのが慣例となっているが、出版業界のコンセンサスでは、ここまで支持率が低いブッシュの本なんて今は誰も読みたくないし、高額なアドバンスも望めないので、しばらく様子を見た方がいいぞ、ってこと。しかもブッシュはまともに読み書きもできないことがバレているし、自伝を出そうにもまずはゴーストライター探しでしょ。

そんなバカ息子ブッシュと違ってオバマは自分で本を書き、オーディオ版も自分で吹き込んでいる。ハードカバー、ペーパーバック、オーディオブックがどれもベストセラーのトップに返り咲いて、順調に売れている。日本でも同じだろう。

それはさておき、このFOREIGN BOOKSは今年7月で終了してしまった。先月まで使っていたパソコンがぶっ壊れてしまったので、全部正確に数えられないが、それまでにこのコラムで取り上げた本のほとんどは、その後何ヶ月も売れ続け、その年を代表するベストセラーになったり、その後日本語版が出てヒットしたりした本がかなりの数を占めているので、けっこう内心「えっへん」な気持ち。他の本も少し紹介しちゃおう。

EAT, PRAY, LOVE/Elizabeth Gilbert(たぶんそのうち新潮社から出る、特に女性にはお薦め)
THE SECRET/Rhonda Byrnes(これはその後、角川から出てメチャ売れ)
LIKE WATER FOR ELEPHANTS/Sara Gruen(7月に翻訳版『サーカス象に水を』が出たばかり、お薦め!)
PREDICTABLY IRRATIONAL/Dan Ariely(11月に『予想通りに不合理』というタイトルで早川から出たばかり。アルファブロガーが何人も注目して売れてますね。えっへん。)
WHEN ENGULFED IN FLAMES/David Sedaris(ユーモアは翻訳が難しいけど、爆笑できるよーん。)

けっこうブックスカウトとしていい線行っていると思うのだが、誰も褒めてくれないので、自画自賛お許しを。

written by

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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  • himegorou

    はじめまして。
    ご紹介の本、すでに読んでいるものや興味があるものがいっぱいです!
    最新のNYにモスクを建てて何がいけない・・・の記事もとても興味深く読ませていただきました。

    これからも楽しみに読ませていただきます。

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