面映いが土壇場でようやくオバマ支持に転向した—About Face: I’m Finally Sold on Obama and Looking Forward to a Landslide Tuesday


いつもの毒舌を期待している皆様。今回は少し腑抜けです。

いよいよ火曜日は選挙の日。週末に選挙を行わないこととか、この日が祝日でないのも不思議に思うだろうが、つまりは昔の農耕社会では日曜日には教会に行き、1日かけて馬車で投票場に着いて帰ってくるには火曜日がいちばん都合よかったという話らしいんだが、そんな古くさい法律を残しておくところがアメリカらしいかも。

周知の通り今までずっとヒラリー・クリントンを支持してきた。

理由は色々ある。もちろん、最初は理屈ぬきに同じ女性として応援したい気持ちがあった(サラ・ペイリンに対して同じような気持ちは全く起こらなかったけど)。8年間ファーストレディとしてホワイトハウスに入り、夫のそばで政権の動きをつぶさに見てきたのも、彼女にとっては蓄積の多かった時期だったろうと思う。それ以前も子供の権利を守る団体の弁護士としての活動にも人権に対する彼女の考え方を感じることができたので評価したこともある。立派に娘を育てた母として、浮気をした夫を許した妻としての度量にも申し分ないものがあると感じたこともある。

そして彼女がここ7年半、地元ニューヨーク州の上院議員を務めた間の政治家としての腕を見て、及第点を出したこともある。今回の大統領選挙でも公約に国民全員が健康保険に入れる体制を掲げていた(ここがオバマと決定的に違う部分だった)こともある。

何よりも、共和党との間に深い溝を抱えた民主党大統領としてホワイトハウス入りするのであれば、内部の強力なコネと、少々汚いと言われようが相手をねじ伏せるだけの根回しができる力が彼女にはあるとふんだのだ。

だから民主党候補指名戦の頃の「・フィーバー」には少々腹が立った。政治とは関係のない世界で生きているようなハリウッドのスターが派手に彼を支持していたり、選挙活動をクラブ活動かなんかとはき違えてパーティーの代わりに選挙集会でフィーバーしている移り気な若者が騒いでいるだけのような気がしたからだ。

だが、金融危機で事態は一変した。前代未聞(1929年の大恐慌以来というべきか)の危機である。アメリカを中心に保たれてきた世界の均衡が大きく崩れようとしている。これからアメリカ政府がとるべき対策に、過去の経験は何の役にも立たないだろう。むしろ、ロバート・ルービン元財務長官(ゴールドマン・サックスの回し者というべきか)のアドバイスに従ってグラス・スピーゲル法(投資銀行を野放しにした悪法)など、クリントン(旦那の方)が押し進めた自由市場主義が破綻したのだから、ヒラリーが立候補していたら共和党側にこのことを突っ込まれていたとしても不思議ではない。

だが共和党がどんなに卑劣な攻撃を仕掛けてこようともオバマは冷静だった。(相手の爺さんが短絡すぎてよくプッツンするからよけいそう思えたのかもしれないけれど。)彼が提唱する「チェンジ」というスローガンには、彼がアメリカを変えるというエゴではなく、アメリカ国民が2大政党の違いを超えて変わらなければならないというメッセージなんだということが遅まきながら理解できたような気がした。

要するにアメリカ人(と私)のコートを脱がそうとして、ヒラリーがぴゅーぴゅー北風を吹き付けていたのに対し、オバマはお陽様の光をあて、ようやくその暖かさに気づき、私もコートを脱ぐ気になったというわけ。ということで、私もオバマを支持する(一票は投じないけど)。(Photo by: Suresh K.)

火曜日が楽しみだ。もしかしたら「ランドスライド」と呼ばれる大圧勝の可能性も出てきた。というのも、アメリカの選挙システムでは、全体総数で多数をとった方ではなく、州ごとにelectorateと呼ばれる票数が決まっていて、その州でどちら(正確にはどの)政党が多数を占めるかでその票数が全部その党の候補のものになるからだ。

書いている自分でもややこしいと思うが、つまり、エレクトレートの多い(つまりは人口の多い)ニューヨーク州(31)、カリフォルニア州(55)、マサチューセッツ州(21)で、オバマがマケインより1票でも多くとったとしたら、その3州全部の合計107票がオバマ、マケインはゼロ、となるのだ。

日本のニュースでも選挙の途中結果を伝えるときに、州ごとに分かれたアメリカの地図が出てくると思うが、開票が進むにつれてアメリカの真ん中の部分が赤くて、その面積だけで言えばマケインもかなりの陣地をとっているように見えるだろうが、これは錯覚である。(34もあるテキサス州は別として、だだっ広いのに3票しかない南北ダコタや、モンタナ、ワイオミングに注目!←アメリカの真ん中の上の方の四角い州)(Photo by: Jonathon Colman)

これを先に270とれば勝ち!となるのだが、オバマには350ぐらい期待したいところである。グウの音も出ないぐらいにリパブリカンを叩きのめし、上下院でも多数を握り、奴らがいやがる政策をじゃんじゃん通し、ブッシュやチェイニーの悪事を暴いて法的措置をとり、アメリカをリベラルや社会主義者の天国とするのじゃ!

あ、最後に毒舌が出ましたが、それでは火曜日に。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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