ポール・オースターの新作は第2の南北戦争、これなら私も参戦するかも—Auster’s MAN IN THE DARK Portrays Blue States Seceding from USA


私の中で村上春樹とポール・オースターはかなりかぶる。2人ともこっちでは「リテラリー・フィクション」というカテゴリーに入る純文学系の作家だけど、新作が出れば大衆作家と言っていいほど部数ははけるし、自分の作品を発表する他に海外作品の翻訳もするし、日常と非日常が交錯しどこか都会的な匂いのする世界を巧みに描き出すところも似ている。著者本人にしても、二人ともどちらかと言えばシャイでマスコミにあまり出てこないし、ストイックな感じのお人柄で、確か交友関係もあるんだっけ?

ここまでは客観的な評価。ここからは全く個人的な気持ち。なぜ人気があるのかは理解できるんだけど、 そんなに二人の書く小説は特に大して好きではないのだ、実は。だけど、エッセイとなると別で、村上春樹の『やがて悲しき外国語』なんてウンウンうなずきながら何度も読み返してしまったぐらい。一方、ポール・オースターはあまりエッセイを発表しなくてRed Notebookぐらいしか思い浮かばないけれど、印象に残っているのが9-11の1周年の日にニューヨーク・タイムズ紙に寄せた投稿。(Photo by 川燙蝦夷)

彼自身がハッキリ提唱したわけではないが、実際にテロが起こったニューヨークに住む人たちが感じていることと、ブッシュ政権がやろうとしていること(この時点ではアフガニスタンは攻撃したがイラクはまだ)に乖離があると書いていた。ニューヨークというのは、ひとつの都市を超えた思想としての場所で、2001年9月11日にそれが壊れたのだと。そして、文化的にもこんなに違うのだから、いっそのことニューヨークは独立国家として扱った方がいいんじゃないかという声もある、みたいなことを言っていたかな?
えっとね、記事を検索してみました。NYタイムズのアーカイブは登録しないと読めないかもしれませんが、その価値はあります。過去記事も5ドルぐらいで買えるし。

これを読んで私は一気にオースター大賛成、というか、ニューヨークは残りのアメリカとは全く文化も価値観も違う場所なんだから、いっそのこと違う国になったらどうかね?と感じていたのが私だけじゃなかったとわかったから。こんな小さい国、いくらでもあるじゃない、リヒテンシュタインとか、モナコとか。人口でいったらどこにも引けはとらないよ。(Photo by David Shankbone)

で、オースターの最新作MAN IN THE DARK(暗闇の男)は2000年にブッシュが選ばれた大統領選挙をきっかけに赤と青に分かれているアメリカが第2の南北戦争(東西戦争?)に突入するというお話。とはいっても、それはとある男の妄想の中でだけだが。

なんだかタイミングよくて、本屋さんで手に取った後、家で一気に読んでしまいました。今までのオースターの作品の中で一番政治色が濃い作品じゃないかな? 春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を読んだときにも同じように思った。「れれ、ちょっとポリティカルになったんでない?」と。
Man in the Dark: A Novel

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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  • Tanaka

    お久しぶりです。
    ずっと以前にパークスロープのカフェでオースター氏にお会いした事があり、図々しくも小一時間いろいろとお話を聞かせてもらった事があります。
    そのときに誰か気になる日本人作家はいるかと聞いたら、彼からは思いも与良に名前が出て来て驚いた事があります。
    個人的印象では彼はかなりの「偏屈」((笑)、もちろん良い意味で)ですね(笑)

  • Lingual

    お懐かしや、コアラさん。
    オースターは誰が気になると言っていましたか? 村上春樹とは交流もあるようですが。
    「偏屈」というより、シャイな人だし、自分は純文学作家なんだからあんまり人前に引っぱり出されるのは心外、ってとこじゃないのかな?

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